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分子栄養学

栄養療法によるトラウマ克服方法

表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。

今回は、トラウマにかかわる栄養素について考えてみたいと思います。

なぜ、取り上げたいかというと、栄養療法を行っている状況で、過去に起きたトラウマが尾を引いて、なかなか治療が進まないことがあるからです。

パニックのように、電車に乗れない、食事をすると吐きそうで怖い、何か不安をいつも抱えている、などがあると、治療がストップしてしまいます。

そして、トラウマがあれば、何かあると、トラウマの出来事に引っ張られてしまい、行動が制限されてしまいます。

そこで、トラウマを改善させることのできる栄養について、考えていきたいと思います。

ストレスの時代からトラウマの時代へ

現代社会は、ストレスの時代からトラウマの時代になったと言われています。

「ポリヴェーガル理論を読む」の著書の津田真人先生によると、1980年を境に、成長社会が成熟社会へ、産業社会がリスク社会へと心と体の作動様式が変わったと言います。

1980年以前は、ストレスの時代でした。

この時に大きな役割を果たしたのが、ご存知、交感神経です。

交感神経は、”闘争か逃走”の神経で、家出・仕事人間・モーレツサラリーマンなどが流行りました。

ストレスに対して、可動化、つまり動いて対処する時代だったのです。

ところが、1980年以降はトラウマの時代に変化して、例えば、

モーレツサラリーマン → 過労死
仕事人間 → 社畜
家出 → ひきこもり

に変化していきました。

ここで重要になってくる自律神経が、背側迷走神経複合体です。

この神経は、いわゆる”凍りつき=フリーズ”の神経で、不動化、つまり動かないでストレスに対処します。

つまり、死んだふりです。

現代社会がトラウマの時代になっているので、自然とフリーズしている方も多くなってきているわけです。

まして、感染症により人との交流が意図的に分断され、人との関わりがうまく取れなくなっている昨今、人との触れ合いという、安心安全の場が形成されません。

このような状況では、さらにフリーズが加速されることが予想されます。

トラウマに対処するには、やはり食事が大事で、さらに心理セラピーの組み合わせがいいと言われています。

トラウマで重要な扁桃体

トラウマは、心の傷とも言われていますが、恐れ、怒り、悲しみなどの強烈な感情を伴う出来事を経験したときに脳の処理能力を超えてしまったときに起こると言われています。

脳の部位では、扁桃体が過剰に活性化し、前頭皮質や海馬が不活性化することと関連があります。

本当は、過去に経験した出来事なはずなのに、強烈すぎて、うまく海馬が処理できなかったものに関しては、その出来事が「今起きている」、と勘違いしてしまいます。

そして、扁桃体がその出来事に対して、”危険”と判断することで、自律神経系や、HPA軸を活性化して、体に対して、影響が出ることになります。

動悸が激しくなり、冷や汗が出て、闘うか逃げるか凍りつくか、となるわけです。

本来、安全なはずなのに、誤って危険と認識してしまうわけです。

それが続くと、いつも危険なのではないか、と感じるようになり、いつも漠然とした不安をかかえるようになってきます。

トラウマの追体験が持続すると、いつもHPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎軸)に影響するようになり、副腎疲労につながります。

また、腸は、迷走神経によって、脳とつながっているため、トラウマにより、腸内環境に影響が出てきます。

ここで言う、迷走神経とは、背側迷走神経複合体(凍りつきの神経)です。

事実、トラウマを抱えている方(PTSD)では、過敏性腸症候群を発症しやすいです(PMID: 30144372)。

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トラウマを改善するポイントは腸内環境

さて、ここにトラウマを改善させるポイントがあります。

トラウマにより、脳 → 腸 に影響して、腸内環境が悪くなるのであれば、

腸内環境を良くして 腸 → 脳を改善できるのではないかということです。

事実、トラウマのマウスでは腸内環境改善により、トラウマが改善しました(PMID: 21876150)。

腸内細菌を改善させることで、腸を支配している背側迷走神経が影響を受けて、情報が脳の孤束核というところに到達。

背側迷走神経は凍りつきの神経ですから、腸内環境を改善させることで、凍りつきが改善。

孤束核に来た情報は、脳の疑核という腹側迷走神経複合体の出発点にも伝わり、安心・安全をもたらす。

つまり、トラウマからの回復に役立つということになります。

それだけ、腸内環境を改善させることが、トラウマの改善に重要ということになります。

実際、トラウマを経験した方の腸内細菌は似ていて、ある種の菌が少なくなっています。

ということで、トラウマを改善させるための第一歩は、腸内環境の改善になります。

腸内環境の改善に関しましては、以下をご参考ください。

トラウマを悪化させてしまう食事

①ウエスタン食

トラウマを悪化させてしまう食事について考えていきます。

西洋スタイルの食事=ウエスタン食は、ファーストフードに代表される食事です。

主成分は、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸と高GI炭水化物、甘味料などです。

トラウマに悩んでいる方には、特にウエスタン食は有害です。

マウスでは、高脂肪食で不安が増強し、さらには、脳の海馬が萎縮していました(PMID: 27844058)。

海馬は、記憶を仕分けしている部分です。

逆に、トラウマは過食や肥満を推進しやすいです。

高脂肪食や、高GI食(血糖値が上がる食事)は、脳に一瞬幸せをもたらすので、やめにくい、ということがあります。

ポリヴェーガル理論では、腹側迷走神経複合体は安心・安全をもたらす自律神経です。

腹側迷走神経複合体が活性化すると、凍りつきが改善します。

自分で腹側迷走神経複合体を活性化させることができない場合、高脂肪食や高GI食によって、一瞬、安心・安全をもたらす、という行動に出ます。

もちろん、その後は悪化してしまいます。

ですので、このようなウエスタン食を、不安解消のために食べている場合、自分がその食事に対して、一瞬の安全安心を得るための中毒になって、依存している、ということを理解することが大事になります。

②砂糖

砂糖などの高GI炭水化物は、トラウマを深めます。

事実、トラウマを抱えた方の糖尿病併発率は高いです。

脳の海馬という部位は、記憶を仕分けする部位と考えられています。

海馬がうまく働かないと、その時に起きた出来事が、そのときに起きたというだけでなく、

まるで現在起きていることのように感じてしまいます。

つまり、過去のストレスが、今まさに起きていると感じるようになります。

トラウマを抱えている人ほど、糖分の多いソフトドリンクを飲みます(PMID: 21751875)。

砂糖により、セロトニンの材料となるトリプトファンが脳に取り込まれやすくなり、リラックス効果があるのは確かです。

ところが、砂糖により血糖値が高くなると、海馬の働きが落ちてしまいます(PMID: 23680701 )。

その結果、ストレスに脳がうまく対処できなくなり、トラウマ化されてしまうことになります。

ということで、血糖値が急上昇するような、砂糖やパンなどは、気をつける必要があります。

一時のリラックス効果があるのは確かですが、とり過ぎには注意しましょう。

そして、もちろん急激に上昇した血糖値は、インスリンの作用によって、急降下することになります。

血糖値の急降下は、それはまた、動悸、冷や汗、イライラなどといった気分の変調をきたします。

なるべく、血糖値を安定化することが、精神の安定化になります。

③グルタミン酸

今回は、「グルタミン酸」です。

グルタミン酸は、記憶や学習に必要な神経伝達物質です。

また、料理のうまみを深めるときに、調味料としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)を振りかけることがされています。

ところが、グルタミン酸は過剰になると、脳神経細胞を害することがあります。

特に、自閉症などの発達障害系の方では、過剰のグルタミン酸により GABAへの変換が抑制され、言葉の発達に遅れがみられてしまいます。

トラウマではどうかというと、やはり過剰なグルタミン酸にはやられやすいです。

脳神経の過剰興奮がおきて、海馬な前頭前野といった、ストレスの処理に関わる部位に乱れが生じます。

事実、トラウマを患っている人に、グルタミン酸が少ない食事と、普通の食事を与えて比較したところ、グルタミン酸が少ない食事の方が、不安やトラウマ症状が緩和したという報告がなされています。

では、グルタミン酸の摂取源は何でしょうか。

グルテン、カゼインはまず、グルタミン酸が多く含まれています。

インスタント味噌汁、即席だし、レトルト食品、スナック菓子、醤油、トマトなどにも含まれています。

ところが、量においては、化学調味料にはとても多いので、やはり、グルテンフリー・カゼインフリーに加えて、化学調味料を控える、といったところが、まずは大事なのではないでしょうか。

トラウマを改善させる食べ物

さて、今回からはトラウマを改善させる食べ物の考察です。

①ブルーベリー

まずはブルーベリーです。

ブルーベリーには、アントシアニンというフラボノイドが多く含まれています。

アントシアニンは、酸化ストレスから身を守るという効果もあり、アルツハイマー型認知症のリスクを低下させたりすることが報告されています(PMID: 32320019)。

神経細胞の保護や、脳血流の改善などが示唆されています。

トラウマを抱えたラットの研究では、脳の前頭前野と海馬に炎症とフリーラジカルが起きていましたが、このラットに対するブルーベリーの影響を調べました(PMID:27603014)。

その結果、ブルーベリーを多く含む餌を与えられたラットでは、脳のセロトニンが増えて、炎症とフリーラジカルが減るといった効果が現れました。

そうした結果、ラットのトラウマ的な不安行動が改善したと報告されています。

前頭前野や海馬といった部位は、トラウマと強く関連します。

このような部位の炎症がブルーベリーによって減るということは、ブルーベリーがとても強力な抗炎症効果がある、ということではないでしょうか。

トラウマではないですが、うつ症状では、青年において、ブルーベリーによりうつ症状が軽減するとの報告があり(PMID: 32151287)、人においても何らかの影響を及ぼすと考えてもいいかと思います。

そして、血糖コントロールに重要な、インスリン感受性を、ブルーベリーによって改善する可能性も示唆されました(PMID: 20724487)。

毎日の食事に、添加物の少ないブルーベリーを少々。

そんな食生活もいいかもしれませんね。

②オメガ3系

オメガ3系脂肪酸は、細胞膜の主要な構成成分で、凝固、炎症や動脈の収縮などに関わっています。

人はオメガ3系を作れません。

オメガ3系で重要なのは、EPA, DHA, αリノレン酸です。

細胞膜の成分となるがために、脳に対する役割が指摘されています。

うつ病に対しては、議論のあるところではありますが、患者においてのメタ解析で、オメガ3系がポジティブに働いたことが報告されています(PMID: 26978738)。

トラウマについての研究でもオメガ3系が効果的であったと言われています。

トラウマのラットの実験では、オメガ3系は海馬を保護すること(PMID: 30871113)が報告されました。

海馬といえば、トラウマの記憶に関わるところです。

クロアチアの退役軍人のトラウマ症状が強いほど、血中EPAレベルが低かったり(PMID: 24577824)、東日本大震災の医療チームのトラウマを、魚油が軽減させる報告(PMID: 22854784)があります。

現代人はオメガ6が多く、オメガ3とオメガ6のバランスが悪くなっています。

魚などを中心に、えごま油、アマニ油などを意識しましょう。

③ビタミンC・ビタミンE

脳は、活性酸素に弱いです。

ストレスや炎症があると、脳が常にストレスにさらされて、脳に活性酸素で溢れかえっている状況となります。

つまり、抗酸化が有効というわけです。

抗酸化といえば、ビタミンC, Eです。

ビタミンCは、最強の活性酸素である、ヒドロキシラジカル(・OH)に、自らの水素を与えることで、無害な水に変えることができます。

ラットでは、トラウマによる記憶喪失が、ビタミンCを投与することで、酸化ストレスのマーカーを軽減して、記憶喪失も改善しました(PMID: 31711893)。

ビタミンEもビタミンCに匹敵する抗酸化物質で、脂質が酸化されるのを抑えて、細胞膜を守ってくれます。

トラウマのマウスにおいて、ビタミンEが不安を大きく改善させることが報告されていたり、人では、脳損傷のある患者さんにビタミンEを投与することで、損傷を防ぐことが報告されています(PMID: 28913459)。

過酸化脂質は、ビタミンEによって、普通の脂質に戻ります。

そのかわり、ビタミンEはラジカルになりますが、ビタミンCによって、普通のビタミンEに戻ります。

つまり、ビタミンCとEは抗酸化に用いる場合、共同して摂るとベターです。

④イチョウの葉・クルクミン

前回は、脳の抗酸化が、トラウマに対して有効であるということをお伝えしました。

そこで、抗酸化力のある栄養の続きです。

イチョウの葉は、やはりフリーラジカルからの攻撃から脳を守る力があります。

そこで、トラウマに対して利用できるのではないかという実験がされました。

イランの地震によりトラウマになった人に対して、イチョウの葉もしくはプラセボを与えた結果、イチョウの葉により、不安と鬱とトラウマの症状を和らげました(pISSN: 1735-4587)。

イチョウの葉により、マウスの脳の炎症を抑える報告もあります(PMID: 35677735)。

そして、クルクミンです。

クルクミンは、ウコンの地下茎から作られる香辛料である、ターメリックの中に含まれるポリフェノール化合物です。

クルクミンは、海馬を守ってくれます。

海馬といえば、トラウマに関わります。

クルクミンを摂取したラットでは、恐怖の記憶の定着が少なくなりました(PMID: 30018659)。

クルクミンによって、脳内のDHAを高めることによって不安を軽減させることも示唆されています(PMID: 25550171)。

クルクミンは他に、HPA軸を調整してくれたり、炎症を抑えたりリーキーガットを改善させたりと、多方面で大活躍です。

そして、クルクミンの吸収率を高めるのが、ピペリンでした。

ピペリンは黒胡椒の有効成分です。

ということで、本日の食事は、カレー+黒胡椒に決まりました。

⑤Nアセチルシステイン

普段何気なく見ているテレビなどからは、衝撃的なニュースが飛び込んでくることがあります。

そして、それらは悪いニュースのことが多く、私達の心を揺さぶります。

911の事件の時も繰り返し流される映像により、恐怖や不安、自信喪失や、トラウマになってしまう方がいらっしゃいました(PMID: 15792033)。

そのような方は、まずは情報デトックスをして、テレビを見ないようにしましょう。

そのような重いニュースのようなストレスは、扁桃体の過活動を生じます。

扁桃体は、トラウマや強迫性障害などに大きな関連があります。

Nアセチルシステイン(NAC)は、脳の皮質、扁桃体、海馬など、強迫性障害や、トラウマにかかわる多くの脳領域で、グルタミン酸塩が放出されることを阻害します。

グルタミン酸がトラウマ症状と関連することは、以前お伝えしました。

そして、さらに、酸化ストレスや炎症は、トラウマと関連することをお伝えしていますが、NACは、酸化ストレスや炎症を抑制してくれます(PMID: 18538422)。

PTSDを発症した退役軍人の研究では、プラセボと比較して、NACで治療された方が、PTSD症状、うつなどが改善しました(PMID: 27736051)。

トラウマだけではなく、強迫性障害の1つである、抜毛症も、NACによって、髪を抜く行為が減りました(PMID: 19581567)。

NACは、とても有望な栄養素として考えられます。

まとめ

トラウマがあると、何かをするにあたり常にその出来事にひっぱられてしまいます。

トラウマを改善させるためには、栄養状態を改善させることが重要になります。

そのためできる第一歩は、腸内環境の改善です。

腸内環境を改善して、トラウマに対抗できる体づくりをしましょう。

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最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

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