原宿・表参道の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
鼻内翼口蓋神経節刺激法(Intra Nasal SphenoPalatine Ganglion Stimulation; INSPGS:インスピグス)は、大阪の耳鼻科医でいらっしゃる田中亜矢樹先生がご報告された、翼口蓋神経節の刺激法です。
鼻や口から綿棒を入れて、上咽頭を刺激するEAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy)とは、手技が似ていますが、EATは上咽頭炎を沈静化することに対して、INSPGSは、おおまかには三叉神経を刺激して、臨床効果を得るという違いがあります。
今回は、INSPGSについて、お話したいと思います。
INSPGSとは
INSPGS(インスピグス)の最初の「IN」は、intra Nasal、つまり、鼻内ということで、鼻からアプローチします、という意味になります。
次の、「SPG」は、 翼口蓋神経節(Sphenopalatine Ganglion)のことです。
そして、最後の「S」はStimulationで刺激する、ということです。
つまり、鼻の中から、翼口蓋神経節を刺激する手技、ということになります。
ということは、INSPGSを考える時に、翼口蓋神経節がどのような働きをしているかを考える必要があります。
翼口蓋神経節の働き
翼口蓋神経節(SPG)は、三叉神経第2枝から分かれて出来た神経が集まってできた、かたまりのことです。
以前より、翼口蓋神経節に電気デバイスを埋め込んで(SPG電気刺激)、刺激することにより、群発頭痛に効果があると報告されてきました。
その機序として、
①側副血行路の増強
②血液脳関門の安定化
③直接的な神経保護
④脳可塑性の増強
が考えられました。
よって、鼻の中から刺激する、INSPGSも、SPG電気刺激と同様な機序で働いていると田中亜矢樹先生は考えられました。
ポリヴェーガル理論とINSPGS
ポリヴェーガル理論では、迷走神経には2種類あるとしていて、その2つとは腹側迷走神経と背側迷走神経です。
そのうち、三叉神経は、腹側迷走神経複合体を形成しています。
腹側迷走神経複合体は、ヒトにおいて、「社会的関わりシステム」としての機能があり、安全、安心のコミュニケーションを行う時に働きます。
病気や不調になっているときは、交感神経が緊張して「闘争と逃走」になったり、背側迷走神経複合体の働きにより「凍りつき」になったりすることが多いわけですが、その時に腹側迷走神経複合体を働かせることはとても重要になります。
INSPGSにより、腹側迷走神経複合体を刺激し、効果を得られるとも考えられます。
INSPGSの有効な症状
文献によると、頭痛、倦怠感、疲労、ブレインフォグ、羞明などに有効であったとのことでした。(The efficacy of Intranasal Sphenopalatine Ganglion Stimulation (INSPGS) in Long COVID, and its Possible Mechanisms、Scholarly Journal of Otolaryngology)
当院においては、通常のEATに加え、上記のような症状で必要な場合は、INSPGSを加えます。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。