表参道・原宿の東京原宿クリニック院長の篠原です。今回は、「おならと思ったら水下痢だった」という経験をされた方に向けて、その原因と対策について詳しくお話しします。
突然の水下痢は不安を感じさせるものですが、その原因は様々です。発症からの期間によって考えられる原因が異なるため、それぞれの段階に応じた対策が必要になります。
この記事では、水下痢の原因を時期別に分類し、適切な対処法や検査方法、
さらには西洋医学では見つけにくい原因に対するアプローチまでを、解説していきます。
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Contents
1. 急性の水下痢(1週間以内)
急におきた下痢は、ウイルスや細菌などの感染によるものが多いです。原因を見ていきましょう。
主な原因
ウイルス性胃腸炎
- ノロウイルス:冬季に流行し、激しい嘔吐と下痢を引き起こすウイルス
- ロタウイルス:乳幼児に多く、重度の下痢と脱水を引き起こすウイルス
- アデノウイルスなど:呼吸器や胃腸に感染し、乳幼児に下痢を引き起こすことがあるウイルス
細菌性腸炎
- サルモネラ:汚染された食物(特に鶏肉、卵、乳製品など)や水で感染し、腹痛や発熱を伴う下痢を引き起こす細菌
- 病原性大腸菌:食物や水を介して感染し、激しい下痢や腹痛を引き起こす大腸菌の一種
- カンピロバクターなど:鶏肉などで感染し、発熱や腹痛を伴う下痢を引き起こす細菌
食中毒
- 黄色ブドウ球菌:調理者の感染から食品中で毒素を産生し、短時間で激しい嘔吐を引き起こす細菌
- ウェルシュ菌:調理後の放置された食品(シチューやカレーなど)で増殖し、腹痛や下痢を引き起こす細菌
- セレウス菌など:米や麺類などで増殖し、嘔吐型と下痢型の食中毒を引き起こす細菌
ストレスや過度の飲酒
薬剤性
薬も下痢の原因となりますので、注意が必要です。
- 抗生物質
- 制酸剤
- 高血圧薬など
症状の特徴
急性の水下痢は、突然始まり、通常は数日で改善します。おならと間違えるほど軽い症状から始まり、徐々に悪化することもあります。原因によっては以下のような症状を伴うことがあります。
- 腹痛や腹部の不快感
- 吐き気や嘔吐
- 発熱
- 食欲不振
- 脱水症状(喉の渇き、尿量減少、めまいなど)
急性の水下痢の対策
十分な水分補給
脱水を防ぐため、こまめな水分補給が重要です。水やお茶だけでなく、電解質バランスを整える経口補水液がおすすめです。市販の経口補水液を利用することもできます。
消化に優しい食事
- おかゆなどの消化の良い炭水化物
- スープや煮込み料理
- バナナやりんごなど、ペクチンを含む果物 脂肪分や刺激物は避け、少量ずつ頻繁に摂取するのがポイントです。
市販の整腸剤の使用
乳酸菌製剤やビオフェルミンなどの整腸剤が有効な場合があります。ただし、使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
休養と保温
体力の消耗を防ぐため、十分な休養をとり、体を冷やさないように注意しましょう。
医療機関の受診
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 高熱が続く
- 血便がある
- 激しい腹痛がある
- 脱水症状が改善しない
- 24時間以上症状が持続する
予防法
- 手洗いの徹底
- 食品の十分な加熱
- 調理器具の清潔保持
- 生水を避ける(特に海外旅行時)
急性の水下痢は、多くの場合、適切なケアと休養で自然に改善します。ただし、重症化を防ぐためにも、上記の対策を心がけ、必要に応じて早めに医療機関を受診することが大切です。
2. 亜急性の水下痢(1~4週間)
1週間以上続く場合は、ウイルス以外の原因も考慮していく必要があります。それでは原因を見ていきましょう。
主な原因
抗生物質関連下痢症
抗生物質の使用により腸内細菌バランスが崩れ、下痢が発生する状態です。
- クロストリジウム・ディフィシル感染:症抗生物質の使用後に腸内で毒素を産生する細菌による重篤な下痢症
- 腸内細菌叢の乱れ
過敏性腸症候群(IBS)の急性増悪
ストレスや食事の影響でIBSの症状が突然悪化する状態です。
腸管感染症の遷延
- 寄生虫感染(ジアルジア症など):ジアルジアなどの寄生虫による腸内感染で、下痢や栄養吸収不良が生じます。
- 持続的な細菌感染:腸内に残る細菌感染が長期間にわたって症状を引き起こす状態
炎症性腸疾患の初期症状
腸の慢性的な炎症により、腹痛や下痢などが初期症状として現れる状態です。
- 潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じ、下痢や血便を伴う慢性疾患
- クローン病:消化管のあらゆる部位に炎症が起こり、腹痛や下痢を引き起こす炎症性腸疾患
機能性下痢
器質的な異常がないにもかかわらず、ストレスや食事により慢性的に下痢が続く状態です。
症状の特徴
亜急性の水下痢は、急性期の症状が改善せずに続く場合や、一度改善したように見えて再び悪化する場合があります。以下のような特徴があります。
- 間欠的な腹痛や腹部不快感
- 食後に悪化する下痢
- 粘液便
- 体重減少
- 倦怠感
亜急性の水下痢の対策
プロバイオティクスの摂取
腸内細菌叢のバランスを整えるため、ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスの摂取が効果的です。ただし、プロバイオティクスにより悪化する場合もあるので、自覚症状により判断しましょう。
低FODMAP食の試行
FODMAP(発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)を制限する食事療法で、特にIBSの方に効果があるとされています。以下の食品を控えることで改善することがあります。
- 小麦、大麦、ライ麦
- 豆類
- 一部の果物(りんご、梨、すいかなど)
- 一部の野菜(たまねぎ、にんにく、キャベツなど)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)
FODMAPについてはこちらも御覧ください。
原因となる薬剤の見直し
抗生物質や制酸剤など、下痢の原因となる可能性のある薬剤を服用している場合は、医師と相談の上、代替薬への変更や投与量の調整を検討します。
ストレス管理
ストレスが症状を悪化させる可能性があるため、以下のようなストレス管理法を取り入れましょう。
- 深呼吸やメディテーション
- 軽い運動やヨガ
- 十分な睡眠
- 趣味や楽しみの時間を持つ
消化器内科の受診
症状が2週間以上続く場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。以下のような検査が行われる可能性があります。
- 血液検査(炎症マーカーや栄養状態の確認)
- 便検査(感染症や炎症の有無)
- 腹部エコー検査
- 必要に応じて大腸内視鏡検査
生活習慣の改善
- 規則正しい食生活
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- 禁煙
- アルコール摂取の制限
亜急性の水下痢は、単なる一過性の症状ではなく、何らかの基礎疾患や生活習慣の問題を示唆している可能性があります。そのため症状が長引く場合は、自己判断せずに専門医に相談することが重要です。
3. 慢性の水下痢(4週間以上)
さらに長く続く場合は、病気が隠れている可能性も考えてまずは検査を受けましょう。
主な原因
炎症性腸疾患
腸に慢性的な炎症が生じる疾患群で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を含みます。
- 潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じ、血便や下痢を引き起こす慢性疾患
- クローン病:消化管全体に炎症が広がり、腹痛や下痢を特徴とする炎症性腸疾患
慢性膵炎
膵臓の炎症が長期間続き、消化酵素の分泌が低下する疾患です。
胆汁性下痢症
胆汁酸が腸で適切に再吸収されず、下痢が起こる状態です。
腸管機能障害
- セリアック病:グルテンに対する免疫反応により、小腸の粘膜が損傷し、栄養吸収不良を引き起こす疾患
- 乳糖不耐症:乳糖を分解する酵素が不足し、乳製品を摂取すると下痢や腹痛が生じる状態
- 過敏性腸症候群(IBS):腸に器質的な異常はないが、ストレスや食事によって腹痛や下痢、便秘が起こる疾患
- 小腸内細菌増殖症(SIBO):小腸で菌が過剰増殖することにより、便通異常や腹部膨満をきたす疾患。SIBOについては、こちらもご参照ください。
内分泌疾患
ホルモンバランスの異常が原因で、腸や他の臓器に影響を与える疾患群です。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンの過剰分泌により、代謝が亢進し、下痢や体重減少を引き起こす疾患
- 副腎不全:副腎が十分なホルモンを分泌できず、全身の代謝や免疫に影響を及ぼす状態
悪性腫瘍
- 大腸がん:大腸に発生する悪性腫瘍で、血便や腹痛、便秘などを引き起こします。
- 神経内分泌腫瘍:ホルモンを産生する神経内分泌細胞に由来する腫瘍で、消化管に影響を与えることがあります。
薬剤性
薬剤の副作用によって腸や消化器官に問題が発生する状態です。
- メトホルミン(糖尿病薬):糖尿病治療薬で、腸内で下痢や消化不良を引き起こすことがあります。
- 制酸剤の長期使用:胃酸を抑える薬を長期間使用することで、消化不良や栄養吸収の問題が起こることがあります。
症状の特徴
慢性の水下痢は、4週間以上持続する下痢症状を指します。以下のような特徴や随伴症状がある場合があります。
- 持続的または間欠的な水様便
- 体重減少
- 倦怠感や疲労感
- 腹痛や腹部膨満感
- 食欲不振
- 栄養不良(貧血、ビタミン欠乏など)
- 夜間の下痢(炎症性腸疾患の場合)
慢性の水下痢の対策
消化器内科での精密検査
慢性の水下痢の場合、原因を特定するために以下のような検査が必要になることがあります。
- 血液検査(炎症マーカー、栄養状態、甲状腺機能など)
- 便検査(潜血、カルプロテクチンなど)
- 大腸内視鏡検査
- CT検査やMRI検査
- 小腸カプセル内視鏡検査
原疾患に対する適切な治療
診断された疾患に応じて、以下のような治療が行われます。
- 炎症性腸疾患:抗炎症薬、免疫抑制剤、生物学的製剤など
- 慢性膵炎:膵酵素補充療法、疼痛管理
- セリアック病:厳格なグルテンフリー食
- 胆汁酸下痢症:胆汁酸吸着剤
食事療法
疾患や状態に応じて、以下のような食事療法が推奨されます。
- 低脂肪食:慢性膵炎や胆汁酸下痢症の場合
- グルテンフリー食:セリアック病の場合
- 低FODMAP食:IBSやSIBOの場合
- 乳糖制限:乳糖不耐症の場合
栄養サポート
慢性の下痢による栄養不良を防ぐため、以下のようなサポートが必要になることがあります。
- ビタミンやミネラルのサプリメント
- 経腸栄養剤の使用
- 重症例では一時的な中心静脈栄養
ストレス管理と生活習慣の改善
- 規則正しい生活リズムの確立
- 十分な睡眠
- ストレス軽減テクニック(瞑想、ヨガなど)の実践
- 適度な運動
薬物療法
症状のコントロールのために、以下のような薬剤が使用されることがあります。
- 止痢薬(ロペラミドなど)
- 整腸剤
- 抗コリン薬
- 抗うつ薬(低用量で腸管運動を調整)
重要なのは、慢性の水下痢は単なる症状ではなく、潜在的な重大な疾患のサインである可能性があるということです。4週間以上症状が続く場合は、必ず専門医の診察を受けてください。
セルフチェックテスト
ご自身の症状をもとに、どのような疾患が考えられるかチェックしてみましょう。ただしこれは可能性であって、診断ではありませんので、自己診断はしないようお願いいたします。
西洋医学的検査で異常が見つからない場合
大腸カメラなどの従来の検査で異常が見つからず、途方に暮れている方も多いのではないでしょうか。そんな時こそ、機能性医学的(分子栄養学的)アプローチが有効な場合があります。
機能性医学(分子栄養学)とは
機能性医学は、体の機能や代謝に焦点を当て、症状の根本原因を探る医学アプローチです。西洋医学が主に病気の診断と治療に重点を置くのに対し、機能性医学は個々人の生理学的、生化学的な特性を考慮し、より包括的な視点で健康問題にアプローチします。
おすすめの検査
ここから挙げる検査は西洋医学の検査ではなく、自費での検査になりますが、多くの情報を得られます。
GIMAP(腸内細菌検査)
GI-MAPは、最新のDNA技術を用いて腸内の微生物を包括的に分析する検査です。この検査により以下のような情報が得られます。
- 善玉菌と悪玉菌のバランス
- 炎症マーカー(カルプロテクチンなど)
- 消化酵素の状態
- 腸の透過性(リーキーガット)の指標
- 寄生虫や病原性細菌の有無
この検査結果に基づいて、プロバイオティクスの選択や食事療法の調整、必要に応じた抗菌療法などを行うことができます。GIMAPにつきましては、こちらもご参照ください。
遅延型アレルギー検査
IgG抗体を測定することで、体に合わない食品を特定します。主な特徴は、
- 遅延型アレルギー反応の検出
- 120種類以上の食品に対する反応を測定:項目はこちらを参照してください
- 症状と食品の関連性を明確化 検査結果に基づいて、一定期間特定の食品を除去し、症状の改善を図ります。その後、徐々に食品を再導入していくことで、長期的な食事プランを立てることができます。
機能性医学的アプローチに基づく治療
これらの検査結果を総合的に分析することで、従来の検査では見つけにくい問題を特定し、より個別化された治療アプローチを立てることができます。主な治療法には以下のようなものがあります。
個別化された食事療法
検査を行うことによって、よりその人に合った食事プランを提供できます。
- 遅延型アレルギー検査の結果に基づく除去食
- 腸内細菌叢のバランスを整える食事プラン
- 抗炎症作用のある食品の積極的な摂取
ターゲットを絞った栄養療法
また、必要な栄養素も個人差が大きく、検査を行うことによりより合った栄養素を提案できます。
- 血液検査で明らかになった栄養素欠乏の補正
- 腸管修復のためのL-グルタミン、亜鉛、ビタミンDなどの補充
- 抗酸化物質(ビタミンC、E、セレンなど)の補充
腸内環境の改善
- GI-MAPの結果に基づいた個別化されたプロバイオティクス療法
- プレバイオティクス(食物繊維)の適切な摂取
- 必要に応じた抗菌療法や抗真菌療法
ストレス管理と生活習慣の最適化
- 副腎サポートのためのアダプトゲン(ハーブ)療法:副腎疲労などの、副腎機能が低下している場合、腸内環境が整わないことが多いです。そのため、副腎をサポートするハーブなども有効です。副腎疲労につきましては、こちらもご参照ください。
- 睡眠の質を改善するためのメラトニン補充
- マインドフルネス瞑想やヨガの実践
解毒プロトコル
- 肝臓や腎臓の解毒機能をサポートするサプリメント療法
- 重金属デトックス(必要な場合)
- 環境毒素への曝露を最小限に抑える生活指導
解毒(デトックス)についてはこちらも御覧ください。
これらの治療法は、症状の改善だけでなく、体全体の健康状態を向上させ、長期的な健康維持につながります。
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当クリニックでの取り組み
東京原宿クリニックでは、このような機能性医学的アプローチを積極的に取り入れています。従来の西洋医学的検査で原因が特定できない方や、長期にわたる症状でお悩みの方に対して、より包括的な検査と個別化された治療プランを提供しています。
特に、慢性的な消化器症状でお悩みの方には、以下のようなステップで対応しています。
- 詳細な問診と従来の検査結果の確認
- 必要に応じた追加の機能性医学的検査の実施
- 検査結果に基づいた個別化治療プランの立案
- 定期的なフォローアップと治療プランの調整
私たちの目標は、単に症状を抑えるというよりも、その根本原因から解決することです。
ただし、機能性医学(分子栄養学)的なアプローチをするためには、西洋医学での病気がないかどうかのチェックは先に済ませておく必要があります。
まとめ
「おならかと思ったら水下痢」という経験は、体からの重要なメッセージかもしれません。急性の場合は自然に改善することも多いですが、症状が長引く場合は適切な検査と治療が必要です。
西洋医学的アプローチで原因が特定できない場合でも、あきらめる必要はありません。機能性医学的検査を通じて、より詳細な体の状態を把握し、根本的な原因に対処することが可能です。
健康は一人一人異なります。あなたの体に合った最適な解決策を見つけるためには、専門家のサポートが役立つでしょう。長引く水下痢でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院において、分子栄養学的なアプローチは、自費での診療となります。ご興味のある方は以下をご参照ください。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
無料レポート新リリースしましたのでお受け取りください!
1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。