表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
最近、疲れやすい、眠れない、イライラするなどの症状でお悩みの方が増えています。実は、これらの症状の原因の一つに「マグネシウム不足」があることをご存知でしょうか?
マグネシウムは、体内で300以上の酵素反応に関与する重要なミネラルです。エネルギー産生、筋肉の収縮と弛緩、神経の伝達など、私たちの体の様々な機能に欠かせない存在なのです。また、マグネシウムは免疫機能の維持、血糖値の調整、血圧の調節など、非常に多くの生理学的プロセスに関与していることから、その重要性はますます注目されています。
今回は、マグネシウム不足について詳しくお話ししたいと思います。
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Contents
マグネシウム不足とは?
マグネシウムは、カルシウムやカリウムと並んで、体内に多く存在するミネラルの一つです。全身の細胞で重要な役割を果たしており、特に心臓、筋肉、腎臓などの組織で重要な働きをしています。
細胞内では、ATP(アデノシン三リン酸)という私たちの体のエネルギー通貨と結合し、様々な生化学反応を促進します。また、細胞膜の安定性を保ち、神経伝達物質の放出を調節する役割も担っています。このように、マグネシウムは基本的な細胞の活動に不可欠な要素です。
しかし、現代の食生活や生活習慣の変化により、多くの方がマグネシウム不足に陥りやすい状況にあります。厚生労働省の調査によると、日本人の約7割が推奨量を下回るマグネシウム摂取量であるとされています。このため、慢性的な健康問題を引き起こし、体全体にさまざまな影響を与えることがあります。
特に気をつけなければならないのは、マグネシウム不足は初期段階では明確な症状が現れにくく、気付かないうちに進行してしまうことです。また、血液検査での数値が正常範囲内でも、実際の体内のマグネシウム量が不足している「潜在的なマグネシウム不足」の状態にある方も少なくありません。この「潜在的なマグネシウム不足」は、長期的な健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、早めの対策が重要です。
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マグネシウム不足のセルフチェックテスト
マグネシウムが不足しているかどうかをセルフチェックテストしてみましょう。これは診断ではありません。あくまでも参考にしてください。
気になる症状がある場合は、お問い合わせフォームよりお願いいたします。
マグネシウム不足の症状
では、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。マグネシウム不足の症状は実に多岐にわたります。それぞれの症状について、詳しく見ていきましょう。
1. 筋肉・神経系の症状
最も一般的な症状は、筋肉や神経系に関連するものです。
- 筋肉の痙攣やこむら返り 特に夜間や運動後に足がつるという経験をされた方は多いのではないでしょうか。これは、マグネシウムが筋肉の収縮と弛緩に重要な役割を果たしているためです。マグネシウムは、カルシウムの筋肉細胞への流入を調節する働きがあり、不足すると筋肉が過度に収縮しやすくなります(論文)。筋肉のこむら返りや痙攣は、特に運動後や夜間に発生しやすいです。こむらがえりについてはこちらもご参照ください。
- 手足のしびれや震え 神経伝達物質の放出調節にもマグネシウムが関与しているため、不足すると手足のしびれや震えといった症状が現れることがあります。この症状は、慢性的にマグネシウムが不足している場合、徐々に悪化することがあります。
- 筋力低下や疲労感 マグネシウムはATP産生に必須であるため、不足すると筋力低下や全身の疲労感として現れます。筋力が低下することで日常生活に支障が出ることもありますし、長時間の疲労感に悩まされることもあります。
2. 精神・神経症状
マグネシウムは脳の機能にも深く関わっており、不足すると様々な精神・神経症状が現れます。
- 不安感やイライラ マグネシウムは、心を落ち着かせる神経伝達物質であるGABAの働きを支援する役割があります。不足すると、不安感やイライラが強くなりやすくなります。現代社会ではストレスの多い生活を送る方が多いため、マグネシウム不足がストレス反応を悪化させることもあります。
- うつ症状 セロトニンなどの神経伝達物質の産生にもマグネシウムが関与しているため、不足するとうつ症状が現れることがあります。慢性的に気分が落ち込む、やる気が出ないなどの症状が続く場合、マグネシウムの不足が影響している可能性があります。
- 集中力低下と記憶力の減退 脳細胞のエネルギー代謝にマグネシウムが必要なため、不足すると集中力や記憶力に影響が出ることがあります。仕事や学業において注意力が散漫になることがある方は、マグネシウム不足が原因かもしれません。エネルギーを産生するミトコンドリアを動かすためにマグネシウムは必要ですので、マグネシウムが不足するとミトコンドリアのエネルギー不足となります。ミトコンドリアにつきましては、こちらもご参照ください。
3. 睡眠障害
不眠も代表的な症状の一つです。
- 寝つきが悪い 睡眠に入るまでに時間がかかることがある場合、マグネシウムが不足している可能性があります。
- 途中で目が覚める 夜間に何度も目が覚めてしまうという方も多いですが、これは体内のマグネシウム不足が関係していることがあります。
- 熟睡感がない 朝起きた時にしっかり休めた感じがしない場合、マグネシウムが関与するGABAやメラトニンの不足が関係している可能性があります。熟睡感が得られないと日中のパフォーマンスが低下します。
4. 循環器系の症状
マグネシウムは心臓の機能にも重要な役割を果たしています。
- 動悸や不整脈 マグネシウムは心筋の収縮とリズムの調節に関与しているため、不足すると不整脈のリスクが高まります。心拍数の変動が激しい、急に胸がドキドキするなどの症状は、マグネシウム不足が原因であることがあります(論文)。
- 血圧上昇 血管の収縮と弛緩にもマグネシウムが関与しており、不足すると血圧が上昇しやすくなります。高血圧は生活習慣病のリスクを高めるため、マグネシウムの補給が重要です。
5. 消化器系の症状
- 便秘 腸の蠕動運動にもマグネシウムが必要です。マグネシウムは腸内の水分量を調整し、便を柔らかく保つ役割も果たしています。慢性的な便秘に悩まされている方は、マグネシウム不足を疑うべきです。
- 消化不良や胃部不快感 消化酵素の活性化にもマグネシウムが関与しています。消化不良や胃の不快感が続く場合、マグネシウムの不足が関係している可能性があります。
6. その他の症状
- 骨の脆弱化 マグネシウムはカルシウムの吸収や骨への沈着を助ける働きがあります。そのため、マグネシウム不足は骨密度の低下や骨粗しょう症のリスクを高める要因となります(論文)。
- 歯のエナメル質の弱化 歯の形成にもマグネシウムが必要です。マグネシウムが不足すると歯のエナメル質が弱くなり、虫歯のリスクが増します。
- むくみ 電解質バランスの乱れによって起こります。特に手足や顔のむくみが頻繁に発生する場合、マグネシウムの不足が影響していることがあります。
マグネシウム不足の原因
では、なぜマグネシウム不足が起こるのでしょうか。現代社会における主な原因を詳しく見ていきましょう。
食生活の変化
現代の食生活は、様々な面でマグネシウム不足を引き起こしやすい状況にあります。
- 加工食品の増加 加工食品や精製された食品には、マグネシウムがほとんど含まれていません。例えば、精製された小麦粉や白米は、精製過程でマグネシウムの大部分(約80%)が失われてしまいます。日常的にこれらの食品を多く摂取していると、自然とマグネシウムの摂取量が不足しがちです。
- 土壌の変化 現代の農業では、化学肥料の使用により土壌が劣化し、作物に含まれるマグネシウム量が減少しています。50年前と比べると、野菜のマグネシウム含有量は約30%も減少したという報告もあります。土壌のミネラルバランスが乱れることで、野菜や果物の栄養価も低下しています。
- 食の欧米化 日本の伝統的な食事(和食)に比べ、現代の欧米化された食事では、マグネシウムを多く含む海藻類や豆類、緑葉野菜の摂取が減少しています。和食にはマグネシウムが豊富に含まれる食品が多いのですが、食習慣の変化によりこれらの食品を摂る機会が少なくなっているのです。
ストレス社会の影響
現代社会特有のストレスは、複数の経路でマグネシウム不足を引き起こします。
- ストレスホルモンの影響 ストレスを感じると、副腎からアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、マグネシウムの尿中排出を促進します。長期的にストレスにさらされていると、体内のマグネシウムが慢性的に不足する原因となります。特に、副腎疲労であるとマグネシウム不足が顕著になります。副腎疲労についてはこちらもご参照ください。
- ストレス関連行動 ストレス解消のために摂取する糖分の多い食品やアルコール、カフェインは、マグネシウムの吸収を妨げたり、排出を促進したりします。これらの行動が慢性的になることで、さらにマグネシウム不足が深刻化します。
- 交感神経の優位 ストレス状態が続くと交感神経が優位になり、これもマグネシウムの排出を促進します。交感神経が活発になると体は常に緊張状態になり、マグネシウムの必要量が増加します。
運動と生活習慣
- 運動不足 適度な運動は、マグネシウムの代謝を促進し、その吸収を助けます。現代の座りがちな生活は、このような自然な代謝促進の機会を減少させています。身体を動かさないことでマグネシウムの必要量が減少するだけでなく、摂取の機会も減ります。
- 過度な運動 一方で、激しい運動は汗と共にマグネシウムを失わせます。特にアスリートや長距離ランナーは、マグネシウムの補給が特に重要です。汗をかくことでミネラルが失われるため、定期的な補給が必要です。
- 睡眠不足 質の良い睡眠は、体内のミネラルバランスの維持に重要です。睡眠不足は、ホルモンバランスを乱し、マグネシウムの代謝にも影響を与えます。十分な睡眠が取れないと、体内のミネラルバランスが崩れ、様々な健康問題を引き起こします。
薬剤の影響
以下のような薬剤の使用は、マグネシウムの代謝に影響を与える可能性があります。
- 利尿薬 腎臓からのマグネシウム排出を増加させます。これにより体内のマグネシウム濃度が下がり、慢性的な不足状態を引き起こします。
- 制酸薬(特にプロトンポンプ阻害薬) 胃酸の分泌を抑制することで、マグネシウムの吸収を妨げます。胃酸はミネラルの吸収に不可欠であるため、胃酸が抑えられるとマグネシウムの吸収率が低下します。
- 抗生物質 特定の抗生物質は、マグネシウムの吸収を阻害する可能性があります。抗生物質は腸内環境にも影響を与えるため、腸内での栄養吸収全般に影響を与えることがあります。
- ステロイド薬 長期使用により、マグネシウムの排出が増加する可能性があります。ステロイド薬は炎症抑制作用がありますが、マグネシウムの代謝に悪影響を与えることもあります。これにより、骨密度の低下や筋肉の疲労感が悪化する可能性があります。
その他の要因
- 加齢 年齢を重ねるにつれて、腸でのマグネシウムの吸収率は低下し、腎臓からの排出は増加する傾向にあります。
- 妊娠・授乳 胎児の成長や母乳産生のために、通常より多くのマグネシウムが必要となります。
- 特定の疾患 糖尿病や腎臓病、炎症性腸疾患などの特定の疾患も、マグネシウムの代謝に影響を与えます。
マグネシウム不足の対策
マグネシウム不足を改善するためには、総合的なアプローチが必要です。以下、具体的な対策を詳しく見ていきましょう。
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食事からの摂取を増やす
まずは、日々の食事でマグネシウムを意識的に摂取することが大切です。
マグネシウムを多く含む食品
- 緑葉野菜 ほうれん草(100gあたり約70mg)、小松菜(100gあたり約60mg)、モロヘイヤ(100gあたり約65mg)
- 海藻類 ひじき(乾燥100gあたり約510mg)、わかめ(乾燥100gあたり約440mg)、のり(乾燥100gあたり約430mg)
- ナッツ類 アーモンド(100gあたり約270mg)、カシューナッツ(100gあたり約260mg)、くるみ(100gあたり約160mg)
- 豆類 大豆(乾燥100gあたり約220mg)、黒豆(乾燥100gあたり約200mg)、枝豆(100gあたり約70mg)
- 全粒穀物 玄米(100gあたり約110mg)、そば(100gあたり約130mg)、オートミール(100gあたり約140mg)
効果的な摂取方法
単に食品を摂取するだけでなく、以下のような工夫をすることで、より効果的にマグネシウムを摂取することができます。
- 食事のタイミング マグネシウムは、食事と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
- 相性の良い栄養素との組み合わせ ビタミンB6やビタミンDは、マグネシウムの吸収を助けます。
- 阻害要因を避ける リン酸(清涼飲料水に多く含まれる)やシュウ酸(ほうれん草などに含まれる)は、マグネシウムの吸収を妨げる可能性があります。
サプリメントの選び方と使用法
食事だけでは十分な量のマグネシウムを摂取することが難しい場合は、サプリメントの利用も検討してください。
主なマグネシウムサプリメントの種類
- クエン酸マグネシウム 吸収率が高く、便秘解消にも効果的です。
- グリシン酸マグネシウム リラックス効果や睡眠改善に役立ちます。
- L-スレオン酸マグネシウム 脳機能の改善に期待が持てます。
- トレースミネラル 主成分は塩化Mgで吸収率が良く、他の微量ミネラルも摂取することができます。
サプリメント使用時の注意点
- 1日の推奨摂取量を守る マグネシウムの1日の推奨摂取量は成人で約300〜400mgです。過剰摂取は下痢や消化不良を引き起こす可能性があるため、用量を守りましょう。
- 少量ずつ分けて摂取する マグネシウムは一度に大量に摂取すると吸収されにくいため、1日数回に分けて摂取するのが効果的です。
- 医師に相談する 特に腎臓の機能に問題がある方や、特定の薬を服用している方は、サプリメントの使用前に医師に相談することが重要です。
生活習慣の改善
マグネシウムの吸収を促進し、排出を抑えるために、以下のような生活習慣の改善も重要です。
- 適度な運動を取り入れる 適度な有酸素運動を行うことで、体内のマグネシウム代謝が促進されます。例えば、ウォーキングやヨガなどの軽度な運動は、ストレス軽減にもつながります。
- ストレス管理 瞑想や深呼吸、趣味の時間を持つことなど、ストレスを緩和するための活動を積極的に取り入れましょう。ストレスを減らすことで、マグネシウムの体内消費を抑えることができます。
- 十分な睡眠を確保する 睡眠時間を一定に保ち、1日7〜8時間の質の良い睡眠を取るよう心がけましょう。マグネシウムはリラックス効果を持ち、睡眠の質を向上させる助けになります。
検査と経過観察
マグネシウム不足が疑われる場合は、以下のような検査で状態を確認することができます。
- 血清マグネシウム値の測定 一般的な血液検査で確認できるものの、血清マグネシウム値は全身の状態を正確に反映しないことがあります。体内に蓄えられているマグネシウムのうち、わずか1%が血清に存在するためです。
- オリゴスキャンでのマグネシウムの測定 オリゴスキャンは、手のひらに端子を当ててその場でマグネシウムを含む必須ミネラルと、有害金属を測定できるものです。オリゴスキャンに関しては、こちらをご参照ください。
- 毛髪ミネラル検査におけるマグネシウムの測定 髪の毛の中のマグネシウムを測定することで、細胞内のマグネシウムの代謝状態を評価することができます。
まとめ
マグネシウム不足は、現代社会において非常に身近な問題となっています。その症状は多岐にわたり、気づかないうちに健康に影響を及ぼしている可能性があります。
しかし、適切な食事と生活習慣の改善、必要に応じたサプリメントの利用によって、マグネシウム不足は十分に予防・改善が可能です。
気になる症状があるようなら、検査を通じて、適切なマグネシウムの補給を行うと同時に、マグネシウムが不足してしまう原因も検索してきましょう。
当院では、分子栄養学の観点からマグネシウムの不足の問題に対応しています。気になる症状があれば、ぜひご相談ください。栄養バランスを整えることで、より健康で活力のある生活を取り戻しましょう。
栄養外来はこちらから
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
無料レポート新リリースしましたのでお受け取りください!
1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。