こんにちは、東京原宿クリニック院長の篠原です。
「デトックス」という言葉が健康や美容の分野で頻繁に使用されていますね。デトックスは、不要なものを体の外に出すとても大事なシステムです。副腎疲労を改善させるためにも必要な段階です。
今回は、デトックスの科学的根拠と、効果的な実践方法についてお話していきます。
Contents
デトックスとは?現代人に必要な理由
デトックス(解毒)とは、体内に蓄積された有害物質を排出し、身体の自然な解毒プロセスをサポートすることを目的としたアプローチです。現代社会では、環境汚染、加工食品の増加、ストレスなど、様々な要因により私たちの体は以前にも増して多くの毒素にさらされています。その毒素により、副腎疲労に陥ることがあります。副腎疲労につきましてはこちらを御覧ください。
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解毒のメカニズム:体の中の毒素はどう排出される?
人体には、毒素を処理し排出するための複雑なシステムが備わっています。主な解毒器官とその機能は以下のものがあります。
- 肝臓:最も重要な解毒器官であり、血液中の毒素を処理します。肝臓は毒素を水溶性の化合物に変換し、排出しやすい形に変えます。
- 腎臓:血液をろ過し、水溶性の毒素を尿として排出します。
- 消化器系:腸内細菌が毒素の処理を助け、便として排出します。
- 皮膚:汗を通じて一部の毒素を排出します。
- 肺:呼気を通じて揮発性の毒素を排出します。
このうち、最も重要なのは肝臓です。
体に蓄積する可能性のある有害物質
体に蓄積されて、害を及ぼす可能性のあるものは大体、以下のようなものがあります。
- 重金属: 水銀、鉛、アルミニウム、カドミウムなど
- マイコトキシン: カビ毒
- 環境ホルモン: BPA(ビスフェノールA)、フタル酸エステルなど
有害物質が蓄積する原因
完全に排除するのは難しいですが、なるべく体に入れない工夫も大事になります。
- 食生活: 大型魚に含まれる水銀、食品容器に含まれるBPA、加工食品に含まれるトランス脂肪酸など
- 歯科治療: 過去に使われていたアマルガム(水銀を含む歯科材料)
- 環境: カビの生えた場所、農薬、化学物質など
主な有害物質による症状と汚染源
主な重金属のものを示します。
水銀
症状
疲労感、イライラ、うつ、しびれ、夜間頻尿、四肢の冷感、腹部膨満感、記憶障害、便秘など
汚染源
大型魚、アマルガム、ワクチン(チメロサール)、水質汚染、水銀温度計、水銀電池、殺虫剤など
鉛
症状
貧血、疝痛、不安、食欲低下、めまい、イライラ、免疫低下、不妊など
汚染源
絵の具、排気ガス、大気汚染、水道管など
マイコトキシン(カビ毒)
マイコトキシン(カビ毒)とは、様々なカビが作り出す二次代謝産物で、湿度が高く、温度が適度でカビが繁殖する際に生成されます。そして、熱や加工処理に安定で、容易に分解されないのが問題点です。カビ毒に関しては以下を参照してください。
症状
発がん性、肝毒性、免疫毒性、神経毒性、消化器毒性、腎毒性など
デトックスが必要かセルフチェック
あなたの生活習慣や症状からデトックスが必要な可能性があるかどうかを判定してみましょう。ただしこれは診断ではありませんので、一つの参考としてください。
デトックスのメカニズム
デトックスは、主に以下の段階で肝臓において進行していきます。従いまして、この反応をスムーズに行うことがデトックスの成功を決めることとなります。
フェーズ1:活性化
肝臓のシトクロムP450酵素系が毒素を代謝し、より水溶性の高い形に変換します。このプロセスではフリーラジカルが発生しやすく、抗酸化物質が必要となります。
フェーズ2:抱合反応
グルタチオンや硫酸、グルクロン酸などが、フェーズ1で作られた中間代謝産物と結合し、毒素を水溶性の形にして体外に排出しやすくします。フェーズ2の能力が不足すると、フェーズ1で生成された中間代謝産物が細胞にダメージを与える可能性があります。そのため、フェーズ1とフェーズ2を同時に行うことが大切になります。
フェーズ3:排出
代謝された毒素は胆汁や尿、汗などを通じて体外に排出されます。体外に排出されないと、また体内に再吸収されてしまいます。胆汁は腸を通ってから便に排泄されるため、デトックスの前に腸内環境を整えることがとても大事になります。腸内環境の整え方は以下をご参照ください。
これら、フェーズ1,2,3がスムーズに行われることで、有効なデトックスができるようになります。
分子栄養学的アプローチによるデトックス
効果的にデトックスができるためのアプローチを考えてみましょう。
グルタチオン
グルタチオンは、肝臓で重要な役割を果たす強力な抗酸化物質であり、細胞レベルでの解毒に寄与します。主にフェーズ1,2で必要です。グルタチオンの生成を促進するためには、以下の栄養素が重要です。
- システイン
- グリシン
- グルタミン酸
これらのアミノ酸を含む食品(卵、にんにく、玉ねぎなど)を積極的に摂取することで、グルタチオンの生成を促進できます。
ビタミンC
ビタミンCは強力な抗酸化物質であり、フリーラジカルを中和し、免疫システムをサポートすることで、デトックスを促進します。主にフェーズ2で必要です。ビタミンCは以下の食品に豊富に含まれています。
- 柑橘類
- キウイ
- パプリカ
- ブロッコリー
ビタミンB群
ビタミンB群は、肝臓の解毒プロセスをサポートし、エネルギー代謝を促進します。特にビタミンB6、B12、葉酸は、肝臓の機能を最適化するために重要です。ビタミンB群は、フェーズ1,2で必要になります。これらは以下の食品に含まれています。
- 全粒穀物
- 豆類
- 緑葉野菜
- 魚類
ミネラル
亜鉛、セレン、マグネシウムなどのミネラルは、解毒酵素の機能をサポートします。主にフェーズ2で必要になります。これらのミネラルは以下の食品に含まれています。
- ナッツ類
- 種子類
- 魚介類
- 全粒穀物
食物繊維
不溶性食物繊維は腸内環境を整え、毒素の排出を促進します。フェーズ3で必要になります。腸内環境が整っていないと、毒素が再吸収されてしまいます。以下の食品が豊富な食物繊維源となります。
- 全粒穀物
- 豆類
- 野菜
- 果物
効果的なデトックス戦略
食事療法
以下の食事は、デトックスを進めてくれるので、積極的に摂取を考えましょう。
- クルシフェラス野菜の摂取: ブロッコリー、カリフラワー、ケールなどに含まれるグルコシノレートは、肝臓の解毒酵素を活性化します。
- 有機食品の選択: 可能な限り、農薬や化学添加物の少ない有機食品を選択することで、体内への毒素の摂取を減らします。
- 水分摂取の増加: 十分な水分摂取は、腎臓の解毒機能をサポートし、毒素の排出を促進します。
- ハーブティーの活用: ダンデライオンルート、ミルクシスル、緑茶などのハーブティーは、肝機能をサポートしてくれます。
サプリメント
デトックスをサポートするためのサプリメントとしては、以下のものが挙げられます。こちらを考慮する場合は、専門家に相談の上、行いましょう。
- グルタチオン: 直接摂取するか、前駆体であるN-アセチルシステイン(NAC)を摂取します。もしくは、一緒に摂取してもいいと思います。
- シリマリン: ミルクシスルに含まれるシリマリンは、肝細胞の再生を促進し、解毒機能をサポートする可能性があります。
- タウリン: タウリンは胆汁酸の合成を促進し、解毒プロセスをサポートします。
- ビタミンB群:エネルギー代謝を促進します。
- ビタミンC: 高用量のビタミンCは、解毒プロセスを促進します。
- ビタミンE: 肝細胞を酸化ストレスから保護します。
- 亜鉛: 解毒酵素の活性化に必要不可欠です。
- クロレラ: 重金属の排出を助けます。クロレラはフェーズ3で必要になるので、必ず併用が必要です。
- プロバイオティクス: 腸内環境を整え、間接的に解毒をサポートします。
- リーキーガットの予防: グルタミンは、腸の粘膜バリアを強化し、毒素の吸収を防ぎます。
生活習慣の改善
食事とともに、生活習慣の改善も重要です。
- 適度な運動: 適度な有酸素運動は、血液循環を促進し、リンパ系の機能を活性化させ、毒素の排出を助けます。
- 十分な睡眠: 質の良い睡眠は、体の修復と解毒プロセスに不可欠です。
- ストレス管理: 慢性的なストレスは解毒機能を阻害する可能性があるため、瞑想やヨガなどのストレス管理技法を取り入れることが重要です。
- 環境毒素の回避: 可能な限り、有害な化学物質や重金属への曝露を減らすよう心がけましょう。化学物質を含む洗剤や化粧品を、自然由来の成分を使用した製品に切り替えたり、定期的に換気を行い、空気清浄機や観葉植物を活用して室内の空気質を改善しましょう。また可能な限りプラスチックは使わず、ガラスや陶器、ステンレス製の容器を使用しましょう。
注意点とリスク
デトックスアプローチを実践する際は、以下の点に注意をしていきましょう。
- 極端な方法の回避: 急激な断食や極端な食事制限は、栄養不足や電解質バランスの乱れを引き起こす可能性があります。
- 個別化されたアプローチ: 個人の健康状態、遺伝的背景、生活環境に応じたアプローチが必要です。
- 医療専門家との相談: 特に持病がある場合や薬物療法中の場合は、デトックスプログラムを開始する前に医療専門家に相談してから行いましょう。
- 長期的な視点: 健康的な生活習慣の継続が、一時的なデトックスプログラムよりも効果的です。
- サプリメントの過剰摂取に注意: 一部のデトックスサプリメントは、適切な用量を超えると有害な影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
デトックスに関する検査と評価
効果的なデトックスを行うためには、個人の健康状態や毒素の蓄積状況を正確に把握することが重要です。そのためには以下の検査が有用と考えられます。
オリゴスキャン
手のひらで簡単に体内の必須ミネラルと有害金属を測定できる非侵襲的な検査方法です。この検査により、体内のミネラルバランスと重金属の蓄積状況を把握します。オリゴスキャンに関しては、以下をご参照ください。
毛髪ミネラル検査
毛髪に含まれるミネラルを分析することで、長期間のミネラルバランスや有害金属の蓄積状況を把握できます。この検査は、体内の慢性的な栄養状態や毒素の蓄積を反映するため、長期的なデトックスプログラムの設計に役立ちます。
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まとめ
デトックスは、単なるトレンドや一時的な健康法ではなく、現代社会に生きる私たちにとって重要な健康管理の一側面です。
デトックスとは、体の自然な解毒機能を最適化し、毒素の蓄積を最小限に抑えるライフスタイルを築くことです。これには、バランスの取れた栄養摂取、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理、そして環境毒素への曝露を減らすことが含まれます。
デトックスを意識することで体に毒物を入れずに快適な毎日を過ごしましょう。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。