分子栄養学

重曹・マグネシウム・亜鉛の慢性炎症・腸内バリア・脂肪肝への影響

表参道・原宿の東京原宿クリニック院長の篠原です。

健康のために食事には気をつけているのに、なぜか疲れが取れない。

健康診断で『脂肪肝』気味だと言われたが、お酒はあまり飲まないのに……

原因不明の不調が続き、アレルギーや肌荒れに悩んでいる。

もしあなたがこのようなお悩みを抱えているなら、その根本原因はミネラル不足と、そこから来る慢性炎症や腸内環境の乱れ(リーキーガット)」にあるかもしれません。

近年、私たちの体の中で起きている見えない火事(慢性炎症)が、あらゆる病気の引き金になっていることがわかってきました。
そして、最新の研究によって、重曹(炭酸水素ナトリウム)、マグネシウム、亜鉛といった身近なミネラルが、この炎症を鎮め、腸のバリア機能を修復し、さらには脂肪肝までも改善する可能性があることが明らかになってきています。

本記事では、エビデンスに基づき、これらのミネラルが持つ驚くべきパワーと、具体的な活用法について、専門家の視点で徹底解説します。

もし、長年の体調不良に悩まれていて、検査や治療をされたいという方は当院栄養外来をご検討ください。

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はじめに:あなたの不調の正体は「慢性炎症」かもしれない

炎症と聞くと、怪我をして赤く腫れたり、風邪で喉が痛くなったりする「急性炎症」をイメージする方が多いでしょう。しかし、現代人を蝕んでいるのは、自覚症状がほとんどないまま体の中でくすぶり続ける「慢性炎症(Chronic Inflammation)」です。

慢性炎症は、体の中で小さなボヤ火事がずっと続いているような状態です。このボヤが続くと、細胞が徐々に傷つき、老化が加速し、やがては糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患、うつ病、そしてがんなどの重篤な疾患へとつながっていきます。

では、なぜ炎症が起きるのでしょうか?

その大きな要因の一つが、「ミネラルバランスの乱れ」と「腸内環境の悪化」です。現代の食事はカロリーこそ足りていますが、ビタミンやミネラルといった微量栄養素が圧倒的に不足しています(新型栄養失調)。

特に、身体のpHバランス(酸性・アルカリ性のバランス)を整えたり、免疫の暴走を止めたりする役割を持つミネラルが不足すると、私たちの体は常に「戦闘モード(炎症状態)」になりやすくなってしまうのです。

動画で解説

動画で概要を使いみたい方はこちらからご参照ください。

2. 重曹(炭酸水素ナトリウム)の驚くべき抗炎症作用

昔から胃薬やお掃除アイテムとして親しまれてきた「重曹」。実はこれが、最新の免疫学研究において大きな注目を集めています。

体の「防衛モード」を解除するスイッチ

重曹(炭酸水素ナトリウム)を水に溶かして摂取することは、単に胃酸を中和するだけではありません。研究によると、重曹水を摂取することで、免疫細胞の「性格」が変わることが示唆されています。

具体的には、炎症を引き起こして攻撃を仕掛ける「M1マクロファージ」という細胞が減少し、逆に炎症を鎮めて組織を修復する「M2マクロファージ」や、免疫の暴走を抑える「制御性T細胞(Treg)」が増加するという報告があります。

迷走神経を通じた抗炎症反射

なぜ重曹を飲むだけで免疫が変わるのでしょうか?

そのメカニズムの一つとして「コリン作動性抗炎症経路」が考えられています。重曹水が胃に入り、胃酸分泌の刺激などをきっかけに、脾臓(ひぞう)という免疫の司令塔へ繋がる神経(迷走神経)が刺激されます。

これがスイッチとなり、「もう攻撃しなくていいよ、鎮火しなさい」という指令が全身に送られるのです。実際に、動物実験では重曹の摂取によって、リウマチのような自己免疫疾患による組織破壊が抑制されたというデータもあります。

つまり、重曹は安価で身近な存在でありながら、体の過剰な防衛反応(炎症)を鎮める強力なサポーターになり得るのです。

3. 「抗炎症ミネラル」マグネシウムの重要性

重曹と並んで重要なのがマグネシウム(Mg)です。私はマグネシウムを「抗炎症ミネラル」と呼んでいます。

300以上の酵素反応に関わる「マスターミネラル」

マグネシウムは、エネルギー産生、タンパク質の合成、神経の伝達、筋肉の収縮など、体内で300種類以上もの酵素反応に関わっています。これほど多機能なミネラルは他にありません。

しかし、現代人の多くはマグネシウム不足です。精製された穀物(白米や白いパン)、加工食品の摂取、そしてストレス過多な生活が、体内のマグネシウムを浪費させています。

不足すると「火種」が生まれる

マグネシウムが不足すると、細胞内のカルシウム濃度調整がうまくいかなくなり、細胞が興奮状態になります。これが引き金となり、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-αなど)という「炎症の伝令物質」が過剰に放出されます。これを「低度炎症(Low-grade inflammation)」と呼びます。

CRP(炎症数値)を下げるエビデンス

臨床試験のメタ解析(複数の研究を統合して分析したもの)によると、マグネシウムをサプリメントなどで補給することで、血液中の炎症マーカーであるCRP(C反応性タンパク)の値が有意に低下することがわかっています。

特に、もともとCRPが高い人や肥満傾向の人においてその効果は顕著です。マグネシウムを充足させることは、体の中の火種を消し、将来の病気リスクを下げるための基本戦略と言えるでしょう。

4. 万病の元「リーキーガット」

ミネラルが不足し、腸内環境が悪化すると起こるのが「リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)」です<<詳細はこちら>>。

腸は「内なる外」

腸の壁は、栄養素を吸収する入り口であると同時に、細菌や毒素が体内に入らないように防ぐバリアでもあります。健康な腸では、細胞同士が「タイトジャンクション」という接着装置でしっかりと結合し、有害物質をブロックしています。

バリアが決壊すると……

しかし、ストレス、精製糖質の摂りすぎ、抗生物質の乱用、そしてミネラル不足などが続くと、このタイトジャンクションが緩んでしまいます。

すると、本来なら便として排泄されるべき未消化のタンパク質、細菌、そして細菌が出す毒素(LPS:リポ多糖)などが、腸の壁をすり抜けて血液中に漏れ出してしまいます。

これが血流に乗って全身を巡ると、体中の免疫システムが「敵が侵入した!」と大騒ぎになり、全身で慢性炎症が引き起こされます。これが、アレルギー、肌荒れ、慢性疲労、自己免疫疾患、そして後述する脂肪肝の原因となるのです。

5. 腸内バリアを修復するミネラルの力(重曹・Mg・亜鉛)

では、壊れてしまった腸のバリア(リーキーガット)を修復するにはどうすればよいのでしょうか? ここでもミネラルが決定的な仕事をします。

イタリアのミネラルウォーター研究の衝撃

イタリアで行われた非常に興味深い臨床試験があります。重炭酸塩(重曹の成分)、硫酸塩、マグネシウム、カルシウムを含む天然のミネラルウォーターを1年間飲み続けてもらったところ、腸内バリア機能に劇的な改善が見られました。

  • ゾヌリンの低下: 腸の隙間を開くスイッチとなるタンパク質「ゾヌリン」が減少しました。
  • LPSの低下: 血中に漏れ出す毒素(LPS)の量が減りました。
  • オクルディンの増加: 細胞同士をくっつける接着剤の役割をするタンパク質「オクルディン」が増えました。

つまり、アルカリ性のミネラルを豊富に含む水を飲むことで、腸の粘膜が強化され、毒素の漏れ(リーキーガット)が塞がったことが示唆されたのです。

亜鉛:腸粘膜の修復師

もう一つ、忘れてはならないのが亜鉛(Zinc)です。亜鉛は細胞分裂に必須のミネラルであり、ターンオーバーの早い腸粘膜の再生には欠かせません。

クローン病(腸に炎症が起きる難病)の患者さんを対象とした研究では、亜鉛のサプリメントを摂取することで腸の透過性が改善(漏れが塞がる)し、その後の病気の再発率が下がったという報告があります。亜鉛は、緩んだタイトジャンクションを再び締め直す「修復師」のような役割を果たします。

6. 「腸肝軸」の秘密:ミネラルで脂肪肝(NAFLD/MASLD)は改善するか

「お酒を飲まないのに脂肪肝と言われた」。これをNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)、最近の呼称ではMASLDと呼びますが、この原因も腸にあることがわかってきました。これを「腸肝軸(Gut-Liver Axis)」と言います。

毒素が肝臓を直撃する

腸で吸収されたものは、門脈という太い血管を通って、まずはすべて肝臓に運ばれます。

もしリーキーガットが起きていると、腸から漏れ出した毒素(LPSなど)が門脈を通って肝臓に直撃します。肝臓は解毒のためにフル稼働しますが、毒素による炎症で肝細胞がダメージを受け、代謝異常が起き、脂肪が蓄積しやすくなります。これが脂肪肝の正体の一つです。

ミネラルによる脂肪肝改善のエビデンス

腸内環境を整えるミネラルは、結果として肝臓も守ります。

  1. マグネシウムと脂肪肝:大規模な調査により、マグネシウムの摂取量が多い人ほど脂肪肝になりにくいことがわかっています。マグネシウムはインスリンの効きを良くし、肝臓への脂肪蓄積を防ぐ働きがあります。
  2. 亜鉛と肝機能:脂肪肝の子供や大人に亜鉛を補充すると、肝臓の炎症を示す数値(ALTなど)が低下し、炎症マーカー(CRP)も下がることが確認されています。
  3. ミネラルウォーターの効果:前述のイタリアの研究では、ミネラルウォーターを飲み続けて腸内バリアが改善したグループにおいて、肝臓の脂肪量も有意に減少しました。

「腸を治せば肝臓も治る」。ミネラルはこの「腸肝軸」の好循環を生み出す鍵なのです。

7. 今日からできる!ミネラル活用と生活習慣セルフケア

ここまで解説した通り、重曹・マグネシウム・亜鉛は、現代人の健康維持に不可欠です。では、具体的にどのように生活に取り入れればよいのでしょうか。

食事からの摂取を基本に

まずは日々の食事を見直しましょう。

  • マグネシウム: アオサ、わかめ、昆布などの海藻類、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、大豆製品(納豆、豆腐)、未精製の穀物(玄米、雑穀)に多く含まれます。
  • 亜鉛: 牡蠣(カキ)がダントツです。その他、赤身の肉(牛肉)、レバー、カシューナッツ、卵など。
  • 食事のポイント: 加工食品や精製糖質(白いパンや砂糖)は、代謝の過程でミネラルを大量に消費してしまう「ミネラル泥棒」です。これらを控えるだけでも、体内のミネラル温存につながります。

重曹水の活用法

食品用の重曹(炭酸水素ナトリウム)をごく少量、水に溶かして飲む方法があります。

  • 作り方: コップ1杯の水に、重曹をひとつまみ溶かします。
  • タイミング: 食後すぐは胃酸を中和しすぎて消化を妨げる可能性があるため、食間(空腹時)がおすすめです。
  • 注意点: 塩分(ナトリウム)を含みますので、高血圧の方や腎臓に持病のある方は必ず主治医に相談してください。また、飲みすぎるとアルカローシス(血液がアルカリ性に傾きすぎる)になるリスクがあるため、大量摂取は厳禁です。

入浴でのマグネシウム吸収(エプソムソルト)

マグネシウムは皮膚からも吸収されます。硫酸マグネシウム(エプソムソルト)や塩化マグネシウムを入浴剤としてお風呂に入れると、温浴効果とともにマグネシウムを経皮吸収でき、筋肉の緊張がほぐれ、リラックス効果も高まります。睡眠の質向上にもつながり、炎症ケアに最適です。

サプリメントの活用

食事からの摂取が難しい場合、サプリメントも有効な選択肢です。

  • マグネシウム: 吸収率の良い「グリシン酸マグネシウム」や「クエン酸マグネシウム」などが推奨されます。酸化マグネシウムは吸収率が低いため、便秘薬として使われることが多いです。
  • 亜鉛: 吸収を助けるビタミンCなどと一緒に摂ると良いでしょう。ただし、亜鉛の摂りすぎは銅欠乏を招くことがあるため、長期摂取の際はバランスに注意が必要です。
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8. 本気で体質改善したいあなたへ。栄養療法のすすめ

「サプリメントを飲んでみたけれど効果がわからない」

「自分にどのミネラルが足りていないのか正確に知りたい」

「脂肪肝や慢性疲労を根本から治したい」

そうお考えの方は、自己判断での対策に限界がきているかもしれません。

体内のミネラルバランスや腸内環境は、一人ひとり全く異なります。ある人には良い健康法が、別の人には合わないこともあります。

当院の栄養療法外来では、詳細な血液検査(分子整合栄養医学的解析)や、尿中有機酸検査、遅延型フードアレルギー検査などを通じて、あなたの細胞レベルでの栄養状態を可視化します。

隠れ貧血、隠れ炎症、重度のマグネシウム不足など、一般的な健康診断では見落とされがちな不調の原因を突き止め、あなただけのオーダーメイドな治療プラン(食事指導・医療用サプリメント処方)をご提案します。

なんとなく調子が悪いを放置せず、専門家の力を使って、細胞から元気な体を取り戻しませんか?

当院の栄養外来ではミネラル不足、腸内環境の検査・治療を行っております(詳しくは【栄養療法】のページもご参照ください)。

9. ミネラルと炎症に関するQ&A

Q1. 重曹水は毎日飲んでも大丈夫ですか?

A. 健康な方が少量を摂取する分には問題ないケースが多いですが、ナトリウムの摂取量が増えることになるため注意が必要です。特に高血圧、心臓病、腎臓病などで塩分制限がある方は、必ず主治医に相談してください。また、胃酸を中和するため、食直後の摂取は消化不良の原因になることがあります。

Q2. マグネシウムを摂りすぎると副作用はありますか?

A. 通常の食事から摂る分には過剰症の心配はほぼありません。サプリメントや薬剤で大量に摂取した場合、最も一般的な副作用は「下痢」です(マグネシウムには便を柔らかくする作用があるため)。腎機能が低下している方は、「高マグネシウム血症」という危険な状態になるリスクがあるため、サプリメント摂取は医師の指導下で行ってください。

Q3. 「隠れマグネシウム不足」はどうすればわかりますか?

A. 通常の血液検査の「血清マグネシウム値」は、恒常性(ホメオスタシス)によって一定に保たれているため、体内の不足を正確に反映しないことがあります。当院のような栄養療法を行っているクリニックでは、より深い検査を行うことで細胞内の欠乏状態を評価することが可能です。自覚症状としては、まぶたのピクピク、足のつり(こむら返り)、生理痛の悪化、偏頭痛、便秘などがサインとなります。

Q4. 脂肪肝と言われましたが、薬ではなくミネラルで治りますか?

A. 脂肪肝(特にNAFLD/MASLD)の治療の基本は、食事と運動による生活習慣の改善です。記事で解説した通り、ミネラル(Mg、亜鉛)の充足や腸内環境の改善は、肝臓の炎症や脂肪蓄積を軽減する強力なサポートになります。ただし、これだけで完治する魔法の薬ではありません。糖質制限などの食事療法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

Q5. どのような水を選べば良いですか?

A. 腸内環境改善のエビデンスがあるのは、重炭酸塩や硫酸塩、マグネシウムを含む「中硬水」や「硬水」の天然炭酸水などです。ヨーロッパ産のミネラルウォーターにはこれらの成分が豊富に含まれているものが多くあります。ラベルを見て「重炭酸塩(Bicarbonate)」や「マグネシウム」の含有量を確認してみると良いでしょう。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

オンライン診療対象地域

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県

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