表参道・原宿の東京原宿クリニック院長、篠原です。
「色々試したけれど、お腹の不調がなかなか良くならない…」
「一般的な腸活を続けているのに、効果を実感できない…」
「下痢や便秘、お腹の張りに長年悩まされている…」
このような消化器系のお悩み、抱えていませんか? もしかすると、その不調の原因は、腸内環境のさらに奥深い部分、特に胆汁酸(Bile Acids)と短鎖脂肪酸(Short Chain Fatty Acids; SCFAs)という2つの重要な物質のバランスの乱れにあるのかもしれません 。これらは、消化吸収だけでなく、腸の健康維持や全身のコンディションにも深く関わっています。
本記事では、なぜ胆汁酸と短鎖脂肪酸が腸内環境と全身の健康にとってこれほど重要なのか、そして当院で行っている検査によってどのようにその状態を評価し、根本的な改善に繋げていくのかを、詳しく解説していきます。
当院では、栄養外来にて、胆汁酸や短鎖脂肪酸などを測定できる腸内環境検査を行い、腸内環境改善につとめています。栄養外来で診療していますので、ご興味のある方はご検討いただければと思います。

Contents
そもそも胆汁酸・短鎖脂肪酸とは?
まず、これらの物質が体内でどのような役割を果たしているのか、基本から見ていきましょう。
胆汁酸(Bile Acids)
胆汁酸は、主に肝臓でコレステロールを原料として作られ、胆嚢(たんのう)に一時的に貯蔵されます 。食事を摂ると胆嚢が収縮し、胆汁酸が十二指腸に分泌され、食事中の脂肪の消化吸収を助ける、まるで洗剤のような働きをします。その大部分は小腸で再び吸収され肝臓に戻りますが(腸肝循環)、一部は大腸へと到達します。大腸に達した胆汁酸は、そこにいる腸内細菌によってさらに代謝・変換されます。肝臓で作られた胆汁酸を一次胆汁酸、腸内細菌によって作り変えられたものを二次胆汁酸と呼びます。健康な腸内環境では、便中に含まれる胆汁酸は二次胆汁酸の割合が高くなることが知られています。
短鎖脂肪酸(Short Chain Fatty Acids; SCFAs)
短鎖脂肪酸は、主に大腸に生息する腸内細菌が、私たちが食べた食物繊維やオリゴ糖などをエサ(基質)として発酵する過程で作り出す代謝産物です。代表的なものには、酪酸(Butyrate)、酢酸(Acetate)、プロピオン酸(Propionate)などがあります。これらは、腸内環境の状態を反映する重要な指標となります。

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なぜこれらが腸内環境に不可欠なのか?驚くべき多機能性
胆汁酸と短鎖脂肪酸は、単に消化を助けたり、腸内細菌のエサになったりするだけではありません。私たちの腸の健康、さらには全身の健康維持に不可欠な、驚くほど多様な役割を担っています。
腸管バリア機能の維持と強化
短鎖脂肪酸、特に酪酸は、大腸の壁を覆っている細胞(大腸上皮細胞)にとって最も重要なエネルギー源です。酪酸が十分に供給されることで、細胞が元気に働き、腸の粘膜バリア(腸管バリア)が強化されます。これにより、腸の内容物(未消化物、細菌、毒素など)が体内へ漏れ出す「腸もれ(リーキーガット)」を防ぐのに役立ちます。腸もれは、アレルギーや自己免疫疾患、慢性疲労など、様々な全身症状の原因となり得ます。また、アッカーマンシア菌のような特定の善玉菌は、腸管バリア維持に貢献しますが、これらの菌の活動も短鎖脂肪酸と深く関連しています。
腸の運動(蠕動運動)の調整
胆汁酸は、食べ物を先へ先へと送り出す腸の動き(蠕動運動)を調節する上で重要な役割を果たしています。胆汁酸の分泌や代謝に異常があると、腸の動きが過剰になったり(下痢)、逆に鈍くなったり(便秘)することがあります。特に、過敏性腸症候群(IBS)の一部や、原因不明の慢性的な下痢である胆汁酸性下痢(BAD)は、胆汁酸の吸収不良と関連していることが指摘されています。短鎖脂肪酸もまた、腸の運動機能に関与しています。

免疫機能のバランス調整
腸は体内で最大の免疫器官と言われています。短鎖脂肪酸は、腸に存在する免疫細胞に直接作用し、過剰な炎症反応を抑え、免疫のバランスを整える働きがあります。腸内細菌が適切な量の短鎖脂肪酸を作り出すことで、腸の免疫システムが正常に機能し、アレルギー反応や炎症性疾患のリスクを低減できる可能性があります。二次胆汁酸も同様に免疫応答を調節することが分かっています。
全身の代謝とホルモンへの影響
近年、胆汁酸と短鎖脂肪酸が、全身の代謝調節にも関与していることが明らかになってきました。これらは腸管に存在する特殊な細胞(腸管内分泌細胞)の受容体に結合し、GLP-1といった腸管ホルモンの分泌を促します。GLP-1は血糖値のコントロールや食欲抑制に関わるホルモンであり、糖尿病などの代謝性疾患の予防や改善における腸内細菌代謝産物の役割が注目されています。
バランスが崩れるとどうなる?様々な不調のサイン
このように多岐にわたる役割を持つ胆汁酸と短鎖脂肪酸ですが、その産生や代謝のバランスが崩れると、様々な不調や症状として現れます。
胆汁酸の異常
高すぎる場合: 便中に過剰な胆汁酸が排泄される状態は、胆汁酸吸収不良(BAM)を示唆し、頑固な下痢(胆汁酸性下痢)の一般的な原因となります。
低すぎる場合: 胆汁酸レベルが低いと、脂肪の消化吸収不良(脂肪便)だけでなく、腸の動きが悪くなり便秘傾向になることがあります 。また、胆汁酸のバランス異常は、悪玉菌が増えやすい環境(ディスバイオシス)を作り出す可能性もあります。

短鎖脂肪酸の異常
低すぎる場合: 酪酸などの短鎖脂肪酸レベルが低い場合、酪酸産生菌のような善玉菌の不足、食物繊維の摂取不足、腸内の炎症、腸の動きの鈍化などが考えられます。これは腸管バリア機能の低下や免疫機能の乱れ、代謝異常に繋がる可能性があります。
高すぎる場合: 短鎖脂肪酸が過剰に高い場合は、食事内容(特に発酵しやすい糖質の摂りすぎ)や、消化不良による腸内での過剰な発酵、腸の通過時間が速いこと(下痢傾向)などを示唆します。特に、タンパク質の過剰な発酵によって増える分岐鎖脂肪酸(BCFAs)の増加は、消化能力の問題や食事の偏り、特定の疾患(炎症性腸疾患など)との関連が指摘されています。

SIBOとの深い関係:なぜ大腸の健康が小腸に影響するのか?
以前のブログ記事「〖SIBO(シーボ)〗小腸内細菌異常増殖の原因・症状・治療法とは?セルフチェックで確認しよう」 でも解説しましたが、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)の根本的な原因を探り、治療していく上で、大腸の腸内環境(マイクロバイオーム)の状態を把握することは非常に重要です。
健康な大腸のマイクロバイオームは、豊富な短鎖脂肪酸や二次胆汁酸を安定して産生します。これらの代謝産物は、腸全体の適切な運動を促し、腸管バリアを強化し、免疫バランスを整えることで、小腸内での細菌の異常な増殖を防ぐという、重要な防御メカニズムの一部を担っています。
もし、大腸のマイクロバイオームが乱れ、短鎖脂肪酸や二次胆汁酸の産生が低下してしまうと、この防御システムが弱まり、SIBOを発症しやすくなったり、治療しても再発しやすくなったりするリスクが高まります。つまり、SIBOを根本的に改善するためには、小腸内の状況だけでなく、その土台となる大腸のマイクロバイオームとその代謝産物の状態を評価し、改善していく視点が不可欠なのです。

腸内環境改善につきましては、当院栄養外来で行っています。
あなたの腸内環境の「今」を知る:StoolOMX検査
では、ご自身の胆汁酸や短鎖脂肪酸がどのような状態にあるのか、どうすれば知ることができるのでしょうか?
当院では、腸内の病原菌、日和見菌、善玉菌のバランス、カンジダなどの真菌、炎症マーカー、消化機能などを網羅的に評価できるGI-MAP検査を基本の検査として活用しています。GI-MAP検査については、こちらもご参照ください。これに加えて、さらに詳細な腸内環境の代謝活動を調べるために、StoolOMX(ストゥールオミックス)というアドオンパネル検査が使用できるようになりました。
StoolOMX検査では、25種類の胆汁酸と9種類の短鎖脂肪酸を精密に測定することができます。
- GI-MAP検査: 腸内に「誰が」いるのか(細菌や真菌の種類と量)、そして「何が」起きているのか(炎症、消化、免疫反応など)を知る。
- StoolOMX検査: 腸内細菌が「何を」作っているのか(胆汁酸、短鎖脂肪酸などの代謝産物)、そして胆汁酸がどのように代謝・再吸収されているかを知る。
これら2つの検査情報を「つなぎ合わせて」統合的に解釈することで、単に腸内細菌の種類や量を見るだけでなく、それらが実際にどのような代謝活動を行い、腸の機能(運動、バリア、免疫、代謝など)にどう影響しているのかを、より深く、立体的に理解することが可能になります。
StoolOMX検査の一部

例えば、「GI-MAPで酪酸産生菌が少ない」かつ「StoolOMXで酪酸(短鎖脂肪酸)も低い」という結果であれば、特定の菌の不足が機能低下に直結していることが明確になります 。一方で、「GI-MAPでは善玉菌はそれなりにいるのに、StoolOMXでは短鎖脂肪酸が低い」という場合は、食事内容(食物繊維不足など)や腸の通過時間の問題など、別の要因を探る手がかりになります。

このように、検査結果を多角的に分析することで、一人ひとりの腸内環境のアンバランスの根本原因をより正確に特定し、より的確で個別化された治療アプローチに繋げることができるのです。
StoolOMX検査は、特にこんな方におすすめです
StoolOMX検査を含む詳細な腸内環境評価は、特に以下のような症状や懸念をお持ちの方に有用です。
- 原因不明の慢性的な下痢または便秘に悩んでいる
- 食後の腹部膨満感や原因不明の腹痛が続く
- 脂肪便(便が水に浮く、白っぽい)や栄養吸収不良の兆候がある
- 過敏性腸症候群(IBS)と診断されたが、治療効果が乏しい
- 持続的な腸の炎症やディスバイオシス(腸内細菌叢の乱れ)が疑われる
- リーキーガット(腸もれ)が疑われる症状(アレルギー、自己免疫疾患、慢性疲労など)がある
- 原因不明の食物過敏症やアレルギー症状がある
- 血糖値の変動、体重管理など、代謝に関する懸念がある
- 標準的な治療や一般的な腸活では効果が見られない

検査結果に基づく、個別化ケア
当院では、GI-MAP検査やStoolOMX検査(必要に応じて尿中有機酸検査なども組み合わせます)といった機能性医学検査を駆使し、患者様一人ひとりの腸内環境を詳細に評価します。
検査によって胆汁酸や短鎖脂肪酸の具体的な異常が明らかになった場合、その結果に基づいて、根本原因にアプローチするための個別化された治療プランをご提案します。
- 食事療法
- 短鎖脂肪酸を増やすための水溶性食物繊維やレジスタントスターチ、ポリフェノール(野菜、果物、海藻、きのこ類など)を豊富に含む食事の指導。
- 必要に応じて、腸内での過剰な発酵を抑えるための一時的な低FODMAP食の導入と、その後の段階的な食品の再導入サポート。
- タンパク質や脂肪の摂取バランスの見直し。
- 栄養療法(サプリメント活用)
- 不足している短鎖脂肪酸(特に酪酸)を直接補うサプリメント。
- 胆汁の流れや分泌をサポートするハーブや栄養素(タウリン、レシチンなど)。
- 消化酵素や胆汁酸製剤による消化サポート。
- 腸管バリア修復のための栄養素(L-グルタミン、亜鉛、ビタミンA・Dなど)。
- プロバイオティクスやプレバイオティクスの適切な選択とタイミング。
- 生活習慣の改善
- ストレス管理(リラクゼーション法の導入、十分な睡眠の確保など)。
- 腸の蠕動運動を促す適切な運動(ウォーキング、ヨガなど)。
- 食事のリズムや食べ方(よく噛むなど)の見直し。
- 根本原因へのアプローチ
- GI-MAP検査などで特定の病原菌や日和見菌、真菌(カンジダなど)の過剰増殖が見つかった場合、それらに対する抗菌・抗真菌ハーブや、必要に応じた薬物療法。
- 胃酸分泌低下や消化酵素不足など、上部消化管の問題への対応。

一般的な「腸活」やサプリメントの摂取だけで効果を感じられない場合、それは表面的な対処にとどまり、根本原因にアプローチできていないからかもしれません。適切な検査によってご自身の腸内環境の「真の状態」を正しく知ることが、長引く不調から抜け出すための、最も確実な第一歩となります。
まとめ:健康な腸への道は、代謝産物の理解から
腸内環境の健康を考える上で、単に「善玉菌を増やす」ことだけを目指すのではなく、腸内細菌が生み出す「胆汁酸」や「短鎖脂肪酸」といった代謝産物が、適切なバランスで機能しているかどうかに目を向けることが極めて重要です。これらの物質は、腸の運動、バリア機能、免疫調整、さらには全身の代謝に至るまで、私たちの想像以上に広範な影響を及ぼしています。
そして、SIBOのような小腸の問題を根本的に解決するためにも、その土台となる大腸のマイクロバイオームと、そこで作られる代謝産物の状態を整えることも重要になってきます。
東京原宿クリニックでは、StoolOMXが利用できるようになったことで、GI-MAP検査と組み合わせることで、あなたの腸内環境について、「誰がいて、何が作られているのか」を詳細に分析し、症状の背後にある根本原因を深く掘り下げます。そして、その科学的根拠に基づいたオーダーメイド治療プランを作成し、腸内環境の根本的な改善を目指します。
長年のお腹の不調、原因不明の全身症状、改善しないIBS様症状などでお悩みの方は、諦める前にぜひ一度、当院栄養外来にご相談ください。先進的な検査と個別化されたアプローチで、あなたが健康な腸を取り戻し、より質の高い生活を送れるよう、サポートさせていただきます。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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