分子栄養学

SIBO治療で治らないお腹の張り…もしかしてSIFO?小腸の真菌(カビ)が原因の膨満感を専門医が徹底解説

表参道・原宿の東京原宿クリニック、院長の篠原です。

篠原岳

【この記事でわかること】

  • 色々試しても改善しない、つらい膨満感やガス腹の新たな可能性として「SIFO(小腸内真菌過増殖症)」の全体像がわかります。
  • よく聞く「SIBO(小腸内細菌過増殖症)」とSIFOの違い、そして両者の関係性がはっきりと整理できます。
  • すぐに取り組める生活でのヒントから、専門医への相談を決める具体的な目安まで、次の一歩が明確になります。

「食事に気をつけているのに、いつもお腹が張って苦しい…」

「ガスが溜まって、仕事や外出に集中できない」

「SIBO(シーボ)の治療をしたけれど、症状がすっきりしない」

このようなお悩みを抱え、長い間つらい思いをされていませんか?

その繰り返す不調、もしかしたら小腸の中で「細菌」ではなく「真菌(しんきん)」、つまりカビの一種が異常に増えていることが原因かもしれません。

この状態はSIFO(シーフォ:Small Intestinal Fungal Overgrowth)、日本語では「小腸内真菌過増殖症」と呼ばれます。

まだ一般にはあまり知られていませんが、原因不明の消化器症状に悩む方の中に、このSIFOが隠れているケースが少なくないことが近年の研究で示唆されています(2, 4)。特に、SIBOの治療を受けても改善が見られない場合、SIFOの可能性を考えることが重要になります。

この記事では、SIFOとは一体何なのか、なぜ起こるのか、そして私たちはどう向き合えばよいのかを、最新の研究知見を交えながら、できるだけやさしく解説していきます。長年の不調の根本原因を探る、新たな一助となれば幸いです。

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SIFOとは?お腹の張りの隠れた原因「小腸のカビ」

まず、「SIFO(シーフォ)」という言葉自体、初めて耳にする方がほとんどかと思います。SIFOとは、本来は少量しか存在しないはずの真菌(カビの仲間)が、小腸の中で異常に増えすぎてしまい、それによって様々な消化器症状が引き起こされる状態を指します(1, 3)。

私たちの腸は、食べ物を消化し、栄養を吸収するための、いわば巨大で精巧な“ベルトコンベア”のようなものです。このベルトコンベアの上では、何百兆もの腸内細菌たちが働く“作業員”として、私たちの健康を支えてくれています。

しかし、何らかの理由でこのベルトコンベアの環境が悪化すると、普段はおとなしいはずの「真菌」が勢力を拡大し、過剰に増殖してしまうことがあるのです。SIFOの主な原因真菌として知られているのが、カンジダ(Candida)属です(1)。カンジダは、健康な人の口の中や皮膚、腸にも少数ながら存在する常在菌ですが、バランスが崩れると問題を引き起こす「日和見(ひよりみ)菌」の代表格です。

動画で解説

動画で概要を掴みたい方は以下より御覧ください。

SIFOとSIBO、何が違うの?

SIFOを理解する上で欠かせないのが、最近少しずつ認知度が上がってきた「SIBO(シーボ:Small Intestinal Bacterial Overgrowth)」との違いです。

両者の違いは、その名の通り、小腸で増えすぎている微生物の種類にあります。

SIFOとSIBOの違い
  • SIFO(小腸内“真菌”過増殖症):原因は真菌(カビ)です。
  • SIBO(小腸内“細菌”過増殖症):原因は細菌(バクテリア)です。

ベルトコンベアの例えで言うなら、SIBOは“作業員(細菌)”が必要以上に増えすぎて渋滞を起こしている状態。一方、SIFOは作業員ではない“招かれざる客(真菌)”が居座って、ベルトコンベアの邪魔をしている状態とイメージすると分かりやすいかもしれません。

問題なのは、SIFOとSIBOの症状が非常によく似ていることです(2)。どちらも小腸内での異常な発酵によってガスが発生し、膨満感や腹痛、下痢、便秘といった、いわゆる過敏性腸症候群(IBS)のような症状を引き起こします。

そのため、症状だけで両者を正確に見分けることは極めて困難です。この「症状のそっくりさ」が、SIFOの発見を遅らせ、SIBO治療がうまくいかない背景の一因となっているのです。

より詳しいSIBOの全体像については「SIBO(小腸内細菌増殖症)の症状・検査・治療法を解説」の記事で網羅的に解説していますので、併せてご覧ください。

SIFOとSIBOは同時に起こることも

さらに複雑なことに、SIFOとSIBOはどちらか一方だけでなく、両方が同時に存在(併存)するケースも珍しくありません(2)。

ある研究では、原因不明の消化器症状を持つ患者さん150名を調べたところ、SIBOだけだった人が40%、SIFOだけだった人が26%だったのに対し、SIBOとSIFOを両方持っていた人は34%にも上りました(2)。つまり、SIBOと診断された方のうち、およそ3人に1人は真菌の問題も同時に抱えている可能性があるということです。

SIBOとSIFOの合併

この事実は、SIBOの治療をしているのに症状が改善しきらない、あるいは一旦良くなってもすぐに再発してしまう、といった場合に、なぜSIFOを疑う必要があるのかを明確に示しています。

【この章の要点まとめ】

  • SIFO(シーフォ)とは、小腸で真菌(主にカンジダというカビの一種)が異常に増殖した状態です。
  • 膨満感や腹痛、下痢など、SIBO(小腸内細菌過増殖症)と非常によく似た症状を引き起こします。
  • SIBOとは原因微生物(真菌か細菌か)が異なり、両方が同時に存在(併存)することも少なくありません。

SIFOが引き起こす症状と日常生活への影響

SIFOの症状は、SIBOや過敏性腸症候群(IBS)と区別がつきにくい、非特異的な(=その病気に特有ではない)消化器症状が中心です(1)。

【主な消化器症状】

  • 腹部膨満感(お腹の張り、ガス感)
  • 腹痛、腹部の不快感
  • げっぷ、鼓腸(おなら)
  • 下痢、あるいは便秘
  • 吐き気

これらの症状は、真菌が小腸内で糖質などをエサにして異常発酵を起こし、ガスを産生することが一因と考えられています。

なぜ女性の膨満感は複雑なのか

特に30代から50代の女性は、仕事、家事、育児などで多忙な日々を送り、ストレスや生活リズムの乱れに直面しやすい年代です。こうした背景に加え、女性ホルモンの周期的な変動が腸の動きや知覚過敏に影響を与える可能性も指摘されており、膨満感をより複雑なものにしている場合があります。

多忙な女性
  • ストレスと自律神経の乱れ:強いストレスは、腸の正常な動きをコントロールしている自律神経のバランスを乱し、腸の動きを鈍くさせることがあります。
  • ホルモンバランスの変化:月経周期に伴うホルモンの変動、特に黄体ホルモン(プロゲステロン)は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を緩やかにする作用があり、便秘や張りを悪化させることがあります。
  • 食生活の乱れ:多忙な生活の中で、食事時間が不規則になったり、手軽に摂れるパンやお菓子、甘い飲み物など、精製された炭水化物に偏りがちになることも、腸内環境にとってはマイナスに働くことがあります。

これらの女性特有の背景が、SIFOが起こりやすい土壌と重なることで、症状がより強く、そして長引きやすくなる可能性が考えられます。大切なのは、「体質だから」「いつものことだから」と諦めずに、その背景に何が隠れているのかを丁寧に探っていくことです。

【この章の要点まとめ】

  • SIFOの主な症状は、膨満感、腹痛、下痢、ガスなど、SIBOやIBSとよく似ています。
  • 症状だけではSIFOと断定することは困難です。
  • 女性はストレスやホルモンバランスの影響で腸の不調を感じやすく、SIFOの症状と重なることがあります。

なぜSIFOになるの?考えられる5つのリスク因子

では、なぜ小腸の中で真菌が増えすぎてしまうのでしょうか。SIFOは、単一の原因で起こるというより、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。私たちの体の「防御機構の低下」と「真菌が増えやすい環境」がキーワードです(3)。

SIFOの5つのリスク

1. 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)の長期使用

胃酸は、食べ物を消化するだけでなく、口から入ってきた細菌や真菌を殺菌する強力なバリアの役割を果たしています。逆流性食道炎などの治療で長期間にわたり胃酸を強力に抑える薬(PPI)を使用していると、このバリア機能が低下します。その結果、真菌が胃を通過して小腸に到達しやすくなり、増殖の機会を得てしまうのです(R2)。実際にSIFO患者さんではPPIの使用率が高いという報告もあります。

2. 小腸の動き(蠕動運動)の低下

小腸は、常に動いて内容物を先へ先へと送り出す「蠕動(ぜんどう)運動」を行っています。この動きは、腸内を掃除し、微生物が特定の場所に定着しすぎるのを防ぐ重要な役割を担っています。

しかし、糖尿病による神経障害、過去の腹部手術による癒着、一部の自己免疫疾患(全身性強皮症など)といった病気や、強いストレスなどによって小腸の動きが悪くなると、食べ物や腸液が滞留しやすくなります。この“よどみ”が、真菌にとって格好の繁殖場所となってしまうのです(2)。

3. 抗生物質の頻繁な使用

風邪や他の感染症の治療で広域スペクトラム抗生物質(様々な種類の細菌に効く抗生剤)を繰り返し使用すると、腸内の細菌叢(腸内フローラ)のバランスが大きく乱れます。特に、私たちの健康を守ってくれている“善玉菌”がダメージを受けると、その隙をついて競合相手のいなくなった真菌(特にカンジダ)が異常に増殖しやすくなります(3, 5)。

4. 免疫力の低下

私たちの免疫システムは、体内に侵入した、あるいは体内で増えすぎた病原体を監視し、排除する役割を担っています。ステロイド薬や免疫抑制剤の使用、糖尿病、がん治療などで免疫力が低下している状態では、この監視システムが十分に働かず、カンジダのような日和見真菌の増殖を許してしまうことがあります(R3)。

5. 食生活の偏り

カンジダなどの真菌は、糖質を主なエネルギー源としています(R3)。そのため、砂糖を多く含む甘いお菓子やジュース、精製された小麦粉で作られたパンやパスタなど、血糖値を急激に上げやすい食品を過剰に摂取する食生活は、小腸内で真菌の増殖を助長する可能性があると指摘されています。

これらのリスク因子に心当たりがあるからといって、必ずしもSIFOであると決まったわけではありません。しかし、長引く不調の原因を探る上で、ご自身の生活習慣や病歴を振り返ることは非常に重要な手がかりとなります。

【この章の要点まとめ】

  • SIFOは、体の防御機能の低下と、真菌が増えやすい腸内環境が重なることで発症しやすくなります。
  • 主なリスク因子として、胃酸を抑える薬の長期使用、小腸の運動低下、抗生物質の乱用、免疫力の低下、糖質過多の食生活が挙げられます。
  • これらの要因は、腸内細菌と真菌の正常なバランスを崩すきっかけとなり得ます。

SIFO診断の現実と検査の限界を知る

「自分がSIFOかどうか、はっきり知りたい」…そう思われるのは当然のことです。しかし、残念ながら現時点では、誰もが手軽に受けられて、かつ確実にSIFOを診断できる、確立された検査法は存在しないのが実情です。

最も確実とされる検査(ゴールドスタンダード)とその課題

SIFO診断の「ゴールドスタンダード(最も信頼性が高いとされる基準)」は、内視鏡を使って小腸(十二指腸や空腸)から直接、腸液を吸引・採取し、それを培養して真菌の量(コロニー数)を調べる方法です(1)。具体的には、腸液1mLあたり1,000個(10^3 CFU/mL)以上の真菌が検出されるとSIFOと判断されることがあります(3)。

しかし、この検査にはいくつかの大きな課題があります。

  • 侵襲的である:内視鏡を体内に入れる必要があり、体に負担がかかります。
  • 実施できる施設が限られる:高度な技術と設備が必要なため、ごく一部の専門的な医療機関でしか行えません。
  • 汚染(コンタミネーション)のリスク:内視鏡が口や喉を通る際に、そこに常在しているカンジダが付着し、実際には小腸にいないのに陽性(偽陽性)と出てしまう可能性があります(3)。
  • 基準値が確立されていない:どこからが「異常な増殖」で、どこまでが「正常範囲」なのか、その境界線はまだ明確には定まっていません。

こうした理由から、小腸液の培養検査は研究目的で行われることが主で、一般的な臨床現場で広く行われている検査ではありません。

その他の検査でSIFOはどこまでわかる?

では、より負担の少ない他の検査ではどうでしょうか。SIBOや腸内環境の評価で使われるいくつかの検査と、SIFO診断におけるそれらの位置づけをご説明します。

呼気検査(水素・メタンガス測定)

SIBOの診断でよく用いられる呼気検査は、糖分(ラクツロースやグルコース)を飲んだ後に、呼気(吐く息)に含まれる水素やメタンの濃度を測定するものです。これらのガスは「細菌」が糖を分解する際に発生します。しかし、「真菌」はこれらのガスを産生しないため、呼気検査でSIFOを直接診断することはできません(3)。SIFO単独の患者さんでは、呼気検査の結果は陰性となる可能性があります。SIBOの有無を調べるのには役立ちますが、SIFOの存在を証明も否定もできないのです。

便検査(GIMAPなど)

便を採取して、腸内全体の微生物(細菌、真菌、寄生虫など)を調べる検査です。問題は、その真菌が大腸にいるものなのか、問題となっている小腸で増えているものなのかを区別できないことです(3)。そのため、便検査の結果だけで「あなたはSIFOです」と診断することはできません。とても有用な検査ですが、あくまで腸内環境全体の傾向を把握するための一つの参考情報と捉えるのが適切です。GIMAPについてはこちらをご参照下さい

尿中有機酸検査

尿中の代謝産物を測定する検査で、カンジダが増殖した際に産生されるアラビノースなどの特定の有機酸を検出します(3)。その増殖が小腸で起きていることを特定するものではないですが、体内でカンジダが過剰に増えている可能性を示唆する間接的な指標にはなり得ます。尿中有機酸検査についてはこちらをご参照下さい。

このように、どの検査にも一長一短があり、SIFOの診断は非常に難しいのが現状です。そのため、当院では便検査や尿中有機酸検査の結果を見ながら、詳細な問診による症状の経過、リスク因子の有無、そしてSIBO治療への反応性などを総合的に評価し、SIFOの可能性を探っていくというアプローチをとっています。

【この章の要点まとめ】

  • SIFOを確実に診断できる手軽な検査は、現時点では存在しません。
  • 最も確実とされる小腸液の培養検査は、侵襲的で実施施設が限られるなど課題が多く、一般的ではありません。
  • 呼気検査はSIFOを検出できず、診断の決め手にはなりません。
  • 診断は、症状、リスク、各種検査の結果を総合的に評価して、臨床的に判断されるのが現実です。

もし、長年の体調不良に悩まれていて、検査や治療をされたいという方は当院栄養外来をご検討ください。

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SIBOが改善しない時の分岐図:あなたの不調はどのタイプ?

SIBOの治療を受けても膨満感が一向に良くならない、あるいは再発を繰り返す…。そんな時、頭の中を整理するために、以下のような思考のステップが役立ちます。これは、専門医が臨床でどのように考えていくかを文章で再現したものです。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

SIBOが良くならないときにSIFOを疑う

【SIBO非改善時の思考フロー】

Step 1:出発点
□ 長引く膨満感、ガス、腹痛、下痢などの消化器症状がある。

Step 2:SIBOの評価と治療
□ SIBOを疑い、呼気検査などを受けた。
□ 検査結果が陽性だったので、抗菌薬(リファキシミンなど)やハーブによるSIBOの治療を一定期間行った。

  • (A)に進む → 治療後、症状が著しく改善し、快適な状態が続いている。
  • (B)に進む → 治療後、症状が全く改善しなかった、あるいは一時的に良くなったがすぐに元に戻ってしまった。↓

Step 3:治療反応性に基づく次の可能性の検討
(A) 症状が改善した場合
あなたの不調の主な原因は「SIBO単独」であった可能性が高いと考えられます。今後は、SIBOが再発しないように、食事や生活習慣を見直し、小腸の動きをサポートしていくことが重要になります。再発予防については「SIBO(小腸内細菌増殖症)の症状・検査・治療法を解説」でも詳しく触れています。
(B) 症状が改善しない、または再発した場合

ここで、いくつかの可能性を考える必要があります。

  • 可能性①:見逃されている「SIFO」の存在SIBOに対する抗菌薬は、真菌には効果がありません(5)。むしろ、抗菌薬によって細菌が減ったことで、かえって真菌が増殖しやすい環境を作ってしまった可能性も考えられます。この場合、SIFOが不調の主因であるか、あるいはSIBOと併存している可能性を疑います(2, 3)。
  • 可能性②:SIBOの治療が不十分使用した抗菌薬の種類や期間が適切でなかった、あるいはメタンガス産生型SIBO(IMO)など、より難治性のタイプであった可能性も考えられます。
  • 可能性③:SIBO/SIFO以外の原因小腸の運動機能障害そのものが非常に強い、あるいは他の消化器疾患(炎症性腸疾患、セリアック病など)や、食物不耐症(乳糖不耐症など)、食事内容そのものが合っていないなど、別の原因が隠れている可能性も考慮します。

Step 4:次のアクション

(B)のルートに進んだ場合、自己判断で同じ治療を繰り返したり、闇雲にサプリメントを試したりするのは得策ではありません。安易に抗菌薬を追加すると、さらに腸内環境を乱してしまうリスクもあります(5)。

この段階では、SIFOの可能性を視野に入れられる専門医に相談することが推奨されます(3)。専門医は、これまでの治療歴や症状の経過を詳しく聞いた上で、SIFOを念頭に置いた追加の評価や、治療方針の切り替え(例:抗真菌薬の試用など)を検討します。

この分岐図はあくまで考え方の整理を助けるものであり、自己診断のためのものではありません。しかし、ご自身の状況を客観的に把握し、医師に的確に伝える上で、きっと役立つはずです。

【この章の要点まとめ】

  • SIBO治療で症状が改善しない場合、その背景にSIFOが隠れている可能性があります。
  • SIBOとSIFOは併存することも多く、抗菌薬治療だけでは不十分なケースがあります。
  • 抗菌薬が効かない、または再発を繰り返す場合は、SIFOの可能性を念頭に置いた専門的な評価が必要です。
  • 自己判断で治療を続けるのではなく、専門医に相談し、方針を再検討することが重要です。

SIFOと向き合うための生活の土台づくり

SIFOの確定診断や治療が難しいからといって、打つ手がないわけではありません。薬物療法を検討する前に、あるいはそれと並行して、腸内環境を整え、真菌が過剰に増殖しにくい体内の「土台」を作るための生活習慣の見直しは、非常に重要です。

ただし、ここでご紹介する方法は、SIFOを直接的に「治す」と証明されたものではなく、あくまで腸内環境をサポートし、症状を緩和させる可能性があるものとして、エビデンスレベルに留意しながらお読みください(3)。

食事で見直したいこと

食事は腸内環境に最も直接的な影響を与えます。SIFOの文脈でよく議論される食事法がいくつかありますが、いずれも専門的な研究はまだ十分ではありません。

糖質の「量」と「質」を見直す

前述の通り、カンジダなどの真菌は糖質をエサにします。そのため、砂糖や果糖ぶどう糖液糖が多く含まれる菓子類、ジュース、そして白いパンや白米、麺類といった精製された炭水化物の摂取量を意識的に減らすことが、症状緩和の第一歩となる可能性があります(3)。いきなりゼロにするのは難しく、ストレスにもなるため、「おやつの内容を見直す」「飲み物は無糖のお茶や水にする」といった小さなステップから始めるのがお勧めです。

低FODMAP食事法との関係

SIBOの症状緩和で実績のある「低FODMAP食事法」は、小腸で発酵しやすい特定の糖質群(FODMAP)を一時的に制限する方法です。これは細菌によるガスの発生を抑えるのが主目的ですが、結果的に糖質の摂取量が減るため、SIFOによる膨満感が軽減される可能性はあります(3)。ただし、長期的に厳格に行うと栄養の偏りや腸内細菌の多様性を損なうリスクもあるため、専門家の指導のもとで試すことが望ましいです.

「抗カンジダ食」についての注意点

インターネット上では「カンジダクレンズ」や「抗カンジダ食」といった、糖質を極端に制限するといった食事法が見られます。一部で症状改善の体験談もありますが、SIFO患者における有効性を科学的に証明した質の高い研究は、現時点ではほとんどありません(3)。過度な食事制限は、かえって心身のストレスとなったり、必要な栄養素が不足したりする原因にもなりかねません。まずはバランスの取れた食事を基本に、明らかな不調を感じる食品があれば記録し、避けてみる、というアプローチが現実的です。

プロバイオティクス(善玉菌)の可能性と注意点

プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など、体に良い影響を与える生きた微生物)は、腸内フローラのバランスを整える補助的な選択肢として検討されます。

研究レベルでは、特定の乳酸菌(ラクトバチルス属)がカンジダの増殖を抑えることや、サッカロマイセス・ブラウディという酵母の一種がカンジダの定着を防ぐ可能性が示唆されています(3)。

生活の土台作り

しかし、SIFO患者を対象とした大規模な臨床試験はまだなく、どの菌株が誰にでも有効かは分かっていません。むしろ、人によってはプロバイオティクスを摂取することで、かえって膨満感が悪化する場合もあります(3)。もし試すのであれば、少量から始め、ご自身の体調の変化を注意深く観察することが大切です。「合わない」と感じたら、無理に続ける必要はありません。

軽視できない生活習慣の力

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経やホルモン、免疫系と密接に連携しています。そのため、日々の生活習慣が腸の健康に与える影響は計り知れません。

  • 睡眠の質の確保:睡眠不足は自律神経の乱れに直結し、腸の蠕動運動を低下させる原因になります。毎日決まった時間に就寝・起床し、質の良い睡眠を確保することは、腸を休ませ、正常な働きを取り戻すために不可欠です。
  • ストレスマネジメント:過度なストレスもまた、自律神経を介して腸の機能を低下させます(3)。深呼吸や瞑想、ヨガ、軽い運動、趣味の時間など、ご自身に合った方法で心身をリラックスさせる時間を持つことが、巡り巡って腸の健康につながります。
  • 口腔ケアの重要性:口の中も腸内と同じく、多種多様な微生物の世界です。口腔内のカンジダが唾液と共に飲み込まれ、腸に影響を与える可能性も指摘されています。毎日の丁寧な歯磨きや舌の清掃など、口腔衛生を良好に保つことも、体全体の微生物バランスを整える上で大切です。

これらの生活習慣の改善は、SIFOを直接治すものではないかもしれませんが、腸が本来持つ力を取り戻し、真菌が異常増殖しにくい体内環境を育むための、最も基本的で重要な「土台」となります。

【この章の要点まとめ】

  • SIFOへのアプローチは、真菌が増えにくい腸内環境の「土台」づくりが基本です。
  • 食事では、精製された糖質の量と質を見直すことが第一歩です。特定の食事法は、有効性のエビデンスが乏しいため慎重に検討します。
  • プロバイオティクスは補助的に役立つ可能性がありますが、合う・合わないがあるため、体調を見ながら試します。
  • 質の良い睡眠、ストレス管理、口腔ケアといった基本的な生活習慣が、腸の正常な機能を支えます。

受診の目安と専門医によるアプローチ

セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、生活に支障をきたすほどの強い症状がある場合は、専門の医療機関に相談することを検討しましょう。

専門医に相談するタイミング

  • 膨満感や腹痛によって、仕事や日常生活に支障が出ている
  • 食事内容に関わらず、常に強い張りを感じる
  • SIBOの治療を受けたが、症状が改善しない、または繰り返す
  • これまでの検査では「特に異常なし」と言われたが、症状が続いている

といった場合には、SIFOの可能性も含めて総合的に診察できる、腸の機能性疾患に詳しい専門医への相談が望ましいです。

医療機関ではどのような流れで進むのか

当院のような専門外来では、以下のような流れで診察を進めていくのが一般的です。

  1. 詳細な問診:現在の症状はもちろん、いつから始まったのか、どのような時に悪化するのか、過去の病歴、手術歴、服用中の薬、食事や生活習慣、ストレスの状況など、時間をかけて詳しくお話を伺います。これは、SIFOのリスク因子を探り、他の病気の可能性を鑑別するための最も重要なプロセスです。
  2. 身体診察:お腹の音を聞いたり、触って張りや痛みの場所を確認したりします。
  3. 必要な検査の実施:まずは血液検査などで全身状態を確認し、重篤な病気がないかを除外します。その上で、必要に応じてSIBOの評価のために呼気検査を行ったり、便検査や尿中有機酸検査などを用い、これらの検査を総合的に判断してSIFOを診断します。
  4. 総合的な評価と治療方針の決定:問診と検査結果を統合し、SIFOの可能性が高いと臨床的に判断された場合、治療方針をご提案します。これには、生活習慣の再指導に加え、短期的な抗真菌薬の使用を検討することもあります(1, 3)。抗真菌薬の使用は、副作用や耐性菌のリスクも考慮し、その必要性を慎重に判断した上で、専門医の監督下で行われます。

大切なのは、一つの情報に振り回されず、ご自身の体の状態を総合的に、そして継続的に見てくれるパートナーとなる医師を見つけることです。受診の際は、これまでの症状の経過や試したことなどをメモにまとめて持参すると、よりスムーズに的確な情報を伝えることができます。

【この章の要点まとめ】

  • 体重減少や血便などの危険信号がある場合は、速やかに消化器内科を受診してください。
  • SIBO治療で改善しない慢性的な膨満感は、専門医に相談する重要なサインです。
  • 専門医は、詳細な問診を中心に、各種検査を組み合わせて総合的にSIFOの可能性を評価します。
  • 治療は生活習慣の改善が基本ですが、必要に応じて専門医の判断で抗真菌薬の使用が検討されることもあります。

もし、長年の体調不良に悩まれていて、検査や治療をされたいという方は当院栄養外来をご検討ください。

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よくある質問(FAQ)

ここでは、SIFOに関して患者さんからよくいただく質問にお答えします。

Q1. SIFOはどんな検査で確定できますか?

確定に近い方法は内視鏡で小腸液を吸引して培養し、真菌の量や種類を確認する手順です。ただし侵襲的で実施施設が限られ、採取時の混入や基準値の妥当性など未解決点もあります。臨床では症状やリスクも併せて便検査(GIMAP)や、有機酸検査などから総合的に判断します。

Q2. 呼気検査でSIFOは分かりますか?

呼気検査は細菌が作るガスを測るため、真菌が関与するSIFOの直接診断には適しません。SIBOの評価には役立ちますが、呼気検査が陰性であってもSIFOを否定することはできません。症状が続く場合は他の評価や専門医への相談を検討します。

Q3. 便でカンジダが出たらSIFOでしょうか?

それだけで小腸での過増殖を特異的に示すとは限りません。腸管のどこに由来するかの判別が難しいため、症状や他の検査結果と併せて総合的に解釈するのが現実的ですがSIFOを高確率で疑う所見とも考えられます。

Q4. SIBO治療で良くならない膨満はSIFOの可能性がありますか?

はい、その可能性は十分にあります。SIBOとSIFOは症状が重なり、併存している例も多く報告されています。抗菌薬による治療で改善しない、あるいは再燃を繰り返す場合には、真菌側の関与を視野に入れ、追加の評価や方針の見直しを検討することが重要です。

Q5. 砂糖を減らせばSIFOは改善しますか?

糖質、特に精製された砂糖の摂取を見直すことは、真菌のエサを減らすことにつながり、一部の方で膨満感の軽減につながる可能性があります。しかし、食事だけでSIFOが「治る」と証明されたわけではありません。まずは無理のない範囲で糖質の「量と質」を整え、ご自身の体調の変化を記録しながら進めることをお勧めします。

Q6. プロバイオティクスはSIFOに有効ですか?

腸内環境のバランス回復を目的とした補助的な対策として検討されますが、SIFO患者における大規模な有効性データはまだ限られています。人によって合う・合わないがあるため、もし試してみて膨満感が悪化するなど違和感があれば、中止を含めて見直す必要があります。

Q7. 胃酸を下げる薬(PPI)でSIFOになりやすいですか?

胃酸の低下は小腸の防御機能を弱めるため、SIFOのリスク因子の一つとして関連が示唆されています。ただし、PPIを服用している方全員がSIFOになるわけではありません。自己判断で薬を中断すると元の病気が悪化する危険があるため、薬の必要性や服用期間については、必ず処方医と定期的に相談してください。

Q8. 抗真菌薬で治せますか?期間はどれくらい?

短期的な抗真菌薬の投与で症状が改善したという報告はありますが(R1)、その効果は限定的である可能性や、再発のリスクも考慮する必要があります。薬剤の選択や投与期間は個々の状況に応じて専門医が慎重に判断します。副作用のリスクもあるため、自己判断での入手・服用は絶対に避けてください。

Q9. 女性特有の要因で膨満が強くなることは?

腸の感受性や自律神経の働き、睡眠・ストレスの状態など、複数の要素が膨満感に関与します。月経周期に伴うホルモン変動も体感に影響し得ますが、これは個人差が非常に大きい領域です。日々の症状や食事、月経周期などを記録しておくことは、ご自身の体調のパターンを把握し、診療時に医師へ的確な情報を提供するための有力な手がかりになります。

Q10. 受診の目安は?何科に行けばよいですか?

体重減少、発熱、血便、夜間の強い痛みなどがあれば、なるべく早く消化器内科を受診してください。消化器内科で問題ないと言われた場合において、栄養療法や機能性医学のSIBOやSIFOなど腸の機能的な問題に詳しい医療機関を選ぶのが理想です。既往歴や服用中の薬、食事・睡眠・便の状態などをメモして持参すると、診療がスムーズに進みます。

まとめ:焦らず、自分の体と向き合うために

今回は、長引くお腹の張りの隠れた原因となりうる「SIFO(小腸内真菌過増殖症)」について、その概念から原因、検査の現実、そして私たちにできることまでを詳しく解説しました。

SIFOは、まだ解明されていない部分も多い、発展途上の領域です。確実な診断法や特効薬がない現状では、不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、最も大切なのは、SIFOという「可能性」を知った上で、ご自身の不調のサインに改めて耳を傾け、生活の土台を見直すきっかけとすることです。食事、睡眠、ストレスケアといった基本的な生活習慣の改善は、たとえSIFOでなかったとしても、あなたの腸、そして全身の健康にとってプラスに働くことに間違いありません。

そして、SIBO治療がうまくいかない場合や、症状が深刻な場合には、一人で抱え込まずに専門家に相談する勇気を持ってください。SIFOやSIBOに精通した医師は、パズルのピースを組み合わせるように、あなたの症状や生活背景から原因を探り、次の一手を共に考えてくれるはずです。

すぐに結果が出なくても、焦る必要はありません。ご自身の体と丁寧に向き合い、一歩一歩進んでいくことが、長年の不調から抜け出すための最も確実な道筋です。この記事が、その長い道のりを照らす一筋の光となれば、これほど嬉しいことはありません。

もし、長引く不調の根本原因にアプローチし、本気で体質を改善したいとお考えでしたら、ぜひ当院の栄養療法外来をご検討ください。

また、公式LINEでは腸内環境の改善や体調管理に関する情報を随時お届けしています。お得なクーポンも配布していますので、ぜひご登録ください。

最後に(免責事項)

本記事の内容は、医学的情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療に置き換わるものではありません。記載されている食事療法やサプリメントを自己判断でお試しになり、健康被害などが生じても、当院では一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

病態の改善に必要なアプローチは、一人ひとりの状態によって大きく異なります。長引く不調にお悩みの方は、必ず専門の医療機関にご相談の上、主治医の指導のもとで治療を進めていただくようお願いいたします。

オンライン診療対象地域

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県

北海道と沖縄県はバイオロジカル検査の送付ができません。バイオロジカル検査の送付が必要なければオンラインでの診察はできます。

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参考文献

  1. Erdogan A, Rao SS. (2015). Small intestinal fungal overgrowth. Current Gastroenterology Reports, 17(4), 16. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25786900/
  2. Jacobs C, et al. (2013). Dysmotility and proton pump inhibitor use are independent risk factors for small intestinal bacterial and/or fungal overgrowth. Alimentary Pharmacology & Therapeutics, 37(11), 1103-1111. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23574267/
  3. Soliman Y, et al. (2025). Small Intestinal Fungal Overgrowth (SIFO): A Narrative Review of the Literature. Nutrients, 27(13), 4229. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40284229/
  4. Rao SSC, et al. (2018). Brain fogginess, gas and bloating: a link between SIBO, gut microbes and cognitive impairment. Clinical and Translational Gastroenterology, 9(6), 164. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29691369/
  5. Singh R, Mullin GE. (2017). A Wasting Infection: A Case of Small Intestinal Bacterial Overgrowth. Integrative Medicine (Encinitas), 16(3), 50-54. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6419785/

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