表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
毎日、寝ても疲れがとれないなどの疲労感がある場合、ベースに副腎疲労があるのかもしれません。
副腎疲労を改善させるためには、血糖値を改善させたり、腸内環境を改善するということが有効です。
その他に、体の酸塩基平衡(酸性物質とアルカリ性物質のバランス)というものも重要です。
特に、酸性物質が増加して、血液が酸性に傾く(=アシドーシス)と、体が疲れます。
副腎疲労があると、酸塩基平衡のバランスが狂い、アシドーシスに傾きますし、酸塩基平衡のバランスが狂うことで副腎疲労を招くこともあります。
今回は、副腎疲労と酸塩基平衡のバランスの乱れについてお話したいと思います。
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Contents
炎症とアシドーシス
体に炎症があると、副腎に負担をかけてしまい、副腎疲労が治りにくくなってしまいます。
副腎疲労と炎症の関係につきましては、以下をご覧ください。
その炎症を起こす原因の1つに、アシドーシス(酸性に傾いた状態)があります。
アシドーシスをコントロールすることが、副腎疲労緩和の1つとなります(Aderenal Fatigue For Dummiesより)。
人間の体液は、酸と塩基のバランスで成り立っていて、pHが7.4前後に保たれています。
pH7.4近辺に保たれていると、細胞や酵素が機能を発揮してくれます。
pHが酸性に傾く(pHが低くなる=アシドーシス)と、症状としては、慢性炎症、痛み、がん、心臓病、骨粗鬆症、腎臓病、老化、そして副腎疲労などを引き起こします。
体のpHは主に、肝臓、腎臓、副腎、骨などによってコントロールされているので、酸性になると副腎に負担がかかり、疲労してしまうのです。
アシドーシスへの防御反応
とにかく、体は酸性の集中砲火下にあります。
酸性に傾くことに対しての体の防御対策にはどのようなものがあるでしょうか。
体は酸性に対して、酸塩基平衡を正常に保つことに非常に苦労しています。
まず、骨はアルカリ化のためにカルシウムやマグネシウムを析出させますが、そのために骨が脆くなり骨粗鬆症に繋がります。
肝臓は、乳酸という強い酸を代謝してくれます。
腎臓は、体内の酸を尿へ除去してくれます。
副腎は、アシドーシスに反応して、アルドステロンを分泌して、腎臓から酸を除去するのを助けます。
このように、アシドーシスになることによって、骨は薄くなり、肝臓、腎臓に負担をかけて、副腎にも負担をかけるために、副腎疲労へとつながってしまうのです。
そして、酸性環境は、炎症を引き起こすことでさらに副腎に負担をかけてしまうのです。
アシドーシスになる原因
アシドーシスになる原因はいろいろあります。
まずは、ウエスタン食(西洋食)です。
ファーストフードに代表される食事ですが、動物タンパク質やオメガ6、精製された砂糖、加工食品、添加物、防腐剤などが入っています。
それらは、細胞にストレスを与え、炎症を引き起こします。
そして、添加物などに利用されているリン酸も酸性化するので、注意が必要です。
リン酸は加工肉やソーダなどの炭酸飲料に含まれることがあります。
多量にとることにより、体への酸の負荷となることがあります。
まずは、そのような食事が多くなっていないかどうか、注意しましょう。
アシドーシスの発見方法
では、アシドーシスはどのように見つけたらいいのでしょうか。
それは、尿pHです。
腎臓は、血液の酸塩基状態に応じて、尿に酸を排泄して、血液の酸塩基状態を保っています。
ということは、尿のpHをみることによって、血液の酸塩基具合を推定することができます。
尿のpHは、リトマス試験紙を使って自分で簡単に測定することができます。
pHがあまりに酸性に傾いていたら(<pH 6.5)、副腎にも負担をかけている状態とも考えられます。
病院で採尿したときのpHでもよいですが、測定までに時間がかかると酸性に傾く傾向があるので、実際のpHよりも低く出ている可能性があります。
そういう意味で、自分でリトマス試験紙を使って調べたほうがリアルタイムで調べられるという利点があります。
尿のpH試験紙を手に入れて(Amazonなどに売っています)、朝一番の尿で測ってみましょう。
(当院では、医療用のものを販売しております。)
食事がアシドーシス与える影響
では、酸性に傾いているとわかった時に、どのようにするかを考えていきたいと思います。
食品の中に入っている酸がどのくらい腎臓に負担をかけるかの指標に、PRAL(潜在的腎臓酸負荷)があり、値が高いほど、食事の酸性度が高いです。
文献(PMID: 32268544)によると(下図参照)、肉・魚・乳製品は有機酸を増やして酸性に傾けます(赤字)。
一方、野菜や果物は、クエン酸塩やリンゴ酸塩が重炭酸塩に変化して、アルカリ化効果があります(青字)。
さらに、日本の研究では、食事の酸負荷が高いと、総死亡率や虚血性心疾患による死亡と関連していました(PMID: 28539378)
尿pHが低い時、野菜や果物でアルカリ化を考えるのも1つかもしれません。
アシドーシスへの対処法:重曹
体が酸性に傾く対策として、重曹があります。
重曹って、掃除の時に使ったりしますよね。
2021年には、国際スポーツ栄養学会が、多くの運動パフォーマンスを、重曹をとることによって向上させると報告しています(PMID: 34503527)。
運動すると、筋肉に乳酸やH+が蓄積して、酸性化して、パフォーマンスの低下や疲労の原因となります。
重曹を摂取することにより、筋肉のH+を流出させて、持久力を高めるのです。
ということは、一定の量までだったら、安全に使用できるということです。
酸性化(アシドーシス)が副腎疲労を悪化させるわけですから、重曹を用いてアシドーシスを解除することで、疲労感を解除することも可能になります。
ただ、アシドーシスになっていない方が使うと、もっとアルカリ化してしまうので、注意が必要です。
尿pHでアシドーシスが認められた方は試してみるものありかと思います。
アシドーシスへの対処:クエン酸
体が酸性に傾くときの対処として、クエン酸があります。
クエン酸の抗疲労効果について報告された、秋谷さんの報告(1955年!)では、第二次世界大戦中の潜水艦内で、味噌の防腐剤としてクエン酸を加えたところ、乗組員の健康状態が著しく向上した、という事実から、人体実験を行い、クエン酸を健康人に摂取すると、尿のpHは上昇すると報告されました。
疲労の原因である、乳酸の生成を減少させて、体をアルカリ化に維持したとのことです。
また、尿中有機酸検査を行った方はご存知かと思いますが、ミトコンドリアのTCA回路では、エネルギー生成を関与しています。
そのTCA回路の中で、クエン酸はTCA回路の最初の反応物であり、外部から加えることにより、TCAの回転量が増加し、抗疲労効果をしめすとも考えられます。
ですので、クエン酸は体が酸性化になっている状態では、副腎疲労を改善させると考えられます。
まずは、尿pHの測定をして、自分が酸性に傾いていないかチェックしてみましょう。
アシドーシスと低血糖
副腎疲労の場合、低血糖になりやすいことはご存知かと思います。
以下の記事もご参考にしてください。
尿検査で「ケトン体」という項目がありますが、病気の場合では、糖尿病などで陽性になります。
糖尿病でない場合は、糖質制限をした場合、ケトン体が出ます。
低血糖でも同じような機序になります。
低血糖では、エネルギーを作るために必要な血糖が足りなくなるため、脂質を分解することにより、ケトン体が出るようになります。
ケトン体は酸性ですので、アシドーシスに傾きます。
副腎疲労では、夜間が低血糖になっていることが多いので、寝ている間に血液が酸性に傾きます。
結果的に、朝起きたときに、アシドーシスになっていることにより、疲労感、頭痛などの症状が起きやすくなります。
そんな時には、尿pH測定をしてみましょう。
pHが低い場合、朝にまず重曹かクエン酸がいいかもしれません。
重曹とクエン酸を混ぜた場合、アルカリ化作用が減弱してしまうので、時間をおいて別々に摂取するといいでしょう。
まとめ
副腎疲労を悪化させる因子として、血液の酸性化(アシドーシス)があります。
アシドーシスになるような食事を避け、アルカリ化になるような食事を選択することが望ましいです。
自分がアシドーシスになっていないか、尿pHを調べてみましょう。
pHが低下している場合、重曹やクエン酸が有効かもしれません。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。