表参道・原宿の東京原宿クリニックの院長 篠原です。今回は、多くの方が悩んでいる「ブレインフォグ」について詳しくお話しします。
最近、こんな経験はありませんか?
- 仕事中、集中力が続かない
- 大事な約束を忘れてしまう
- 簡単な計算でも頭が回らない
- 会話中、言葉が出てこない
もしこれらの症状に心当たりがあれば、あなたも「ブレインフォグ」に悩まされているかもしれません。
今回は、ブレインフォグについてのまとめと対策についてお話したいと思います。
途中に、セルフチェックテストがありますので、ご自身の症状をチェックしてみてください。
Contents
ブレインフォグとは?
ブレインフォグ(Brain Fog)とは、直訳すると「脳の霧」を意味します。その名の通り、頭の中に霧がかかったようにぼんやりとした状態が続く症状のことを指します。
ブレインフォグは医学的な診断名ではなく、症状の総称です。しかし、近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症としても注目されており、多くの人が悩まされています。
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ブレインフォグの症状
ブレインフォグの主な症状には以下のようなものがあります。
- 思考力の低下(頭がボーッとする)
- 集中力の低下(目の前のことに集中できない)
- 記憶力の低下(頻繁に物忘れをする)
- 言語能力の低下(言いたいことが口から出てこない)
- 決断力の低下(簡単な決断でも時間がかかる)
- 感情の不安定(イライラしやすくなる)
- 慢性的な疲労感
- マルチタスクが困難になる
これらの症状は、仕事や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
ブレインフォグの原因
ブレインフォグの原因は多岐にわたります。主な原因として以下のようなものが挙げられます:
- ストレスと不安
長期的なストレスや不安は、脳の機能に直接影響を与えます。ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されると、脳の海馬(記憶や学習に重要な部位)にダメージを与え、認知機能の低下を引き起こします。 - 睡眠不足
質の良い睡眠は、脳の休息と回復に不可欠です。睡眠中、脳内では記憶の整理や不要な情報の削除が行われています。睡眠が不足すると、これらのプロセスが十分に行われず、結果としてブレインフォグの症状が現れやすくなります。 - 栄養不足
脳が正常に機能するためには、適切な栄養が必要です。特に、ビタミンB群、ビタミンD、オメガ3脂肪酸、マグネシウムなどが重要です。これらの栄養素が不足すると、脳の機能に悪影響を及ぼし、ブレインフォグの原因となる可能性があります。 - ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンの変動は、脳の機能に大きな影響を与えます。特に更年期に入ると、エストロゲンの分泌が減少し、これがブレインフォグの症状を引き起こす一因となることがあります。 - 慢性炎症
体内の慢性的な炎症は、脳にもダメージを与えます。炎症性サイトカインと呼ばれる物質が増加すると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、ブレインフォグの症状が現れやすくなります。 - 腸内環境の悪化
最近の研究で、腸と脳の密接な関係が明らかになってきました。腸内環境が悪化すると、脳に炎症を引き起こす物質が増加し、ブレインフォグのリスクが高まります。 - 環境毒素の蓄積
私たちの身の回りには、様々な環境毒素が存在します。水銀、鉛、ヒ素などの重金属や、カビ毒などの毒素が体内に蓄積すると、脳にダメージを与え、ブレインフォグを引き起こす可能性があります。 - 血糖値の変動
血糖値の急激な上昇や下降は、脳のエネルギー供給を不安定にします。特に、精製糖質を多く含む食品を摂取すると、血糖値が急上昇した後に急降下し、これがブレインフォグの症状を引き起こすことがあります。 - 感染症
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症として、ブレインフォグが報告されています。ウイルスとの戦いで生じた炎症が脳に影響を与えている可能性が指摘されています。 - 慢性疲労症候群やうつ病
慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症(Fibromyalgia)、うつ病などの健康状態も、ブレインフォグと密接に関連しています。
ブレインフォグの対策
ブレインフォグの症状を改善するためには、原因に応じた対策が必要です。以下に、効果的な対策をいくつか紹介します。
1. ストレス管理
ストレスを完全になくすことは難しいですが、適切に管理することは可能です。
- ヨガや瞑想を日常に取り入れる
- 深呼吸法を実践する
- 趣味の時間を作る
- 自然の中で過ごす時間を増やす
これらの方法を通じて、ストレスを軽減し、脳の健康を維持することができます。
2. 質の良い睡眠
睡眠の質を改善することで、脳の回復を促進できます。
- 規則正しい就寝・起床時間を守る
- 寝室の環境を整える(適度な温度、暗さ、静けさ)
- 就寝前のブルーライト露出を避ける
- リラックスする就寝前のルーティンを作る(例:軽い読書、ストレッチ)
3. バランスの取れた食事
脳に必要な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。
- 魚(特に青魚):オメガ3脂肪酸の供給源
- 野菜や果物:ビタミン、ミネラル、抗酸化物質の供給源
- ナッツ類:ビタミンE、マグネシウムの供給源
- 全粒穀物:ビタミンB群の供給源
また、加工食品や精製糖質の摂取を控えることも大切です。
4. 適度な運動
適度な運動は、脳の血流を改善し、新しい神経細胞の生成を促進します。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳など
- 筋力トレーニング:自重トレーニング、軽いウェイトトレーニングなど
- バランス運動:ヨガ、太極拳など
1日30分程度の運動を週3-4回行うことを目標にしましょう。
5. 腸内環境の改善
腸内環境を整えることで、脳の健康も改善されます。
- プロバイオティクス食品の摂取:漬物、味噌など
- プレバイオティクス食品の摂取:玉ねぎ、にんにく、バナナなど
- 食物繊維の摂取:野菜、果物、全粒穀物など
ただし、SIBOと呼ばれる状態では、逆効果になることもありますので、ご注意ください。SIBOとブレインフォグにつきましては、こちらもご参照ください。
6. デトックス
体内に蓄積した毒素を排出することで、脳の機能を改善できる可能性があります。
- 十分な水分摂取
- サウナやお風呂でのデトックス
- クロレラやスピルリナなどのスーパーフードの摂取
7. ホルモンバランスの調整
特に更年期の女性は、ホルモンバランスの乱れがブレインフォグの原因となることがあります。
- 大豆製品の摂取:植物性エストロゲンの供給源
- 規則正しい生活リズムの維持
- ストレス管理
- 必要に応じてホルモン補充療法の検討(医師と相談の上)
8. 脳トレーニング
脳を積極的に使うことで、認知機能を維持・改善できます。
- パズルや脳トレゲームに挑戦する
- 新しい言語や楽器を学ぶ
- 読書を習慣化する
- 社会的な交流を増やす
分子栄養学に基づく食事アプローチ
ブレインフォグの改善には、分子栄養学的アプローチが効果的です。分子栄養学とは、栄養素が体内でどのように働くかを分子レベルで理解し、それに基づいて健康を改善する学問です。
1. 抗酸化物質の摂取
脳の機能低下の一因として、酸化ストレスが挙げられます。抗酸化物質を積極的に摂取することで、この酸化ストレスを軽減できます。
- ビタミンC:柑橘類、キウイ、パプリカなど
- ビタミンE:ナッツ類、種子、アボカドなど
- ポリフェノール:ベリー類、緑茶、ダークチョコレートなど
2. オメガ3脂肪酸の摂取
オメガ3脂肪酸、特にDHAとEPAは、脳の健康に非常に重要です。
- 魚油サプリメント
- 青魚(サバ、イワシ、サーモンなど)
- 亜麻仁油、チアシード
3. ビタミンB群の補給
ビタミンB群は神経伝達物質の合成に必要不可欠です。特にビタミンB12が不足すると、認知機能の低下が起こる可能性があります。
- ビタミンB12:肉類、魚介類、卵
- 葉酸:緑黄色野菜、豆類
- ビタミンB6:バナナ、アボカド、鶏肉
4. マグネシウムの摂取
マグネシウムは神経伝達を円滑にし、ストレス耐性を高める効果があります。
- ナッツ類(特にアーモンド)
- 緑黄色野菜
- 全粒穀物
5. 腸内環境を整える
腸内細菌叢の健康は、脳の健康と密接に関連しています。ただし、SIBOには注意してください。
- プロバイオティクス:キムチ、味噌など
- プレバイオティクス:玉ねぎ、ニンニク、アスパラガスなど
腸内環境に関しては、こちらの記事もご参照ください。
6. 血糖値の安定
急激な血糖値の変動は、脳機能に悪影響を与えます。
- 低GI食品の選択:全粒穀物、豆類、野菜など
- タンパク質と健康的な脂肪の摂取:肉、魚、ナッツ類、オリーブオイルなど
血糖値対策については、こちらもご参照ください。
セルフチェックテスト
ここで、あなたのブレインフォグの治療の必要性を簡単にチェックしてみましょう。以下の質問にすべて答えて、「結果を見る」ボタンを押してください。
このテストはあくまで自己診断の目安です。点数が高かった場合でも、必ずしもブレインフォグであるとは限りません。逆に、点数が低くても症状が気になる場合は、専門家に相談することをおすすめします。
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ブレインフォグに有効と考えられる治療
生活習慣の改善や栄養療法を含め、ブレインフォグの治療として行われているものを挙げます。
1. メチレンブルー点滴療法
メチレンブルー点滴療法は、脳の抗酸化、神経保護作用、ミトコンドリア機能改善などが注目され、特にブレインフォグに対して有用な方が多く、まず試してみてもいいかと思います。メチレンブルー点滴についてはこちらをご参照ください。
2. ホルモン補充療法
更年期障害によるブレインフォグの場合、ホルモン補充療法が効果的なことがあります。エストロゲンやプロゲステロンの補充により、認知機能の改善が期待できます。
3. 認知行動療法
ストレスや不安が原因の場合、認知行動療法が有効な場合があります。この療法では、ネガティブな思考パターンを認識し、より適応的な思考や行動に変えていく方法を学びます。
4. 薬物療法
うつ病や不安障害が背景にある場合、適切な薬物療法が必要になることがあります。抗うつ薬や抗不安薬などが処方される場合がありますが、これらは必ず精神科や心療内科の医師の指示のもとで服用してください。
5. 経頭蓋磁気刺激(TMS)療法
最近の研究では、TMSがブレインフォグの症状改善に効果があることが示唆されています。TMSは、頭皮上から磁気刺激を与えることで脳の特定の部位を刺激する治療法です。特に、うつ病に伴うブレインフォグに効果があるとされています。TMSは当院では行っていません。
6.上咽頭炎治療(EAT)
上咽頭という喉の奥にある場所に慢性的に炎症があると、慢性上咽頭炎という状態となり、ブレインフォグに深く関係します。慢性上咽頭炎をみてくれる耳鼻科を探してみましょう。当院においては、ブラインドで行っています。
7. 栄養療法
分子栄養学的アプローチに基づいた栄養療法については、当院で行っています。個々の患者さんの状態に合わせて、必要な栄養素を適切な量で補給し、その方にとってどこが原因でブレインフォグになっているのかを血液検査やバイオロジカル検査で調べ、治療していくというスタイルをとっています。多くは、低血糖やリーキーガット、腸カンジダ、重金属の蓄積が原因となっていることがあります。それらを検査で判断しながら、治療をすすめていきます。食事療法などで改善しない場合は、ご検討ください。
栄養療法での対処については、こちらの記事もご参照ください。
まとめ
ブレインフォグは、現代社会を生きる私たちにとって身近な問題です。特に40代、50代の女性は、ホルモンバランスの変化や様々なストレスにさらされやすく、ブレインフォグのリスクが高くなります。
しかし、適切な対策を講じることで、症状を改善し、クリアな思考を取り戻すことは可能です。生活習慣の見直し、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理などが重要です。
特に分子栄養学的アプローチは、ブレインフォグの改善に大きな可能性を秘めています。原因となっている場所をつきとめ、必要な栄養素を適切に摂取することで、脳の健康を維持・改善することができます。
もし、ブレインフォグの症状に悩んでいる方がいらっしゃいましたら、まずは上記のセルフチェックテストを試してみてください。そして、症状が深刻な場合や自己対策では改善が見られない場合は、ぜひ一度ご相談ください。適切な診断と治療により、あなたの人生の質を大きく向上させることができるかもしれません。
東京原宿クリニックでは、分子栄養学的アプローチを用いて、ブレインフォグを含む様々な健康問題に対応しています。個々の患者さんの状態に合わせたオーダーメイドの治療プランを提案し、皆様の健康をサポートいたします。
当院ではブレインフォグは、自由診療(栄養療法外来)で行っています。詳しくは、こちらをご参照ください。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。