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分子栄養学

副腎疲労の検査と治し方

原宿・表参道の東京原宿クリニック 院長 篠原です。

副腎疲労というと、朝が起きられない、慢性的な倦怠感などが主な症状になります。

副腎疲労という概念が広まってきましたが、副腎疲労は西洋医学での病名ではありませんし、認められていません。

副腎は、脳と副腎とのつながりで考える必要があって、そのことをHPA軸と言います。

西洋医学では、HPA軸の機能障害という概念はあります。

そこで、今回は副腎疲労とHPA軸ということに関して考えて、その改善方法についてお話したいと思います。

少し、長めになりましたので、目次などを参考にして、ご興味のあるところをご覧いただければと思います。

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副腎疲労の概念は西洋医学で認められていない

「副腎疲労」という言葉は、ストレスによって副腎機能の低下が起こって、それにより様々な症状をおよぼす状態、として使われています。

副腎からは、コルチゾールというホルモンが出ているので、副腎疲労になると、コルチゾールの生成が低下します。

西洋医学では、血中コルチゾールが低くなる、アジソン病や副腎不全といった病気はありますが、相対的に副腎機能が低下している副腎疲労という概念はありません。

疲労がずっと続いている場合は、まずは、重い病気が隠れていないかどうかを探すことが大事です。

副腎疲労を考える前に、西洋医学での検査を受けて、別の病気が隠れていないかどうかをまず確認しましょう。

副腎は、脳と密接に関わっている

副腎は、脳と密接に関わって、ストレスに対して対応している臓器です。

それがHPA軸といいます。

H(視床下部)ー P(下垂体)ー A(副腎)

が連動して、それが障害されると、副腎疲労の様な症状になるというわけです。

副腎疲労という言葉は正確ではなく、HPA軸機能障害というべきですが、今回は、俗称で続けます。

ストレスを感じると人はどのような反応をするのでしょうか

人間がストレスを感じるとどのような反応をするのでしょうか。

ストレスの情報は大脳皮質から伝達されて、視床下部に至ります。

そして、2つのストレス反応系に伝達されます。

1つ目は、視床下部ー交感神経ー副腎髄質系(SAM系)

2つ目は、視床下部(H)ー下垂体(P)ー副腎皮質系(A)(HPA系)

です。

1つ目のSAM系では、ストレスがかかると、素早く副腎髄質に情報が伝わって、カテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリンなど)が出されます。

これらのホルモンが働くと、血圧上昇、発汗、血糖上昇、覚醒状態となります。

つまり、「闘争と逃走」状態になるわけです。

2つ目のHPA系が活性化されると、視床下部からCRHが出て、下垂体を刺激、下垂体からACTHが出て、副腎皮質を刺激して、副腎皮質からコルチゾールが出ることになります。

SAM系よりも遅い反応ですけれど、血圧や血糖上昇、炎症抑制などに影響が与えられます。

HPA系の重要な点は、多層性にネガティブフィードバック(抑えるシステム:安全装置)がかかることです。

このフィードバックがあることによって、ずっとコルチゾールが出っぱなしになることが避けられます。

ずっとコルチゾールが出っぱなしだと、コルチゾールが色々と悪さをしてしまうことになってしまうんです。

急なストレスなら、ネガティブフィードバックが働いて、だんだんとストレス反応が収まってくるわけです。

ところが、問題はずっと続く慢性のストレスがある場合は、HPA軸がずっと活性化されてしまい、そして、活性を抑えるシステムである、ネガティブフィードバックが効かなくなってしまうのです。

このように、慢性のストレスがずっと続いている場合は、HPA軸が活性化し続けて、それを補正するシステムが壊れて、副腎皮質から出るコルチゾールが出過ぎになったり、出なくなってしまったりするようになります。

ということで、副腎疲労という言葉は、副腎単体の疲労ではなく、脳から続くHPA軸のシステムの機能障害だったというわけでした。

ちなみに、1つ目のシステムであるSAM系が常に活性化していて、常に闘争と逃走状態になっていて、それでいて不調を感じないようになっている方を多く見かける気が致します。

副腎疲労=HPA軸の測定方法

では、どのようにHPA軸を測定するのでしょうか。

副腎から、コルチゾールが出て、色々な働きをするわけですから、HPA軸の機能を測定するためには、コルチゾールを測るのが一般的です。

①血清コルチゾール

血清コルチゾールは、「結合型」のコルチゾールと、「遊離」コルチゾールを合わせたものが測定されます。

血清コルチゾールの大半が「結合型」のコルチゾールなのですが、結合型のコルチゾールはグロブリンなどとくっついているために、実際の組織では利用できないんです。

実際に働いてくれる「遊離」コルチゾールこそ知りたいので、血清は使いづらいことが多いです。

②尿コルチゾール

遊離コルチゾールや他の代謝物を測定できますが、知りたい時間のポイントで測ることができない、という欠点があります。

③髪コルチゾール

3〜6ヶ月の長い期間のコルチゾール評価に有用です。

④唾液コルチゾール

組織で働いている遊離コルチゾールが測定できる、という点と、時間を決めて、あるポイントでの遊離コルチゾールが測定できるので、概日リズム(日内変動)が測れるという利点があります。

そして、採血とは違って、痛くないです。

ということで、HPA軸を評価するために、唾液コルチゾール検査が広く用いられています。

HPA軸で最も重要なことは、概日リズム(日中でどのように変化するか)なので、唾液コルチゾール検査は、最も適した検査方法と言えると思います。

唾液コルチゾールのCAR反応

副腎疲労を考える上で、脳とのつながりを考えることが重要だというお話です。

脳とのつながりのことをHPA軸というのでした。

HPA軸を測定する、唾液コルチゾール検査を行うことでわかるCAR(Cortisol Awaking Response)についてお話したいと思います。

CARは、起床時コルチゾール反応とも呼ばれ、朝目覚めた直後に発生するコルチゾールです。

起床時から、30分程すると、コルチゾールのピークを迎えます。

このピークは、

①目覚める直前に、下垂体からのACTHが上昇することによるコルチゾールの上昇と、
②視交叉上核が光を感じることによる上昇の2つによるとされています。

CARは、多くのHPAの軸の研究で用いられていて、その理由として、ストレスに対するHPA軸の反応をよく見ることができるとされています。

そして、人は、ストレスを予期することができます。

明日は、会議でプレゼンをする、ということが予め分かっている場合は、その日のCARが上昇することになります。

いつも仕事などで高負荷のストレスがかかっている人は、ストレスの予期があるので、平日の方がCARが高く、休日は低くなる傾向があります。

CARが下がる状態にはどのようなものがあるでしょうか。

心理的、社会的な燃え尽き、慢性疲労やPTSDといった状態では、CARは下がります。

つまり、唾液コルチゾール検査をすることで、そのような状況になっているかどうかが判定できるということと、治療前、治療後において比較することで、HPA軸=副腎疲労の改善度合いを評価をすることができるので、有用だと考えられます。

ご自分が、燃え尽きになっていないかどうか、CARを測定してみてもいいかもしれません。

心拍変動でHPA軸を評価する

心拍変動とは、心臓の1拍ごとの拍動の長さの変化のことをいいます。

心拍は、必ず同じリズムで打っているわけではなく、心拍にはゆらぎがあります。

心拍変動を測定することによって、交感神経と副交感神経の活性がわかります。

副交感神経が優位になれば、活性化されたHPA軸を抑えて、ホメオスターシスに導くので、HPA軸の評価にもなります。

ということで、HRVはストレスを計測することに良く使われており、慢性疾患においても有用です。

心拍変動は身近に測定できるようになってきました。

Apple watchでは、心拍センサーのあるものなら、HRVを測定できて、測定時点でのリラックス度合いがわかるので、確認してみてもいいかも知れませんね。

プレグネノロンスチールという罠

副腎では、コレステロールを原料にして、プレグネノロンに変換されて、一方ではコルチゾールがつくられ、一方では、性ホルモンが作られています。

ストレス負荷が強い場合、それに対抗するために、コレステロール→プレグネノロン→コルチゾールの流れが加速されて、コルチゾールが多く作られることになります。

コルチゾールは、ストレスに対抗するホルモンでした。

そうすると、プレグネノロンがコルチゾールを作るのに使われてしまって、

コレステロール→プレグネノロン→性ホルモンという、性ホルモンを作るためのプレグネノロンが不足して作れなくなってしまう、

このようなことを、「プレグネノロンスチール現象」と呼びます。

ストレスに対処するのに一生懸命の時に、性ホルモンなんて作っているヒマがないよ、というわけです。

ところが、プレグネノロン→コルチゾール を作っている場所と、 プレグネノロン→性ホルモン の場所は、同じ副腎の中でも、違います。

つまり、プレグネノロンの共同プールがあって、それがコルチゾールや性ホルモンに使われるわけでわないのです。

難しい話になりますが、ストレスがかかって、それに対抗するためにコルチゾールを作らなくてはいけなくなった時、高血糖や炎症、ストレスによりフィードバック制御や、受容体の伝達、酵素の発現などが変化して、その結果、性ホルモンが少なくなるということだったのです。

プレグネノロンスチールは、コルチゾールスチールとも言います。

スチールは、「盗む」という意味です。

今までは、「盗む」ということで説明されていましたが、そのような事実はなかった、というお話でした。

HPA軸に影響をあたえるもの

副腎疲労は、HPA軸の機能障害であり、脳との関係がとても深いというお話です。

そのため、副腎疲労を改善させるためには、副腎だけを元気にしても不十分ということです。

脳が疲労しないようにするという工夫を加えることが大切になってきます。

「The Role of Stress and HPA Axis in Chronic Disease Management」という本では、HPA軸に影響する因子として、4つ挙げています。

・血糖値の乱高下
・炎症
・概日リズム
・ストレス

です。

副腎を元気にさせるための食事やサプリメントをとっても、改善しない場合は、まずは、上の4つが抜け落ちてないか、チェックしてみましょう。

例えば、患者さんにお聞きしているとよくあるのが、入眠時間です。

多くの方が、日付を超えて睡眠をとっているようでした。

そのように夜遅く眠れば、それだけで、脳にストレスを与えて、治りにくくしてしまいます。

特に、スマホをいじって遅くなっているという場合も多くあるようなので、電源切って早く寝ましょう。

血糖調節障害とHPA軸

副腎から出る、コルチゾールは何をしているかというと、ストレスに対抗するために使われます。

ですから、ストレスがかかると、コルチゾールが出て対処しますが、同時にコルチゾールは血糖値を上げるという作用もあるので、血糖調節障害にもなります。

逆に、血糖調節障害は、炎症性サイトカインを介してストレスを惹起します。

ですから、ストレスに対処して血糖調節障害になっているのか、血糖調節障害によってストレスを惹起しているのか、悪循環サイクルになっているわけです。

よって、血糖調節障害を改善することが、HPA軸をととのえるために、とても重要になってくるのです。

そのためには、急激に血糖値が上がったり下がったりすることを防ぐということがとても大切になってきます。

そのための鍵は、食物繊維です。

食物繊維をとることで、血糖値の影響を下げることができる、という研究があります(PMID: 18326603)。

そして、精製された炭水化物、ソフトドリンク、甘味料を避けて、全粒穀物を意識しましょう。

また、朝食をとるということが、1日の血糖コントロールの基礎を作って、HPA軸を正しくする手助けになることがわかっています(PMID: 20228939)。

朝食をすっ飛ばしている方を見かけますが、調子が悪い方は、なるべく朝食は意識したほうが良さそうです。

血糖調節障害を改善させるための栄養素としては、

・食物繊維(水溶性、不溶性)
・シナモン
・リポ酸
・クロム
・バナジウム
・ベルベリン
・オメガ3

などがあるので、専門家と相談して考慮してみましょう。

炎症とHPA軸

今回は、HPA軸に影響を与える、”炎症”についてのお話です。

炎症が体にあるとやばいので、誰かが消さなくてはなりません。

HPA軸が機能すると、最終的に副腎から、コルチゾールが出てきます。

このコルチゾールが、炎症を消す作業をしています。

逆に、炎症があると、HPA軸を強力に活性化して、コルチゾールをたくさん作ることになります。

そして、問題は、慢性的に炎症によってコルチゾールが高くなっていると、HPA軸が反応しなくなってしまうことです。

その結果、コルチゾールがでなくなってしまうのです。

これがいわゆる、”副腎疲労”という状態です。

つまり、体の中に炎症があるということは、HPA軸機能障害(=副腎疲労)を招くことになるので、注意深く見つけていく、という作業が必要になってきます。

ところで、体の中の炎症とは、どんなものがあるでしょうか

教科書的には、

・腸(炎症性腸疾患)
・食べ物アレルギー
・リーキーガット症候群
・腸のディスバイオーシス(カンジダや寄生虫)
・関節炎
・自己免疫性疾患
・気管支喘息
・副鼻腔炎
・慢性上咽頭炎
・リウマチ
・心血管疾患
・脂肪肝

などです。

これ以外にも炎症となるものは数多いですが、炎症とは気づかずになっているものこそ、危険です。

その意味では、腸内環境、上咽頭炎、脂肪肝などは、体の炎症の部位として要チェックです。

炎症を放おって置くと、HPA軸が改善しないので、対処が大事です。

概日リズムとHPA軸

概日リズムは、ほとんどすべての代謝を調節しています。

代謝、免疫、抗酸化の遺伝子発現に関与しているので、適切な概日リズムを作るということがとても大切になってきます。

概日リズムを作る、3つの重要な外部信号は、

・明暗サイクル
・食事時間
・身体活動

になります。

明暗サイクルは、よく寝て、朝になったら光を浴びよう❗です。

睡眠不足2日続くと、HPAの軸の機能障害になってしまいます。

食事時間ですが、やはり朝食(朝目覚めてから間もなくの食事)が概日リズムを作るのに大切です。

身体活動ですが、日中は座ってばかりの生活をやめて、動くということが体内時計を正常化します。

「よく寝て、朝の光を浴びて、朝食はちゃんと食べて、日中は動く」

ということが

概日リズムを整えて、HPA軸をリセットする(=副腎疲労を改善する)ということにつながるわけです。

あなたは、夜12時とかに寝ていませんか?

ちょっと、遅すぎかもですよ。

参考として、概日リズムを改善させる栄養素としては、次のようなものがあります。

・メラトニン
・バレリアンルート
・L-テアニン
・GABA
・マグネシウム

ストレスとHPA軸

HPA軸に影響を与えるものの最後は、ストレスです。

人は、五感からの情報を、過去の記憶などと組み合わせて、対応しています。

そのため、過去のストレスやトラウマ、何を学んできたのかなどが影響して、その結果、心配や不安、恐怖、怒りというような感情をアウトプットします。

人は、実際に肉体的に脅威となっているのか、想像で脅威と感じているかの区別ができず、その両方ともHPA軸を活性化します。

そして、過剰なストレスは、燃え尽き症候群となって、HPA軸をダウンレギュレーションしてしまうことになります。

ストレスの大きさを決めるのは、そのストレスが

・目新しいのか
・予測不可能なのか
・脅威的なのか
・コントロール不能になっているのか

が重要とされています。

例えば、仕事の量があまりに多すぎて、”コントロール不能”に思えている場合、ものすごくストレスになります。

その場合、放おって置かず、自分がコントロールできるぐらいにする、ということがとても重要です。

あなたは、コントロール不能なストレスを抱えていませんか❓

副腎疲労を改善させるための栄養素

ここからは、HPA軸を改善させるための方法、栄養素をご紹介いたします。

CBDオイル

大麻草に含まれる生理活性物質のことをカンナビノイドと言いますが、私達の体の中でも似たような物質が作られていて、そのことを、内因性カンナビノイド(ECS)と言われています。

ECSは、ストレス、炎症、痛み、記憶などのシステムを制御しています。

前頭葉、扁桃体、視床下部などにおいて、シナプス間を逆行性に働いて、HPA軸の刺激を抑制させます。

つまり、HPA軸とECSは、とても密接に関わっているということになります。

では、最近はやりのCBDオイルはどうでしょうか。

ストレスがあると、視床下部でCRHが生成され、下垂体でACTHが生成され、副腎でコルチゾールを放出することになります。

CBDオイルは、内因性カンナビノイドに対して、外因性カンナビノイドと呼ばれ、CRHを低下させ、HPA軸を調節させます。

つまり、ストレスを抱えている、不安、不眠、炎症があるなどで、HPA軸機能障害になっている場合、CBDオイルがその改善の鍵を握っているかもしれません。

ビタミン・ミネラル

※ビタミンC

副腎から出るホルモンや、脳の神経伝達物質の合成は、ビタミン・ミネラルに依存しているので、適切な量を意識することは大事です。

ビタミンCは、副腎に取り込まれる量が多く、それだけ大事だということです。

副腎がホルモンを作る時に、チトクロームP450という酵素が必要ですが、ビタミンCは P450がダメージを受けるのを防御してくれます。

ビタミンCを取ることで、不安症状や気分を改善したり(PMID: 29369301)、ストレスや血圧を下げることが報告されています(PMID: 11862365)。

やっぱり、ビタミンC大事です。

サプリでは、添加物の多いものには注意しましょう。

※ビタミンB群

ストレスがかかると、ビタミンBの貯蔵量が低下します。

副腎から出るホルモンの合成には、ビタミンB群が必要です。

ですので、HPA軸を改善するためには、ビタミンB群を意識することは、有利と考えられます。

ビタミンB群は腸内細菌でも作られますので、腸内環境を改善するということも、とても大事になってきます。

※ミネラル

HPA軸の機能や、神経伝達物質に関連しているミネラルは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛です。

そのうち、とても重要なのは、マグネシウムで、睡眠や代謝、疲労などに関わっているので、HPA軸機能障害改善するために、間接的にとても重要です。

マグネシウムは、ほとんどの方が不足しているとも言われているので、ほとんど第1候補として考えたいミネラルと言えます。

採血項目のALPは、マグネシウムが足りないと低く出るので、参考にしてみてください。

オメガ3とフォスファチジルセリン

中枢神経系において、多価不飽和脂肪酸の役割というのは、認知や発達にとても関与していることが知られて来ました。

オメガ3を投与すると、コルチゾールの上昇を抑えたり、ストレスや炎症のマーカーを減らすことが知られています。

オメガ3は、動物ではストレスからの海馬の保護作用が報告されています。

ヒトにおいては、オメガ3がHPA軸に効果があるかは議論の最中ですが、血中のオメガ3の減少と、不安やおちこみ、気分障害の関連性が言われています。

また、フォスファチジルセリン(PS)は、脳細胞膜のリン脂質の1部で、認知機能の向上などに使われています。

PSは、ストレスに対する、ACTHとコルチゾールの反応を減少させることを示唆していて、HPA軸を改善させるとされています。

サイコバイオティクス

サイコバイオティクスってなんでしょうか。

気分や、脳機能に影響を与える、腸内細菌のことを言います。

以前より、腸内細菌と脳の相互作用が言われていますよね。

ぼくは以前下痢が酷かったときには、集中力がかなり低下していました。

サイコバイオティクスは、不安、ストレス反応、行動、認知機能、気分に有益です。

例えば、Bifidobacterium longum という菌のサプリメントがを4週とると、予期不安が減少しました(PMID: 27801892)。

うつ病に対してのメタアナリシスでは、サイコバイオティクスがとても有用であることが示されました(PMID:34681176)

サイコバイオティクスが有効であったメカニズムとして、炎症を抑えたり、神経伝達物質を改善したり、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸を改善したなどの色々な影響が含まれていると考えられています。

副腎抽出物

副腎疲労を立て直すのに、副腎が元気になるための栄養素を補給することが大事です。

そのために、古くから用いられてきたものが、牛の副腎から抽出したエキスということになります。

つまり、副腎疲労には副腎をもって制する、ということです。

1918年のインフルエンザの時に、感染によって、副腎疲労になった患者さんに、副腎皮質エキスなどを投与したところ、衰弱から克服するのに、とても効果的でした。

ところが、その後に、コルチゾールが合成されて、さらに強い効果がもたらされたため、製薬会社はコルチゾールにスイッチしました。

ご存知のように、コルチゾールを外から入れると、逆に副腎機能を低下させてしまうので、安易に用いるのは危険です。

古くて有効な副腎の栄養になる副腎抽出物、HPA軸の改善に役立ててもいいかもですが、BSEなどの感染には気を配る必要があります。

DHEA

DHEAは副腎が作っていて、性ホルモンの前駆体になるものです。

DHEAは25歳をピークにどんどんと低下していってしまいます。

ということで、以前は若返りのホルモンとしてもてはやされ、実際にとると、ニキビができたりします。

副腎疲労では、初期からDHEAが低下していくので、どんどん補給していけばいいかというと、そうでもないことが注意が必要です。

DHEAは、コルチゾールの悪影響を抑える、という働きがあります。

副腎疲労のステージ1では、コルチゾールが高くなるので、それを抑えるためにDHEAが使用されます。

また、性ホルモンの前駆体ですので、アンドロゲンやエストロゲンの問題に対しても使われたりします。

日本においては、ホルモン扱いであり、入手するには、クリニックでないと難しいです。

実際、検査をしながら使っていくので、適当に用いるのはリスクがあります。

当院では、唾液コルチゾールや採血をみながら、使っています。

DHEAにつきましては、こちらも御覧ください。

プレグネノロン

プレグネノロンは、コレステロールから作られて、すべてのステロイドホルモンの前駆体となっているものです。

つまり、コルチゾール、プロゲステロン、テストステロン、エストロゲンなど全てのステロイドホルモン合成に関わっている重要なポイントに位置しているということです。

ということは、副腎疲労でコルチゾールや性ホルモンが減少している時には、プレグネノロンを使うことで、HPA軸を改善していくことができる可能性があります。

統合失調症の患者さんにおいて、プレグネノロンを投与すると、注意力が向上したり、記憶力が向上したりしました(PMID: 24548129)

また、プレグネノロンが低下すると、炎症が抑えられなくなることも報告されています。

つまり、HPA軸に対しては、プレグネノロンは原料となるし、調節する役目をしていると考えられます。

当院でも、HPA軸が低下している方には、積極的に使っています。

まず、HPA軸を取り戻すことが、第一歩と考えています。

アダプトゲン

アダプトゲンとは、ストレスへの対抗能力がある、天然のハーブのことです。

良く、研究されているものとして、

・Eleuthero (エゾウコギ)
・Rhodiola(イワベンケイ)
・Schisandra(チョウセンゴミシ)
・アシュワガンダ
・アメリカニンジン・朝鮮人参

などがあります。

例えば、アシュワガンダは、不安やストレスの改善の効果が認められるので、予期不安などに有効です。

ただ、一つひとつの効果というのは、それほど強くなく、一緒に合わせて用いることによって、より効果が現れます。

RSE(イワベンケイ、チョウセンゴミシ、エゾウコギ)というコンビネーションには、認知機能を向上したり、酸化ストレスの軽減、水泳時の疲労の減少が認められています。

つまり、単独での摂取を考えるよりも、より複合でとったほうが良さそうですね。

ハーブ

Lテアニンは抹茶や緑茶に含まれていて、ストレス解消、気分障害、認知機能の改善などの研究がなされています。

グルタミン酸は、脳神経において、興奮作用や、神経死を起こすということで、特に発達障害のある子供には厳重に控えてもらっています。

Lテアニンは、グルタミン酸と分子構造が似ているために、本来のグルタミン酸が働くことを阻害してくれます。

また、GABAを増やすという作用もあることから、不安や不眠などを抱えている方に対してとてもいいと思います。

健康な人に対してLテアニンを4週間飲むことで、ストレスが軽減され、気分や睡眠の質が向上しました(PMID: 26797633)。

抹茶や緑茶を長期に飲むといいかもですね、ってカフェインの作用はどうなんだ、という声が聞こえてきそうです。

実際、Lテアニンの作用は、茶のカテキンやカフェインで打ち消されます(PMID: 22707502)。

カフェインの量を気をつけるか、サプリというのが現実的でしょうか。

運動するべし

運動は、心血管系、認知症、筋骨格系、糖尿病、自己免疫などへの利点がわかっていますし、さらに、精神的・もしくは感情面での改善効果もあります。

ストレスへのレジリエンス効果もあります。

そもそも、ストレスは、昔はなんとか生存率を高めるための反応だったのですが、今では、ストレスというと、精神的なストレスが大部分を占めていて、すぐに解決しないから、ずっとストレス反応を出し続けなければならないのです。

そんな時に、運動はストレス反応を戻すことができるわけです。

運動を連続して行うと、自律神経やHPA軸が整い、同じようなストレスが来た時に対応できるようになります(PMID: 8744253)。

このような高い効果を持つ運動ですが、ストレスが強い人ほど動きたくない、ということもあり、運動を意識することがとても大事です。

ただ、副腎疲労真っ只中にとって、運動といっても厳しい面もあるかと思います😔

副腎疲労疲弊期(一番疲れている)の場合、簡単なウオーキング、ストレッチ、ヨガがいいです。

〜ヨガ〜

ヨガは、体と心に作用するので、詳細なメカニズムはわからないものの、気分を高めるし、同じようなものには、瞑想や森林浴などがあります。

ヨガは、HPA軸と自律神経に直接働くことで、ストレスに対する反応を低下させてくれます。

ヨガを瞑想と一生にやることでストレス軽減効果はさらにアップです(PMID: 28863392)。

ヨガは、リスクも少なく、疲弊期の方にとってもってこいですね。

〜森林浴〜

日本で大人気の森林浴は、メタ解析で血圧低下や免疫細胞の活性化などが認められています(PMID: 28814305)。

森林浴のすごい効果は、森林浴に行く前から、コルチゾールが低下して、ストレス軽減効果があるということです。

下記の森林セラピーロードは、科学的にストレスレベルが軽減するかどうかを確かめて、認定されている森ということになります。

https://www.fo-society.jp/quarter/index.html

森林浴は、単に外に出て運動するよりも大きな効果が見込まれるので、今週末にでも、暖かい格好して出かけてみましょう。

あなたは、どこかいい森林浴の場所をご存知ですか❓

ストレスと記憶

さて、最近、記憶力が低下したと感じられている方はいらっしゃらないでしょうか。

急性や慢性のストレスが記憶力に影響を及ぼしてしまいます。

ほとんどのストレスによって、主に海馬と扁桃体の神経可塑性が低下して、記憶障害をひきおこします。

そして、慢性のストレスが怖いのは、ストレスが終わっても、神経への影響が続くことです。

ストレスホルモンと言われる、アドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどは、単独というよりは、相乗的に神経変化をひきおこします。

ということで、記憶力への対策は、急性もしくは慢性のストレスを極力低下し、リラックスするということが大事になってきます。

冒頭の森林浴や自然に触れるということも大事になってくると思います。

また、睡眠、運動、瞑想、認知訓練なども効果があります。

記憶力を改善するための栄養素は何でしょうか

フォスファチジルセリン(PS)は、脳細胞膜に多く存在します。

PSは、BBB(血液脳関門)を通過して、神経伝達を改善し、記憶力を向上させます。

Lーテアニンは、2017年のレビューで、記憶力、注意力などの向上が見られました。

記憶力が気になる方は、これらのものを利用してみてもいいかも知れません。

甲状腺機能との関連

甲状腺というのは、のどにある蝶々のような臓器で、甲状腺ホルモン(T4とT3)を作っています。

甲状腺ホルモンは体の代謝を司っているので、甲状腺ホルモンが少なくなると、代謝が低下したような症状が現れます。

・倦怠感
・むくみ
・髪の毛が抜けやすい
・便秘
・低体温
・低血圧

などです。

この症状をみて、思い当たる、と思った方がいらっしゃるかも知れません。

副腎疲労の症状だとか、低血糖の症状とすごく似ていますね。

甲状腺機能や副腎機能、低血糖や低中性脂肪といったものは、同じものを別方向から見ているものとも捉えられます。

甲状腺は、視床下部(H)ー下垂体(P)ー甲状腺(T)という命令系統になっています。

これは、HPA軸ととても良く似ていて、実際、HPA軸とHPT軸は密接にリンクしています。

甲状腺ホルモンは、fT3とfT4があって、メインに働くのがfT3(正常値3ぐらい)です。

fT3が低くなると、その親玉のTSHが多く分泌されます(TSH 2以上)。

つまり、甲状腺機能が低下すると、fT3が<3になり、TSHが>2になります(おおまかな話です)。

ところが、fT3が低いのに(<3)、TSHが<2のままの方も多くいらっしゃり、こちらは倦怠感などがとても強い印象です。

これをLowT3症候群といって、体の代謝を落として、エコモードにしている状況と考えられます。

この状況は改善に時間がかかることが多く、エコモードを解除していく必要があります。

そのための第一歩は、糖質制限やダイエットはせず、まずは十分なエネルギーを与えていく必要があるわけです。

ご自分のデータと照らし合わせてみましょう。

アシュワガンダの有用性

多くのハーブが甲状腺機能に影響を及ぼしますが、データは少ないのが現状です。

その中で、アシュワガンダは甲状腺ホルモンを増やし、甲状腺機能低下になった組織を回復するという動物のデータや人間でのデータがあります。

甲状腺機能低下にはこのようなハーブを利用しつつ、特にLowT3であれば、十分なエネルギーの補給に心がけましょう。

まとめ

副腎疲労という言葉は、西洋医学では認められておらず、脳との関わり≒HPA軸として考え、脳からの疲労と考えたほうがより正確です。

副腎疲労をきたす4つの大きな原因は、血糖調節障害、概日リズム障害、精神的なストレス、炎症で、これらをコントロールすることがとても大事です。

副腎疲労を改善させるための栄養素を用いて、HPA軸をリセットすることが、回復への早道になります。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

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