表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
未曾有の感染症が蔓延していたり、ストレスが多かったりと、私達は自分の免疫力を高めることを考えていかなくてはならなくなりました。
免疫力が低下すると、感染症にかかりやすく、がんにもなりやすくなります。
そして、自分の免疫力をアップさせるためには、この薬を飲めばすぐアップするというものでもありません。
そこで、今の感染症時代において、どのように免疫力を高めるかを考えていきたいと思います。
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Contents
免疫力をアップする重要な臓器は「腸」
免疫で大事なポイントとして、まず最初は、免疫が活動する場所を考えてみましょう。
私達の体の外から、異物が中に入るところ、つまり、体と外界との境界線上で免疫は活動しています。
境界線上とは、どこでしょうか?
それは、胃腸、呼吸器、泌尿生殖器などの粘膜内です。
そのうち、最大の部分は、消化器(腸)なのです。
成熟した免疫細胞の75%が腸に存在していると言われています。
逆に言うと、腸のバリア機能が障害されると、免疫機能が低下してしまいます。
つまり、腸粘膜を正常に保っておくことが、免疫を正常化するためにはまず必要になります。
腸のバリア機能
腸粘膜は、表面積はテニスコートサイズでありながら、厚さが1つの細胞膜しかないほど大変薄いです。
こんな薄い膜を境にして、体の中と体の外を分け隔てているので、正常に機能させるためには、食べ物がちゃんと消化される必要がありますし、また異物を除去するための免疫機能がとても重要になります。
そのため、免疫細胞が腸に多く存在するわけですが、これらの細胞は、腸内の環境をいつも監視しているのです。
そして、この監視をすることによって、免疫細胞は、教育されて成熟していきます。
そうです、免疫細胞は、腸によって「大人」になる必要があります。
異物に対処するIgA抗体
さて、一つの腸免疫の特徴として、粘液で活躍するIgAという抗体があります。
IgA抗体は、Yの字をしていて、外からの異物にくっついて体に侵入してくるのを防いでくれます。
研究によると、このIgA抗体がちゃんと出ているかというのが、腸のバリアそのものであると言われています。
副腎疲労であると、IgAの量が少なくなります。
ですので、ご自分の便中のIgAレベルを測定すると、自分の粘膜免疫がどれくらいだということもわかりますし、副腎疲労のストレスによって、どのくらい免疫がやられていることがわかります。
当院では、GIMAPという便の検査をすることで、IgAのレベルを測定しています。
GIMAP検査はこちら。
IgAが少なければ、やはり腸のバリアー機能が低下している、という判断になります。
バリア機能が破綻すると、腸の中の処理されていないものが、体内に入ってきて、免疫反応をおこし、様々な病気に関わっています。
自己免疫疾患や、免疫機能が気になる方は、GIMAPを行って、ご自分の腸内環境を調べたほうがいいかと思います。
腸内細菌の重要性
消化管の機能は、腸内細菌との関係に非常に関連しています。
腸内細菌は、腸のバリア機能と同時に免疫力アップと関係があります。
腸内細菌の情報は、免疫細胞に伝わって、免疫細胞が教育されるトレーニングの場所として機能します。
最近の研究では、特定の腸内細菌と、免疫の病気の関連もわかってきました。
例えば、プレボテラ属が関節リウマチと関連しています(PMID: 27333153)。
逆に、良い腸内細菌では、リーキーガットを防いでくれます。
そのため、関節リウマチなどの免疫の病気にかかっている方は、腸内細菌を確認しておくことも有用だと思います。
そして、腸内環境が荒れると、腸に慢性炎症をおこし、それがリーキーガットを引き起こしてしまいます。
ということで、免疫力をアップするためには、まず腸内環境を改善する、ということになります。
腸内環境を改善する手段として、有名なのは、4Rです。
腸内環境を改善させるための4R
腸内環境を改善するための4Rとは、Remove(除去)、Replace(補充)、Reinoculate(植菌)、Repair(修復) の4つのステップのことです。主に、リーキーガット症候群の改善に用いられます。
腸内環境とリーキーガット症候群
腸内環境は、消化吸収、解毒、バリア機能、微生物叢、神経内分泌など、様々な役割を担っています。腸内環境が悪化すると、腸の壁に隙間ができ、未消化のタンパク質や有害物質が体内に入り込んでしまう「リーキーガット症候群」を引き起こす可能性があります。リーキーガット症候群は、副腎疲労、肝臓疲労、脳疲労などの原因となる可能性があります。
4Rの概要
1. Remove(除去)
グルテン (小麦に含まれるタンパク質)
カゼイン (乳製品に含まれるタンパク質)
添加物
加工食品
悪性細菌 などの病原菌
ストレス
グルテンやカゼインは腸の粘膜を傷つけ、添加物や加工食品は腸内細菌を殺してしまいます。ストレスも腸内環境に悪影響を及ぼします。これらを除去することがとても大事です。
2. Replace(補充)
除去したものの代わりに、消化を助ける消化酵素や胃酸などを補います。
3. Reinoculate(植菌)
善玉菌を増やすために、プロバイオティクスやプレバイオティクスを摂取します。
4. Repair(修復)
傷ついた腸粘膜を修復するために、グルタミンや亜鉛などを摂取します。
4Rを行うことで、免疫力の向上、アレルギー症状の緩和、疲労回復、精神的な安定など、様々な効果が期待できます。
腸の炎症を改善させる食事
良い腸内細菌がリーキーガットを防いでくれるし、炎症があると、リーキーガットを進行させて、さらに炎症を惹起して、免疫力が低下してしまいます。
ということで、腸を改善させるためのファーストステップは、炎症を改善することです。
では、炎症を改善させるためにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは、腸に炎症を起こしてしまう食事を避けるということになります。
ご存知のように、有名なところでは、小麦、乳製品、精製された砂糖などは、直接、腸の炎症を悪化させてしまいます。
肥満は慢性炎症の原因になる
肥満はどうでしょうか。
脂肪が蓄積しすぎると、炎症性サイトカインが生成されて、慢性炎症の原因となります。
肥大した脂肪細胞が、マクロファージを呼び寄せ、TNFαと呼ばれる強力な炎症性サイトカインを作ってしまいます。。
肥満を解消するためには、血糖コントロールを改善して、血糖値のスパイクがおこらないようにする必要があります。
血糖値のコントロールはどこでも出てくるぐらい、体調のベースとなるものです。
クルクミンは、強力な抗炎症作用がある
さて、多くの植物には、強力な抗炎症作用があることも知られています。
クルクミンは、ウコンの根から抽出されたものですが、強力な抗炎症作用があります。
また、クルクミンは、メンタルヘルス全般にとっても有用なポリフェノールです。
これらのものを適宜用いて、炎症をコントロールして免疫アップしていきましょう。
便検査のGIMAPでは、カルプロテクチンの項目で自分の炎症がわかります。
腸を整える栄養「グルタミン」
今回は、腸そのものを整えるための栄養を考えていきます。
そのために重要な栄養素が、グルタミンになります。
グルタミンが足りないと、腸の機能が低下してしまいます。
その足りない分を、自分の筋肉から取り出して、腸のグルタミンにしようとします。
そうなると、筋肉が消耗してしまうことになります。
副腎疲労の方にとって、筋肉消耗は非常に重大なことであるとご存知かと思います。
グルタミンを外から補ってあげると、外敵から腸を守り、リーキーガットを修復してくれます(PMID: 24965526)。
ゾヌリンを計測することで、リーキーガットになっているか、その程度を知ることができます。
リーキーガットが強い方には、まずグルタミンは考慮したいところです。
ただし、脳への影響や、便秘、癌の方には慎重になる必要があるので、治療者に相談しましょう。
また、腸の細胞は、粘液を作っているのですが、その原料となるものに、「短鎖脂肪酸」があります。
短鎖脂肪酸は、腸内細菌が、食物繊維を発酵して作られます。
腸内細菌叢が整い、食物繊維が適切に加わると、腸の粘液がうまく作られて、腸の防御になるわけです。
ここまでのまとめとして、免疫力アップには、まず腸内環境の改善がとても重要ということになります。
免疫力アップのための生活習慣
今回は、免疫力を上げるための生活習慣について考えていきます。
生活習慣といえば、まずは食生活です。
免疫細胞が働くためには、エネルギーと微量栄養素の2つが同時に必要となります。
免疫力アップに必要な栄養
では、まずどのような栄養が免疫に必要かというと、まずは、タンパク質です。
免疫システムが働くためには、細胞のエネルギーとアミノ酸レベルを高くする必要があります。
ただし、気をつけるべき点は、調子の悪い人ほど、タンパク質の消化と吸収が苦手、というジレンマがよく起こります。
でも、タンパク質が体内で増えてくれば、体調や免疫アップに繋がります。
お肉や魚が食べられない、プロテインを飲むと不調になるという方は、まずアミノ酸など、消化や吸収の必要が少ない形態でとることなどを考慮しましょう。
そして、食物繊維を増やすと、プレバイオティクス効果により、腸内細菌が育って、免疫が活性化します。
これらのことは免疫のみならず、健康に必要なので、今一度考慮してみましょう。
免疫力アップのために必要な微量元素
微量元素が不足していると、免疫は低下してしまいます(PMID: 11509093)。
ビタミンAは、粘膜免疫に重要
トップバッターはビタミンAです。
免疫で大事なのは、バリアー機能です。
人間では、気道や消化管などの粘膜は、バリアーとして働いていて、細菌やウイルス感染からの防御をしています。
ビタミンAは、そんな最前線に立っている粘膜バリアの維持をするのに、とても重要になります。
粘膜免疫で活躍するのが、IgAという抗体なのですが、IgAが外からやってきた異物にくっついて、細胞内に侵入するのを防いでくれます。
これにも、ビタミンAが大事です。
また、侵入してきた細菌やウイルスに対抗するために、白血球が分化して活性化する必要がありますが、ビタミンAは、そんな白血球の制御にも関連しています。
ということで、免疫には、ビタミンAがめちゃくちゃ関係しているというお話でした。
ビタミンAは、うなぎ、モロヘイヤ、かぼちゃなどには豊富に含まれています。
ビタミンCは、免疫細胞の機能を上げる
ビタミンCは、上気道感染症のリスクを低下させます。
ビタミンCは、免疫細胞に取り込まれるので、ビタミンCが足りないと、ダイレクトに免疫機能が低下することなります。
逆に、ビタミンCを飲むことで、免疫細胞の機能を上げることができるわけです。
免疫細胞が弱いものといえば、酸化ストレスです。
ビタミンCがフリーラジカルを消去して、酸化ストレスを弱めてあげることにより、免疫細胞の機能向上が望めるということになります。
今の感染時代においては、ビタミンCは必須と言えます。
また、副腎にはビタミンCは多く含まれていて、副腎疲労改善にはとても大切なビタミンです。
なぜなら、副腎はホルモンを作るときにビタミンCが大量に消費されるからです。
副腎をケアして、免疫を向上させるためには、ビタミンCは取り入れたいですね。
ビタミンDは、免疫応答を調節する
今回は、真打ちビタミンDです。
ビタミンDは、自然免疫と獲得免疫の両方の免疫応答を調節しています。
そのため、ビタミンDが不足すると、感染症になったり、免疫機能が低下してしまったりします。
ビタミンDは、十分な日光浴によって作られますが、なかなかそれだけで足りているヒトはほとんど見かけません。
ビタミンDの濃度は、25OHビタミンDを測定し、最低限30ng/mlを目指したいところです。
ところが、サプリメントを飲んでいないヒトでそのレベルに達していた方を見たことがありません。
それほど、ビタミンDは不足しがちで、且つとても重要なビタミンであると言えます。
食事では、きのこ類、魚類などに多く含まれています。
この感染症時代、終わりが見えないので、まだケアしていない方は、今のうちに25OHビタミンDを測定し、まずは最低限値を目指しましょう。
亜鉛が少なくなると、感染リスクが高まる
今回は、300以上の酵素反応に必要とされる、「亜鉛」についてです。
亜鉛が足りなくなると、病原菌の感染のリスクが上昇します。
亜鉛が不足すると、胸の真ん中にある、胸腺のTリンパ球が細胞死をおこしたり、また胸腺自体が小さくなったり、マクロファージの活性が低下します。
亜鉛は、食事から常に補っていかないと、不足しがちなミネラルでもあります。
オリゴスキャンで亜鉛が重度に欠乏している方もよく見ますし、採血データでも、亜鉛/銅バランスが崩れている方は多いです。
亜鉛が少ないと、イライラしがちになります。
血液検査でALPの値が低いことも参考になります。
特に、炎症性腸疾患や、高齢者など免疫が低下している方にとっては、亜鉛を補給することがとても効果を示すことがあります。
体質によって、亜鉛を常に補給しないとすぐ低下してしまう方もいらっしゃいます。
すぐイライラしたり、最近風邪引きやすくなったなあなんて感じている方は、ゆでガエルになる前に亜鉛/銅バランスの検査をおすすめいたします。
ビタミンEは抗酸化作用をしめす
ビタミンEを補給することで、高齢者で、風邪の発生率が低下しました(PMID: 11110849)。
セレンも抗酸化ミネラルですが、ビタミンEと一緒に働いて、免疫機能を向上させます。
ビタミンEもセレンも、両方とも抗酸化として働くわけですが、この時に考えることは、ミトコンドリア機能です。
ミトコンドリアは、ご存知のように、細胞でエネルギーを作るために必要な機関ですが、感染症などにかかったときには、ミトコンドリア機能を向上させる必要があります。
ミトコンドリアが止まってしまう一つの原因として、酸化ストレスがあります。
抗酸化物質によって、酸化ストレスを減らして、ミトコンドリアを動くようにするということが免疫機能向上につながります。
ミトコンドリアは、エネルギー産生と関係があるので、抗酸化対策=副腎疲労対策にもなります。
つまり、ミトコンドリアの抗酸化対策として、ビタミンEが重要になってきます。
尿中有機酸検査では、ミトコンドリア機能をみることができて、酸化ストレスにやられているか判断することができます。
ミトコンドリア機能をアップさせるミトコンドリアカクテル
免疫を上げるためには、ミトコンドリア機能を向上させる必要があります。
”ミトコンドリア病”というのは、多くは遺伝子異常によって、ミトコンドリアの働きが低下して、全身の不調が起きる、指定難病です。
その治療法の一つに、ミトコンドリアに必要な栄養素を補充する、というものがあり、それを”ミトコンドリアカクテル”と言ったりします。
このカクテルでは、ミトコンドリアを動かすことを重視しています。
免疫を上げるために、ミトコンドリア機能を上げたい場合にも参考になります。
ミトコンドリアカクテルで使われるのが多いのは、CoQ10、B群、C、E、Lカルニチンです。
CoQ10は、抗酸化としても働くし、電子伝達系でも大事です。
カルニチンは、抗酸化に加え、脂肪をエネルギーにするのにも必要です。
これらの栄養素も意識するといいでしょう。
免疫力アップに必要な運動
運動をすると、免疫力は向上します。
ところが、激しい長期トレーニングでは、逆に免疫力を低下させてしまいます。
アスリートで、激しいトレーニングを行うことで、粘膜免疫(IgA)が低下し、その結果、上気道炎の頻度が増すと報告されています(PMID: 24868115)。
激しすぎると、抗酸化物質が枯渇したり、炎症性サイトカインが増加したり、HPA軸のストレスになったりすることが考えられています。
逆に、動きすぎないというのも、免疫が低下してしまいます。
ということで、中等度の身体活動というのが、多くの方にすすめられます。
中等度というのは、大体30分間のウオーキングぐらいをさします。
毎日家から出ないで動かない、という方は、免疫向上、副腎疲労改善のために、中等度の運動を意識してみましょう。
ただし、最近増えているコロナ感染後の場合は、無理することで、動けなくなってしまうことがあるので、感染後2ヶ月は無理をしないようにお願いします。
免疫力アップするためのストレス対策
人間には、ストレスに対抗するためのシステムとして、HPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎)と、交感神経系があります。
交感神経系は、ご存知、逃走と闘争ホルモンです。
急に生じたストレスに対しては、闘争と逃走が必要ですよね。
HPA軸の方では、ストレスによってコルチゾールの産生されて、短期的にタンパク異化や、免疫抑制作用を示します。
ですので、生体は、長期的にその影響が及ばないように、負のフィードバックが働き、長期的にコルチゾールの影響が及ばないように設計されているのです。
ところが、問題は、”慢性的な”ストレスです。
慢性的な、ずーっと続くストレスだと、コルチゾールを抑えるシステムが働かなくなり、さらに、DHEAという、コルチゾールの負の影響を抑えるホルモンも低下し、老化や免疫力が低下してしまうのです。
副腎疲労を改善し、免疫力向上させるためには、自分にかかっている慢性的なストレスが何であるのかを特定することが、とても大事です。
自分にかかっているストレスが何なのか自分でもわからないという場合は、キネシオロジーを利用されるといいと思います。
概日リズムが免疫力アップに関係する
概日リズムは、免疫力の強力な調節因子であるので、適切な睡眠時間をとることが、免疫機能を上げるために重要になります。
細胞の周期が約24時間に保たれているのは、視床下部の視交叉上核にある「時計」が、光を浴びることによって調節されて、各細胞に信号を送るからです。
ということは、免疫を上げるためにはどうすればいいかというと、「午後9時から午前8時までの間に7〜8時間の睡眠時間をとること」が、最も強力な免疫力向上の治療法になるというわけです。
急性でも慢性でも睡眠時間不足になると、免疫障害、そして炎症性メディエータの増加につながってしまいます。
炎症が生じれば、様々な疾患につながるのは自明です。
特に、免疫関連の病気の場合には、最低7時間の連続睡眠が必要になります。
交代勤務が、がんや自己免疫(例えば多発性硬化症)のリスク増加に関連しているのは、うなずけます。
ということで、やっぱり早く寝ましょう。
眠りと免疫に必要なメラトニン
私達の眠りに重要なメラトニンのお話です。
眠りにつくのが難しい場合、メラトニンサプリを試していらっしゃる方もいるかも知れません。
そんなメラトニンですが、免疫力を調整することが言われています。
メラトニン受容体は、免疫系の多くの細胞に表出されていているので、免疫に関与しているのですが、ちょっと複雑です。
基礎研究によると、メラトニンは、免疫が抑制されている状態においては、免疫を刺激し、ウイルスや寄生虫から身を守るように働きますが、逆に、敗血症などの免疫が活性化している場合、免疫を抑制して抗炎症として働いて、保護的にも働きます(PMID: 22264213)。
Carrilloらによると、このような働きを免疫緩衝作用というようです。
そういった、時と場合によって働きが変わるので、全ての人にすすめられるか微妙ですが、睡眠障害がある方で、免疫が低下している方などには、いい適応です。
環境を調節することが免疫に重要
環境因子も免疫に関連するので、とても大事です。
免疫に関わる環境因子は色々ありますが、まずは、日光から。
日光にあたるといい影響があるのは、今までもお話してきたとおり、1つは、ビタミンDの生成に関わること、
2つ目は、概日リズムを再同期してくれることがあります。
ただ、紫外線の影響で免疫を逆に抑制してしまう影響もありますので、十分な抗酸化物質下で浴びましょう。
次に、EMFとは、「電磁場」で、我々は多かれ少なかれ暴露を受けています。
電磁波過敏症の方では、暴露されることで、疲労、頭痛、集中力低下などが起きます(PMID: 20336048)。
また、腫瘍や免疫力低下、アレルギーなどとも関連すると言われており、強力な電化製品からは距離を置くなどの対応が必要でしょう。
そして、我が地球に接地することも有効です。
グラウンディングされたベッドに寝ることで、血中コルチゾールが改善し、睡眠や痛みが多くの被験者で改善した研究があるくらいです。
健康のために、裸足で大地に接地することも大事です。
口の中の衛生と免疫の関連
口の中が汚い、虫歯だらけだと、糖尿病、脳卒中などの要因になってしまいます。
口の中の細菌が、慢性的に炎症性刺激となって、免疫を低下させてしまうからです。
当院を受診される方のほとんどに、口腔内の虫歯や、アマルガムの有無をチェックしていただいています。
アマルガムや、歯の根っこの炎症は、副腎疲労の原因となることが多く、そのようなことがあれば歯科での治療をお願いしています。
歯をしっかりと治すことが、免疫力アップにつながります。
人生の目標があると免疫力がアップする
ヒトは社会的な生き物です。
ヒトは、ビタミンやミネラルだけで出来ているわけではなく、社会性のある生き物なので、愛、友情、喜びなどが、健康に与える関係も大きいわけです。
そして、人生の目的を持っているヒトは、幸福感、成長、良い睡眠、薬の効き目などとも関連しています。
例えば、アルツハイマー病の方で、高い人生の目的を持っている方は、病気があるにもかかわらず、認知機能が高く、脳の病理学的変化の影響が低下することが報告されています(PMID: 22566582)。
また、何かのグループに属しているという帰属意識が高い人の方が、不安が少なく、自尊心も高く、平均寿命に7才差が生まれるそうです。
サプリメントを使わずしても、目的があるというだけで健康になれるっていいですね。
あなたの人生の目的を今ひとつ考えてみましょう。
慢性炎症を解消することが大事
免疫を上げる=副腎疲労を回復させる、と考えていただいてもいいと思います。
急性の炎症は傷などを修復させるために必要ですが、慢性炎症があると、免疫系を崩してしまいます。
日常生活で起こりうる、慢性炎症についてお話したいと思います。
👉まずは、食事。
油のオメガ6には、炎症を誘発する作用があります。
欧米の食事に多く含まれるリノール酸が代謝されて、アラキドン酸に変わり、炎症を起こします。
とうもろこし、ひまわり、紅花油、マーガリンなどに含まれています。
これに対して、抗炎症効果のある、オメガ3は、オメガ6に比べてとても摂取量が少ないのが現状です。
👉高GI食品(血糖値を上げる)も炎症に関与する可能性があります。
👉肥満は、炎症性サイトカイン(TNFα)を増加させます。
👉座りっぱなしの生活は、肥満や炎症を増やす方向に働きます。
今一度、免疫を下げてしまう生活=副腎疲労にさせてしまう生活習慣を見直してみましょう。
炎症を改善させる栄養素
今回は、栄養素を用いて炎症を抑えることを検討していきましょう。
👉オメガ3
オメガ3は、炎症を軽減すると言われています。
関節リウマチに対して、魚油のオメガ3により、圧痛やこわばりの改善が示唆されました(PMID: 7490601)。
潰瘍性大腸炎やクローン病、アトピーでも研究されています。
👉クルクミン
クルクミンはウコンに含まれるポリフェノールで、強力な抗炎症性を示します。
動物実験によると、潰瘍の予防、抗炎症、AGESの減少、抗ウイルス活性があります。
👉ケルセチン
アラキドン酸からエイコサノイドへの変換における段階を妨げることによって、炎症性サイトカインを減らします。
上記のような栄養素を活用しながら、炎症のある方は抗炎症を目指しましょう。
まとめ
免疫力が低下するものに囲まれている今の時代、自分の免疫力をアップさせることが重要です。
特に、感染症が蔓延しているため、生き延びるためには、必須のことかもしれません。
そのためには、免疫力を低下させてしまう習慣をやめて、アップさせるような食生活や栄養素を取り入れることが大事です。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
無料レポート新リリースしましたのでお受け取りください!
1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。