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分子栄養学

副腎疲労の改善過程と十牛図

表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。

副腎疲労とは、慢性的なストレスで副腎が疲れ果てて(実際には、HPA軸が異常をきたして)、コルチゾールというホルモン分泌が低下することで起きます。

副腎疲労を改善するために、栄養を整えたり、腸内環境を整えたりすることも大事です。

ところが、副腎疲労を改善するためには、栄養のみならず、体に負担のかかっている炎症や、精神的な負担など、色々なことに対処する必要があります。

そのために、人によっては、改善に時間がかかったり、なかなか治療効果が現れないということもあります。

うまく行かない時に、不安になってしまうことが、治療効果を低下させてしまうことにもなります。

そこで、大概の方が通る副腎疲労の改善の道筋を予め頭に入れておくことによって、改善過程には紆余曲折がある、ということが分かれば、そこまで不安にならなくて済むのではないかと考えました。

そこで、今回は、十牛図という、禅の教えを参考に、副腎疲労の回復過程をみていきたいと思います。

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十牛図とは

十牛図とは、悟りにいたる10の段階を10枚の図と詩で表した禅の教えです。

真の自己が牛の姿で表されており、真の自己を求める自己は牧人の姿で表されています。

作者は、中国北宋時代の臨済宗楊岐派の禅僧・廓庵とされています。

十枚の図の解釈は以下のようになっています。

この図が素晴らしいのは、分かりにくい禅の思想や境地を分かりやすく示しているということです。

以下は、WikiPediaより引用・一部改変(十牛図 – Wikipedia)させていただきました。

  1. 尋牛(じんぎゅう):仏性を見つけようとしたが、牛は見つからない。
  2. 見跡(けんぜき):経や教えによって仏性を求めようとするが、分別の世界からはまだ逃れられない。
  3. 見牛(けんぎゅう):行においてその牛を身上に実地に見た境位。
  4. 得牛(とくぎゅう):牛を捉まえたとしても、それを飼いならすのは難しく、時には姿をくらます。
  5. 牧牛(ぼくぎゅう):本性を得たならばそこから真実の世界が広がるので、捉まえた牛を放さぬように押さえておくことが必要。慣れてくれば牛は素直に従うようにもなる。
  6. 騎牛帰家(きぎゅうきか):心の平安が得られれば、牛飼いと牛は一体となり、牛を御する必要もない。
  7. 忘牛存人(ぼうぎゅうそんにん):家に戻ってくれば、牛を捉まえてきたことを忘れ、牛も忘れる。
  8. 人牛倶忘(じんぎゅうぐぼう):牛を捉まえようとした理由を忘れ、捉まえた牛を忘れ、捉まえたことも忘れる。忘れるということもなくなる世界。
  9. 返本還源(へんぽんかんげん):何もない清浄無垢の世界からは、ありのままの世界が目に入る。
  10. 入鄽垂手(にってんすいしゅ):悟りを開いたとしても、そこに止まっていては無益。再び世俗の世界に入り、人々に安らぎを与え、悟りへ導く必要がある。

これからわ分かることは、悟りはすぐ得られるわけではなく、紆余曲折があり、最後は、世俗に戻る、ということです。

これを、副腎疲労の回復過程に当てはめた時に、私達が経験する回復過程に良く似ていると考えました。

そして、予め回復過程がわかっている場合には、なかなか改善しにくかったとしても、そこまで不安にならずに済むのではないかと考えました。

副腎疲労と十牛図

さて、上記の十牛図を副腎疲労に独断と偏見で当てはめたものが以下になります。

自分は、どの段階か考えながら読んでみるといいかも知れませんね。

  1. 尋牛 – 副腎疲労になって自分の本来の元気な状態を失ったことに気づき、それを取り戻そうとするが、どうすればいいかわからないという状況。
    そもそも、副腎疲労にならなければ、副腎疲労という存在すら知らなかったと思います。
    まずは、一般的な病院に行って検査しても問題ないと言われて途方に暮れてしまうこともあります。
  2. 見跡 – 専門家やサプリメントや治療法などによって副腎疲労を治そうとするが、まだ完全には回復できない。
    副腎疲労の専門家を見つけたり、指示に従ってサプリメントを飲んでいて、少し改善しましたが、それでも完全に回復とまでは行ってない状況です。
    指示に従っているのに。。となるのは、この時期で、また他の専門家を探したりします。
  3. 見牛 – 副腎疲労の原因や自分の体質や生活習慣などについて深く理解し、自分に合った方法で治療に取り組む。
    副腎疲労は、栄養を整える以上に、生活習慣と改善しています。
    自分の運動や睡眠などの生活習慣を整えないと改善しない、ということが分かってくる段階です。
  4. 得牛 – 副腎疲労の症状が改善されたり消えたりするが、それを維持するのは難しく、時には再発したり悪化したりする。
    副腎疲労症状が、しばしば再発する原因として多いのは、改善することでその体力を仕事などに打ち込んでしまって、そこで体力を消耗して、再悪化することは多いです。
    腸カンジダの再発もこの段階で起きることが多いです。
  5. 牧牛 – 本来の元気な状態を得たならば、そこから幸せな人生が広がるので、治った副腎疲労を再発させないように注意しておくことが必要。
    慣れてくれば自分の体と心のバランスを保つことができるようにもなる。
    副腎疲労には、体の状態も大事ですが、心の状態も密接に関わっている、ということが腑に落ちるという段階です。
  6. 騎牛帰家 – 元気と平安が得られれば、自分と副腎疲労は一体となり、副腎疲労と戦う必要もない。
    自分の体と心を大切にしながら生きることができる。
    副腎疲労になったおかげで、自分の生活習慣を見直したり、体のことを勉強することができて、自分の体をいたわることができた、ということに気づくことができる時期です。
    そうなると、副腎疲労は、敵ではなかった、と腑に落ちるとしめたものです。
  7. 忘牛存人 – 元気になって家に戻ってくれば、副腎疲労になったことを忘れ、副腎疲労も忘れる。ただ自分らしく生きることに集中する。
    自分はいったい、何をしたかったのだろうと考え、その方向に向かっていくというフェーズです。
    今まで、無理して自分をだまして仕事してきませんでしたでしょうか。
    これからは、自分のやりたいことに向かっていけばいいと気づく段階です。
  8. 人牛倶忘 – 副腎疲労になろうとした理由を忘れ、治った副腎疲労を忘れ、治ったことも忘れる。忘れるということもなくなる世界。自分は常に元気であることを当然とする。
    日常生活で自分のやりたいことを元気で行っていることで、副腎疲労であったことすら忘れている段階です。
    まさに、副腎疲労というマイナスが反転して、プラスになったとも考えられます。
  9. 返本還源 – 何もない清浄無垢の世界からは、ありのままの世界が目に入る。自分も他人もすべて元気で幸せであることを感謝する。
    この世界の根源が感謝で出来ているということが腑に落ちる段階です。
    日々の感謝の積み重ねが、自分の幸せに繋がるということがわかります。
  10. 入鄽垂手 – 元気になったとしても、そこに止まっていては無益。
    再び社会の中に入り、他人に喜びや安らぎを与え、元気へ導く必要がある。
    ただ、副腎疲労を改善しても意味がなく、また俗生活に戻って、その中で感謝の中に生きていることで、自分に関わる人達の不調を勝手に治してしまうという段階です。
    こうなると、存在していること自体で、癒やしを与えるという段階にもなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

十牛図がとても素晴らしいのは、多くのことがこの段階を経るということです。

副腎疲労も単に栄養だけ整えればいいというわけではなく、各段階においての気づきというものがとても大事ということになります。

とかく、治らなくて辛く考えてしまいがちな副腎疲労も、段階があるとわかれば、次にくることが予想できるので、不安を少しでも減らすことができるのではないかと考えました。

ご参考になれば幸いです。

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