表参道・原宿の東京原宿クリニック院長の篠原です。
食事の後に強烈な眠気に襲われた経験はありませんか?特に、昼食後にデスクに戻ると、突然まぶたが重くなって仕事が手につかなくなることがあります。
実は、この食後の眠気には様々な原因があり、単に「食べすぎた」だけではない複雑なメカニズムが働いています。今回は、食後の眠気の原因と、それを解消するための対策について、詳しくお話ししていきます。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
Contents
1. 血糖値の急激な変動
食後の眠気の最も一般的な原因の一つが、血糖値の急激な変動です。
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メカニズム
食事をすると、特に炭水化物を多く含む食事の場合、血糖値が急激に上昇します。これに対応して、膵臓からインスリンが大量に分泌されます。インスリンは血糖値を下げる働きがありますが、時として急激に血糖値を下げすぎてしまうことがあります。
この現象は「リバウンド低血糖」や「血糖値スパイク」と呼ばれ、眠気や倦怠感を引き起こす原因となります。研究によると、血糖値の急激な変動は脳内の覚醒を促す神経伝達物質「オレキシン」の分泌を抑制することが分かっています。血糖値については、こちらもご参照ください。
対策
- 低GI食品を選ぶ: 血糖値の上昇がゆるやかな低GI(グリセミック・インデックス)食品を選びましょう。全粒穀物、豆類、野菜などがおすすめです。
- 食事の順番を工夫する: 野菜→タンパク質→炭水化物の順で食べることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。
- 適度な運動: 食後に軽い運動(例:10分程度のウォーキング)をすることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。
2. 消化器系への血流集中
食事の後、体は消化のために多くのエネルギーを使います。このとき、血流が消化器系に集中することで、脳への血流が減少し、眠気を感じやすくなります。
メカニズム
消化活動が活発になると、胃や腸に血流が集中します。その結果、相対的に脳や筋肉への血流が減少し、眠気や倦怠感を感じやすくなります。特に、脂質やタンパク質の消化には時間がかかるため、これらを多く含む食事の後は眠気が強くなる傾向があります。
対策
- 少量頻回の食事: 一度に大量の食事を摂るのではなく、少量を頻繁に摂るようにしましょう。
- 消化を助ける食品を取り入れる: 生姜やハーブティーなど、消化を助ける食品を取り入れることで、消化にかかる負担を軽減できます。
- 食後の姿勢に注意: 食後はすぐに横にならず、少なくとも30分程度は起きている状態を保ちましょう。
3. セロトニンとメラトニンの分泌
食事によって引き起こされるホルモンの変化も、食後の眠気に関係しています。
メカニズム
食事、特に炭水化物を摂取すると、脳内でセロトニンの分泌が促進されます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれますが、同時に眠気を誘発する作用もあります。さらに、セロトニンは体内で最終的にメラトニン(睡眠ホルモン)に変換されるため、眠気がさらに強まる可能性があります。
興味深いことに、最近の研究では、セロトニンが過剰に産生されると、それ自体が疲労物質として作用する可能性も指摘されています。
対策
- バランスの良い食事: タンパク質、脂質、炭水化物をバランス良く摂取することで、急激なホルモン変動を抑えることができます。
- 光を浴びる: 食後に明るい光を浴びることで、メラトニンの分泌を抑制し、眠気を軽減できる可能性があります。
- BCAA(分岐鎖アミノ酸)の摂取: BCAAとトリプトファンは、脳内への取り込みにおいて競合関係にあります。両者は同じ輸送体を使って血液脳関門を通過するため、BCAAの血中濃度が高まるとトリプトファンの脳内取り込みが抑制されます。このメカニズムにより、BCAAサプリメントは慢性的な疲労感の軽減に効果がある可能性があります。BCAAの摂取は、セロトニン(トリプトファンから合成される)の過剰生成を抑え、疲労感を軽減する可能性があるため、試してみる価値があるかもしれません。
4. 自律神経系の変化
食事の後、私たちの体は「休息モード」に入ります。これは自律神経系の変化によるものです。
メカニズム
食事をすると、消化活動を促進するために副交感神経系が優位になります。副交感神経系は「休息・回復」のモードを司る神経系で、心拍数を下げ、消化を促進し、リラックス状態をもたらします。このリラックス状態が、眠気を引き起こす一因となります。
対策
- 軽い運動: 食後に軽いストレッチや歩行をすることで、交感神経系を適度に刺激し、眠気を軽減できます。
- 深呼吸: 食後に数分間、意識的に深呼吸をすることで、自律神経系のバランスを整えることができます。
- 香りの活用: レモンやペパーミントなどの爽やかな香りは、交感神経系を刺激し、眠気を軽減する効果があります。
5. 食事の内容と量
当然ながら、食事の内容や量も食後の眠気に大きな影響を与えます。
メカニズム
高炭水化物食や高脂肪食は、前述の血糖値の変動やホルモンバランスの変化を引き起こしやすく、結果として強い眠気を誘発します。また、一度に大量の食事を摂ることで、消化器系への負担が増大し、より多くの血流が消化に使われることになります。
対策
- バランスの良い食事: 炭水化物、タンパク質、脂質、食物繊維をバランス良く摂取しましょう。
- 適量を心がける: 一度に食べる量を控えめにし、腹八分目を心がけましょう。
- 食物繊維を意識する: 食物繊維は消化吸収をゆっくりにし、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。野菜や全粒穀物を積極的に摂りましょう。
6. 生活習慣と環境要因
食後の眠気は、食事だけでなく、普段の生活習慣や環境要因によっても影響を受けます。
メカニズム
睡眠不足や不規則な生活リズム、ストレスなどは、体のホルモンバランスを乱し、食後の眠気を強める要因となります。また、室温や照明など、食事をする環境も眠気に影響を与えます。
対策
- 十分な睡眠: 毎日7-8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。
- 規則正しい生活リズム: できるだけ同じ時間に起床し、食事をとるようにしましょう。
- 環境の調整: 食事中や食後の環境を、明るく涼しい状態に保つことで、眠気を軽減できます。
- ストレス管理: 瞑想やヨガなど、ストレス解消法を日常に取り入れましょう。
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7. 潜在的な健康問題
持続的な食後の強い眠気は、潜在的な健康問題のサインかもしれません。
メカニズム
糖尿病や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能低下症などの疾患は、食後の強い眠気を引き起こすことがあります。例えば、糖尿病では血糖値の調整が難しくなり、食後の急激な血糖値の変動が起こりやすくなります。
対策
- 定期的な健康診断: 年に一度は健康診断を受け、潜在的な健康問題がないかチェックしましょう。
- 症状の観察: 食後の眠気が長期間続く、または日常生活に支障をきたすほど強い場合は、医療機関での相談をおすすめします。
- 生活習慣の見直し: バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけましょう。
食後の眠気を引き起こす原因のセルフチェックテスト
あなたの眠気の原因がどれにあてはまるかをチェックしてみましょう。これは診断ではありませんので、参考としてください。
まとめ
食後の眠気は、複雑なメカニズムによって引き起こされる現象です。血糖値の変動、消化器系への血流集中、ホルモンバランスの変化、自律神経系の変化など、様々な要因が絡み合っています。
しかし、適切な対策を取ることで、食後の眠気を軽減し、午後の生産性を高めることは十分に可能です。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることが何よりも大切です。
また、持続的な強い眠気に悩まされている場合は、潜在的な健康問題の可能性もあるため、医療機関での相談をおすすめします。
当院において、血糖値コントロールなどの分子栄養学的なアプローチは、自費での診療となります。ご興味のある方は以下をご検討ください。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。