表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
長引く疲労感や、頭がモヤモヤして集中できない(ブレインフォグ)、体調不良が続いているという方はいらっしゃいませんか?ホルモンバランスの変化や日々のストレスなどにより、こうした症状に悩まされることが多いのではないでしょうか。

今回は、これらの症状に有効性が報告されている「メチレンブルー点滴療法」についてお話ししたいと思います。
Contents
1. メチレンブルー点滴療法とは
メチレンブルー点滴療法は、濃い青色の合成染料であるメチレンブルーを点滴で体内に投与する治療法です。メチレンブルーは長い間、様々な医療用途に使用されてきました。メトヘモグロビン血症という血液中のメトヘモグロビン濃度が異常に上昇する病気に対して、その治療に用いられています。特に近年、その抗酸化作用や神経保護作用、ミトコンドリア機能改善効果などが注目され、様々な症状や疾患の治療に応用されています。

2. メチレンブルーの作用機序
メチレンブルーの主な作用機序は以下の通りです。
- 抗酸化作用: メチレンブルーは強力な抗酸化物質として働き、体内の酸化ストレスを軽減します。
- ミトコンドリア機能改善: メチレンブルーは、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能を改善し、ATP(アデノシン三リン酸)の産生を促進します。
- 神経保護作用: メチレンブルーは神経細胞を保護し、神経伝達物質の働きを調整する効果があります。
- 一酸化窒素(NO)の調整: メチレンブルーは一酸化窒素の産生を抑制し、血管拡張や炎症反応を調整します。
- メトヘモグロビン還元: メチレンブルーは、酸素運搬能力が低下したメトヘモグロビンを正常なヘモグロビンに還元する作用があります。

3. メチレンブルー点滴療法の可能性
以上のような機序より、メチレンブルー点滴療法には、以下のような状況に対して使用されることがあります。
- エネルギーサポート: ミトコンドリア機能の改善を通じて、細胞のエネルギー効率を高め、体全体の活力をサポート
- 認知機能サポート: 脳のエネルギー代謝をサポートし、集中力や記憶力の維持に寄与する可能性
- 気分ケア: 気分や精神的な不調に対して、前向きな影響を与える可能性があるとされています。
- 炎症ケア: 抗酸化作用によって、体内の炎症を軽減するサポート
- 疲労ケア: エネルギーサポートと炎症ケアを通じて、疲労感の軽減に
- 神経保護サポート: 神経の健康維持に役立つ可能性があると考えられています。
- 免疫サポート: 免疫機能のバランスを整え、体の自然な抵抗力をサポートすることが期待されています。

4. メチレンブルー点滴療法とブレインフォグのケア
ブレインフォグ(脳の霧)は、思考が曇っているような感覚や集中力の低下、記憶力の減退などを特徴とする症状で、ホルモンバランスの変化や慢性的なストレス、睡眠不足など、様々な要因が関与していると考えられています。
ブレインフォグに関しては、以下の記事も参考にしてください。
メチレンブルー点滴療法は、ブレインフォグのケアを目的として、以下の理由から注目されています。
- 脳細胞のエネルギー代謝サポート: メチレンブルーはミトコンドリア機能をサポートし、脳細胞のエネルギー効率を高める可能性があります。これにより、脳の働きをサポートし、思考の明瞭さや集中力の維持を助けることが期待されます。
- 酸化ストレスのケア: 脳は酸化ストレスに敏感な臓器です。メチレンブルーは抗酸化作用を通じて、酸化ストレスを軽減し、脳細胞をサポート。
- 神経伝達物質のバランスサポート: メチレンブルーは、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の働きの調整サポートを行い、これにより気分や集中力の維持が期待されています。
- 脳血流のサポート: メチレンブルーは血流をサポートし、脳への酸素や栄養の供給を助ける可能性があります。それにより、脳の健康維持をサポートすることが期待されています。
- 炎症ケア: 慢性的な炎症が認知機能に影響を与えることが知られていますが、メチレンブルーの抗炎症作用が、脳内の炎症軽減をサポートする可能性があります。

5. メチレンブルー点滴療法の適応症
メチレンブルー点滴療法は、以下のような症状や疾患に対しても適応と考えられます。
- ブレインフォグ: 思考の曇り、集中力低下、記憶力減退
- 副腎疲労症候群: 長期的な疲労感や倦怠感
- うつ病・不安障害: 気分の不安定さ、不安症状など
- 認知機能障害: 軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病初期の症状
- 線維筋痛症: 全身の痛みや疲労感
- 自己免疫疾患: 炎症や免疫機能の乱れ
- メトヘモグロビン血症: 酸素運搬能力が低下した血液
- 敗血症: 重症感染症
- 術後認知機能障害: 手術後の一時的な認知機能低下
- 長期的なストレス: ストレス関連症状
- 更年期障害: ホルモンバランスの乱れに伴う様々な症状
- 慢性的な炎症: 全身の慢性炎症
- ミトコンドリア機能障害: エネルギー産生能力の低下に関連する症状

6. メチレンブルー点滴療法の投与方法
メチレンブルー点滴療法の一般的な投与方法は以下の通りです。
- 投与量: 通常、10mg~20mgのメチレンブルーを使用します。
- 投与方法: 5%ブドウ糖などの点滴液に溶解し、静脈内に点滴投与します。
- 投与時間: 通常、1時間かけてゆっくりと投与します。
- 投与頻度: 症状や目的に応じて、週1回〜月1回程度の頻度で投与します。
- 治療期間: 通常、4〜6週間の治療期間を1クールとし、症状の改善に応じて継続するかどうかを判断します。
投与量や頻度は個人の症状や体質によって異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。
7. メチレンブルー点滴療法の副作用と注意点
メチレンブルー点滴療法は医療にも用いられているため、比較的安全性の高い治療法ですが、以下のような副作用や注意点があります。
副作用
- 尿や便の色の変化: メチレンブルーの影響で、一時的に尿や便が青緑色になることがあります。
- 吐き気・嘔吐: まれに消化器症状が現れることがあります。
- 頭痛: 一時的な頭痛を感じることがあります。
- めまい: 投与直後にめまいを感じることがあります。
- 皮膚の変色: 注射部位周辺の皮膚が一時的に青く変色することがあります。
- アレルギー反応: ごくまれに、アレルギー反応が起こることがあります。
注意点
- 妊娠中・授乳中の方: 妊娠中や授乳中の方は、安全性が確立されていないため、原則として避けてください。
- G6PD欠損症の方: グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症の方は、溶血のリスクがあるため比較的禁忌です。
- セロトニン症候群のリスク: SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を服用中の方は、セロトニン症候群のリスクがあるため注意が必要です。
- 腎機能障害のある方: 腎機能が低下している方は、メチレンブルーの排泄が遅れる可能性があるため、投与量の調整が必要です。
- 光過敏症: まれに光過敏症が起こることがあるため、治療後は強い日光を避けることをお勧めします。
- 相互作用: いくつかの薬剤とメチレンブルーには相互作用があるため、現在服用中の薬がある場合は必ず医師に伝えてください。
これらの副作用や注意点について、事前に医師とよく相談し、理解した上で治療を受けることが重要です。

8. メチレンブルー点滴療法のセルフチェックリスト
以下のチェックリストは、メチレンブルー点滴療法が適している可能性がある症状をセルフチェックするためのものです。当てはまる項目が多いほど、メチレンブルー点滴療法が有用である可能性があります。ただし、診断ではありませんので、参考情報としてください。
症状についてご相談されたい方は、お気軽に公式LINEよりお問い合わせください。
実際症状や検査結果を交えてカウンセリングをご希望の方は以下よりお申し込み下さい。
カウンセリングを予約皆様のご来院を心よりお待ちしております。
ご心配な症状がある場合は、お問い合わせよりお願いいたします。
9. メチレンブルー点滴療法に関する研究
メチレンブルー点滴療法については、さまざまな研究が行われており、その効果に関する科学的根拠が蓄積されつつあります。以下に、いくつかの研究結果をご紹介します。
認知機能改善
メチレンブルーは、慢性的な脳血流低下により引き起こされる軽度認知障害やアルツハイマー病に対して、ミトコンドリア機能を改善し、記憶力を向上させることが示されています。動物モデルにおいて、メチレンブルーが視覚学習および記憶の欠損を軽減する効果が確認されています。PMID: 25079810
うつ病
2017年の研究では、治療抵抗性うつ病の患者に対してメチレンブルーを投与したところ、うつ症状の有意な改善が見られました。特に、エネルギー低下や意欲の減退などの症状に効果があったとされています。PMID: 29976053
不安障害
動物実験では、メチレンブルーが不安様行動を減少させることが示されています。これは、メチレンブルーの神経保護作用や抗酸化作用が関与していると考えられています。PMID: 28762173
ミトコンドリア機能
メチレンブルーは、ミトコンドリアの電子伝達系を活性化し、ATPの産生を増加させます。特に電子伝達系の複合体IVの活動を促進し、酸化ストレスを軽減します。これにより、神経変性疾患の予防や副腎疲労症候群、線維筋痛症に役立つ可能性があります。PMID: 17928358
神経保護
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に対するメチレンブルーの効果も研究されています。神経細胞のダメージを軽減し、神経伝達物質の機能を改善する可能性が示唆されています。PMID: 24556215
これらの研究結果は、メチレンブルー点滴療法の有効性を支持するものですが、まだ研究段階のものも多く、さらなる検証が必要です。また、個人差も大きいため、全ての人に同じ効果が得られるわけではありません。
10. メチレンブルー点滴療法と他の治療法の併用
メチレンブルー点滴療法は、単独で使用されることもありますが、他の治療法と併用することで、より有用な可能性があります。以下に、よく併用される治療法をいくつか紹介します。
高濃度ビタミンC点滴
メチレンブルーと高濃度ビタミンCを併用することで、抗酸化作用や免疫機能の強化がさらに期待できます。特に慢性疲労や免疫力低下が気になる方におすすめです。高濃度ビタミンC点滴はこちら
グルタチオン点滴
グルタチオンは体内の重要な抗酸化物質です。メチレンブルーとの併用により、デトックス効果や細胞の修復促進が期待できます。グルタチオン点滴はこちら
ホルモン補充療法
更年期障害などホルモンバランスの乱れが原因と考えられる症状には、適切なホルモン補充療法との併用が効果的な場合があります。ホルモン補充療法についてはこちら
マインドフルネス瞑想
ストレス軽減や集中力向上のために、メチレンブルー点滴療法とマインドフルネス瞑想を組み合わせるのも効果的です。
運動療法
適度な運動は、メチレンブルーの効果を補完し、全身の血流改善やストレス軽減に役立ちます。
栄養療法
適切な栄養摂取は、メチレンブルーの効果を最大限に引き出すために重要です。特に、ミトコンドリア機能をサポートする栄養素(CoQ10、ビタミンB群など)の摂取が推奨されます。栄養療法についてはこちら
これらの併用療法については、個人の症状や体質に合わせて、医師と相談の上で適切に選択することが重要です。

11. メチレンブルー点滴療法を受ける際の流れ
メチレンブルー点滴療法を受ける際には、以下のような流れになります。
事前の診察と検査
メチレンブルー点滴療法を受ける前に、医師による問診と必要に応じてG6PD検査や、血液検査などを受けることが重要です。これにより、治療の適応や注意点を確認できます。お申し込みはこちらよりお願いいたします。同意書をいただきます。できれば今までの血液検査結果をお持ちになっていただければと思います。初回は、G6PD検査を行ったことが無い方は、まず安全のためG6PD検査を行います。結果判明まで3〜4日かかりますので、当日のメチレンブルー点滴ができないことがあります。
服用中の薬の確認
現在服用中の薬がある場合は、必ず医師に伝えてください。特に抗うつ薬との相互作用に注意が必要です。
食事と水分摂取
治療当日は、軽めの食事を取り、十分な水分を摂取することをおすすめします。空腹状態や脱水状態での治療は、副作用のリスクが高まる可能性があります。
服装
点滴を行いやすい服装(袖をまくりやすい服など)で来院してください。
時間に余裕を持つ:
治療には通常、1時間程度かかります。その後も少し休憩時間を取ることをおすすめします。
副作用への心構え
尿の色が変わるなどの一時的な変化があることを理解しておきましょう。不安な点があれば、遠慮なく医師や看護師に相談してください。
効果の個人差を理解する
メチレンブルー点滴療法の効果には個人差があります。即効性を感じる人もいれば、数回の治療を重ねて徐々に効果を実感する人もいます。焦らず、継続的に治療を受けることが大切です。
生活習慣の改善
メチレンブルー点滴療法と並行して、睡眠、食事、運動などの生活習慣を整えることで、より効果的な改善が期待できます。
治療後のセルフケア
治療後は十分な休息を取り、水分をしっかり摂取してください。また、強い日光を避けるなど、光過敏症に注意することをおすすめします。
経過観察
治療後の体調の変化や症状の改善について、詳細に記録しておくと良いでしょう。次回の診察時に医師に伝えることで、より適切な治療計画を立てることができます。

メチレンブルー内服
メチレンブルー点滴療法に合わせて、メチレンブルー内服を併用していただくと、より効果的です。ただし、内服摂取では、味が苦い、大量摂取にて血圧の上昇がみられたり、尿が変色(エメラルド色)になったり、SSRIとの併用はできないなどの注意点があります。

まとめ
メチレンブルー点滴療法は、ブレインフォグや更年期障害、慢性的なストレスに関連する症状に悩まれている方へ適応になります。
ミトコンドリア機能を改善、抗酸化作用、神経保護作用などがあります。
ただし、メチレンブルー点滴療法にも副作用や注意点があり、全ての人に適しているわけではありません。治療を検討される際は、必ず医師に相談し、自身の症状や体質に合わせた適切な治療計画を立てることが重要です。
また、メチレンブルー点滴療法は単なる対症療法ではなく、根本的な体質改善や生活習慣の見直しと組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。治療と並行して、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的なライフスタイルを心がけることをおすすめします。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。