表参道・原宿の東京原宿クリニック院長の篠原岳です。今回は、「リーキーガット症候群」について詳しく解説します。
リーキーガット症候群は腸の健康に関連し、全身のバランスに深く影響します。慢性的な疲労感や肌の調子の悪さ、消化不良などに悩んでいる場合、それは腸からのサインかもしれません。腸のバリア機能が失われることで、体全体に多くの影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
Contents
リーキーガット症候群とは?
リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)は、腸壁の透過性が異常に高まった状態を指し、通常は体内に入るべきでない物質が腸壁を通過するようになります。この透過性の増加により、体内の免疫系が過剰に活性化され、慢性的な炎症や多様な健康問題を引き起こす可能性があります(下図)。
腸は、栄養素を吸収しつつも有害物質を防ぐ「バリア」としての役割を持っています。このバリア機能が失われると、未消化の食物粒子や毒素が血流に入り込み、身体全体の不調を招くのです。バリア機能は、上の図のように、消化酵素不足・善玉菌の異常・タイトジャンクションの異常・悪玉菌の増殖・腸管免疫の異常などがあると、リーキーガットをおこしてしまいます。リーキーガット症候群は単に腸内環境の悪化にとどまらず、全身に影響を及ぼす現代の生活習慣病ともいえる状態です。腸の健康が維持されないと、体全体の健康にも大きな悪影響を与えます。
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リーキーガット症候群の症状
リーキーガット症候群は多岐にわたる症状を引き起こし、消化器系だけでなく全身に影響を及ぼします。
- 消化器系の問題: 腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、消化不良などの消化器系の症状が多く見られます。これらの症状は腸の透過性が高まることによって腸内環境が乱れ、正常な消化機能が妨げられることが原因です。
- 全身性の症状: 慢性的な疲労感(副腎疲労)、頭痛、関節痛、筋肉痛など。腸の透過性が全身の倦怠感に関与する可能性があります。腸壁の透過性が高まり、毒素や未消化の食物が体内に侵入すると、慢性炎症が引き起こされ、結果として疲労感や痛みが増加することがあります。(参考文献:Intestinal Barrier in Human Health and Disease)
- 皮膚の問題: アトピー性皮膚炎、湿疹、にきびなど、腸内環境の悪化が皮膚の健康に直接的に影響を与えます。腸と皮膚は密接に連携しており、腸内バランスの崩れが肌の炎症反応を引き起こすことが分かっています。
- 精神的な症状: 不安感、うつ症状、集中力の低下、記憶力の減退など。腸-脳軸が精神的な健康にも大きな影響を与えていることが研究で示唆されています。腸内の有害物質が血流に乗り、脳に到達することで、神経系の炎症が生じ、精神的な不調を引き起こすことがあります。(参考文献:Breaking down the barriers: the gut microbiome, intestinal permeability and stress-related psychiatric disorders)
- 免疫系の問題: アレルギー反応の悪化、頻繁に風邪を引くなど、腸の健康が免疫力を左右します。腸内のバリア機能が低下すると、体は外部からの異物を誤認し、過剰な免疫応答を引き起こすことがあります。その結果、アレルギーや自己免疫疾患が悪化します。(参考文献:Leaky Gut As a Danger Signal for Autoimmune Diseases)
これらの症状は加齢や生活習慣と混同されがちですが、腸内環境の問題が根底にある可能性が高いです。腸の透過性が増加することで、全身に及ぶ幅広い影響が観察されるため、早期の介入が必要です。
セルフチェックテスト
リーキーガットの可能性がどのくらいあるか、セルフチェックテストをしてみましょう。ただしこれは診断ではありませんので、参考程度にしてください。
リーキーガット症候群の原因
リーキーガット症候群の原因には多くの要因が絡んでいます。
- 不健康な食生活: 加工食品の過剰摂取、小麦(グルテン)、アルコールなどは腸壁に負担をかけ、透過性を高めます。特に精製された砂糖や飽和脂肪の摂取が腸壁を傷つける原因となります。これにより、腸粘膜の炎症が引き起こされ、腸内のバリア機能が低下します。
- 慢性的なストレス: 長期間のストレスは腸のバリア機能を弱めることが知られています。ストレスホルモンであるコルチゾールは腸壁の透過性を増加させ、腸内細菌叢のバランスを乱し、悪玉菌の増殖を促進します。慢性的なストレスは腸内フローラの構成に大きな影響を与え、免疫応答の異常を引き起こす可能性があります。
- 腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス): 腸内細菌のバランスが乱れることにより、腸粘膜が弱くなり、透過性が高まります。善玉菌の減少と悪玉菌の増加が腸の健康を損ない、炎症を促進します。
- 薬物の使用: 長期にわたる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質の使用は腸内の有益な細菌を減少させ、バリア機能を損ないます。抗生物質の頻繁な使用は、腸内の善玉菌を破壊し、腸内細菌の多様性を失わせるため、腸壁の健康に悪影響を与えます。また、NSAIDsは腸壁に炎症を引き起こし、透過性を高めるリスクがあります。
- 環境毒素への暴露: 農薬や重金属、食品添加物などの環境毒素は腸粘膜にダメージを与え、透過性を増加させることがあります。これらの有害物質が腸内に入り込むことで、腸のバリア機能が低下し、全身の炎症が引き起こされる可能性があります。
- 感染症: 腸内の病原性細菌や腸カンジダ、ウイルス、寄生虫による感染は、腸粘膜に損傷を与え、透過性を高める原因となります。感染症後に腸内環境が乱れることで、リーキーガット症候群が発症するリスクが高まります。特に、腸カンジダは、リーキーガットを起こしやすく、体調不良の原因になっていることが多いです。腸カンジダにつきましてはこちらをご参照ください。
これらの要因が組み合わさることで腸のバリア機能が低下し、さまざまな健康リスクが高まります。腸内環境の乱れは腸内細菌の多様性の減少や悪玉菌の増殖を促し、炎症や透過性の増加に寄与するため、複合的な原因に対処することが重要です。
リーキーガット症候群と関連する疾患
リーキーガット症候群は、腸壁の透過性が高まることで、さまざまな疾患と関連しています。
- 自己免疫疾患: 関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)など、自己免疫疾患との関連が指摘されています。腸の透過性が増加すると、免疫系が自己の組織を攻撃するリスクが高まります。(参考文献:Partners in Leaky Gut Syndrome: Intestinal Dysbiosis and Autoimmunity)
- 消化器系疾患: 過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病など。腸の透過性が亢進することで、腸内の炎症が慢性化し、これらの消化器系疾患を悪化させる可能性があります。
- 精神・神経系疾患: うつ病、不安障害、自閉症スペクトラム障害、副腎疲労など。腸-脳軸を通じて腸内環境が精神的な健康に影響を及ぼし、精神・神経系の疾患に関連することが分かっています。
- 皮膚疾患: アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびなど。腸内環境の悪化は皮膚のバリア機能にも影響を与え、皮膚炎症を引き起こすことがあります。
- 代謝性疾患: 2型糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)など。腸内の透過性が亢進すると、インスリン抵抗性が悪化し、代謝異常が生じやすくなります。
- アレルギー疾患: 食物アレルギー、喘息など。腸の透過性が高まると、食物抗原が血中に侵入しやすくなり、アレルギー反応が増悪する可能性があります。
これらの疾患とリーキーガット症候群の因果関係は完全には解明されていませんが、腸内環境の健康が全身の健康に重要な役割を果たしていることが多くの研究で示唆されています。
当院での診断
リーキーガット症候群の診断には、以下のような科学的手法を取り入れています。
- GIMAP検査(腸内細菌叢検査): 便サンプルを用いて腸内フローラの構成を詳細に分析し、病原菌の有無を調べます。これにより、腸内環境の全体像を把握し、腸内細菌のバランスを評価します。GIMAPにつきましては、こちらをご参照ください。
- 遅延型アレルギー検査(食物アレルギー検査): 血液検査を通じて食物に対する遅延型アレルギー反応を確認します。これにより、腸の透過性の原因となる食物を特定し、腸内の炎症を抑えるための食事療法を策定します。
- 栄養状態の評価: ビタミンやミネラルなど、腸の健康に不可欠な栄養素が不足していないかを評価します。そのためには、血液検査や、オリゴスキャンなどを用いています。
当院での治療
リーキーガット症候群の治療は、個々の患者さんに合わせたアプローチを行い、腸の健康を回復させることを目指しています。
- 食事療法: 腸に優しい食事を心がけ、発酵食品や食物繊維を多く摂取し、グルテンや加工食品は避けます。抗炎症作用のある食材を積極的に取り入れ、腸内フローラの改善を図ります。特に、腸内の善玉菌を増加させる発酵食品やプレバイオティクスを含む食品は重要です。ただし、お腹の張りやすいSIBOのような症状がある場合は、プレバイオティクスや、過剰な腸活(以下)は避けた方が無難です。以下に、おすすめの食事を挙げます。
食物繊維が豊富な食材としての、さつまいも
・食物繊維が豊富な食材としては、さつまいも、にんじん、ほうれん草、ブロッコリー、オクラ、りんご(皮付き)、アボカドなどは、水溶性と不溶性の食物繊維が含まれていて、腸内の善玉菌のエサになり、腸内フローラのバランスを整える助けになります。特にプレバイオティクスとして働く繊維がリーキーガットの改善に効果的です。
・発酵食品としては、納豆、味噌、キムチ、ぬか漬け、ケフィアなどにはプロバイオティクスが含まれ、腸内の善玉菌を増やす作用があります。腸内細菌のバランスが整うと腸のバリア機能が強化され、腸壁の修復が促されます。
コラーゲン豊富な食品としては、骨付き肉の煮込みスープ(ボーンブロス)、鶏皮、魚の皮、ゼラチンなどはコラーゲンは腸粘膜の修復を助け、腸のバリア機能をサポートします。特にボーンブロスは腸の健康維持に役立つグルタミンやアミノ酸も豊富に含まれています。
・オメガ3脂肪酸を含む食材としては、鮭、いわし、アマニ油、チアシード、クルミなどには抗炎症作用が強く、腸内の炎症を軽減するのに役立ちます。リーキーガットに関連する炎症の鎮静化に効果的です。
・亜鉛やビタミン類が豊富な食材としては、カボチャの種、牡蠣、ナッツ類(特にクルミ)、ほうれん草、卵、レバーなどは腸粘膜の修復に不可欠です。亜鉛は腸細胞の再生を促し、ビタミンAやDは腸壁を強化する役割を持っています。
- サプリメント療法
主に用いている栄養素やサプリメントをお示しします。
L-グルタミン: 腸粘膜の修復を助けるアミノ酸であり、腸のバリア機能を強化します。腸細胞の主要なエネルギー源であり、腸の修復過程を促進します。
プロバイオティクス: 腸内細菌叢のバランスを整える善玉菌サプリメントです。多様な菌株を含むプロバイオティクスは、腸内の有害な細菌を抑制し、腸の健康をサポートします。
亜鉛: 免疫機能の強化と腸の修復をサポートします。亜鉛は腸粘膜の修復に必須であり、炎症の軽減に寄与します。
オメガ3脂肪酸: 抗炎症作用を持つ脂肪酸であり、腸内の炎症を抑制し、腸壁のバリア機能を改善します。 - ストレス管理: 瞑想や深呼吸、ヨガなどリラクゼーション法を活用し、ストレスを軽減して腸のバリア機能を保ちます。ストレスは腸内環境に大きな影響を与えるため、適切なストレスマネジメントが重要です。
- 生活習慣の改善: 十分な睡眠の確保も重要です。良質な睡眠は腸内のホルモンバランスを維持し、腸の修復を促します。
- 検査に基づいた治療:主に、上記のGIMAP検査(腸内細菌検査)の結果を元に、ピロリ菌が多そうであれば除菌、カンジダが増加していれば除菌、消化酵素が不足していれば補充し、腸の炎症があればグルタミンを基本として抗炎症につとめます。
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患者データ:30代男性、主訴:蕁麻疹
具体的な症状:慢性的な蕁麻疹を抱えていて、他院でリーキーガット症候群と診断された。食事療法などを指導され行っていたが改善しないため、当院に来院された。
検査データ
解説:他院での持参データ(遅延型フードアレルギー)では、小麦に対する遅延型アレルギーがあり、小麦を避けるように指導されていたが改善しなかった。酵母菌や、カンジダ・アルビカンスに対するIgGアレルギーが認められたため、腸カンジダによるリーキーガット症候群と診断し、カンジダ除菌(抗真菌薬、抗真菌ハーブ)を2ヶ月行ったところ、2ヶ月で蕁麻疹が消失した。
抗真菌薬・サプリメントのリスク、副作用:サプリメントに含有されている各栄養素に対しておきるアレルギー、消化器症状(ムカつき、不快感などを)
料金:
リーキーガット症候群の予防と日々のケア
リーキーガット症候群を予防するためには、以下の生活習慣の見直しが不可欠です。前項と重複することもありますが、予防も大切です。
- バランスの取れた食事: 発酵食品や食物繊維を積極的に取り入れましょう。腸内環境を整えるためには、キムチ、味噌などの発酵食品が効果的です。また、緑黄色野菜やナッツ類なども取り入れることで腸内細菌にとって良い環境を作ります。
- ストレス管理: 瞑想やマインドフルネス、ゆったりとした時間を持つことが大切です。例えば、深呼吸を行ったり、好きな音楽を聴いたりして、心を落ち着ける時間を意識的に作りましょう。ストレスをため込まず、上手に解消することが腸の健康に大きく寄与します。
- 十分な睡眠: 質の高い睡眠を確保し、スマートフォンの使用を控えリラックスした状態で寝ることが重要です。また、規則正しい生活リズムを心がけることで、ホルモンバランスが整い、腸の機能がより良く保たれます。
- 適度な運動: ヨガやウォーキングなどの適度な運動が腸の蠕動運動を促し、老廃物の排出を助けます。
- アルコールとカフェインの制限: アルコールやカフェインは腸内の炎症を促進し、腸壁の透過性を高める可能性があるため、適量を守ることが大切です。
- 水分補給: 1日に2リットル以上の水を飲むことで腸内の老廃物を効率的に排出し、腸内環境を整えることができます。
日々の生活の中で腸の健康に注意を払い、バランスの取れた生活習慣を心がけることで、リーキーガット症候群の予防に大きく貢献します。また、腸内環境を整えることで、全身の健康が向上し、より質の高い生活を送ることが可能になります。
今後の展望
リーキーガット症候群に関する研究は急速に進展しており、新たな知見が続々と報告されています。
- マイクロバイオームと腸の透過性: 腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の構成が腸の透過性に大きな影響を与えることが分かってきました。特定の細菌は腸粘膜のバリアを強化し、他の細菌はそれを弱める可能性があります。これらの知見を活かした新しい治療法の開発が期待されています。
- ゾヌリンの役割: ゾヌリンというタンパク質が腸の透過性を調節する重要な因子として注目されています。ゾヌリンの過剰産生を抑制することや、その作用を阻害する薬剤の開発が進められています。
- 腸-脳軸の研究: 腸と脳の双方向の関係である「腸-脳軸」に関する研究が進み、リーキーガット症候群と精神疾患の関連性が深く解明されつつあります。この研究により、うつ病や不安障害の治療に新しいアプローチがもたらされる可能性があります。
まとめ
リーキーガット症候群は腸のバリア機能が低下し、全身に影響を及ぼす複雑な健康問題です。その原因はさまざまですが、腸内環境のバランスが乱れることで、慢性的な炎症や自己免疫疾患、精神・神経系の問題など多岐にわたる症状が引き起こされます。
当院では、GIMAP検査や遅延型アレルギー検査、血液検査などを活用し、リーキーガット症候群の診断と治療を行っています。食事療法やサプリメント療法、リーキーガットを起こしている細菌叢などへの治療、腸カンジダの治療、ストレス管理、生活習慣の改善など、多角的なアプローチで腸の健康を回復し、全身の健康改善を目指します。
腸の健康は全身の健康に直結しており、リーキーガット症候群を防ぐことで、より健康的で活力に満ちた生活を手に入れることが可能です。もし、リーキーガット症候群の症状に心当たりがある場合は、当院にご相談ください。当院では、栄養外来において、リーキーガット症候群の診断・治療を行っています。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。