分子栄養学

副腎疲労とトマトの正しい距離感:栄養・症状別の使い分けと受診の目安

東京原宿クリニック院長の篠原です。

「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるほど、トマトは栄養価が高く、健康の象徴として扱われることの多い野菜です。しかし、日々の診療、特に栄養療法や機能性医学の観点から患者さんと向き合っていると、「副腎疲労の症状があるのですが、トマトは食べても大丈夫ですか?」「トマトを食べるとかえって疲れる気がします」といったご質問をいただくことが少なくありません。

鮮やかな赤色で、私たちの食卓を彩るトマト。リコピンやビタミンCが豊富で、一見するとストレスや疲労の回復に役立ちそうです。しかし、その一方で、特定の体質や症状を持つ方にとっては、不調の引き金になる可能性も秘めています。

この記事では、いわゆる「副腎疲労」と呼ばれる慢性的なストレス症状群とトマトの関係について、栄養学的な「利点」と、機能性医学的な「欠点」の両面から解説します。

副腎疲労についての詳細はこちらの記事をご参照ください(副腎疲労とは?セルフチェックでわかる症状と治し方)。

もし、本気でこの副腎疲労という状態を理解し、根本的な改善を目指したいとお考えでしたら、当院の栄養療法外来をご検討ください。

トマトの性質:栄養と成分の全体像

まず、トマトがなぜ「健康によい」と言われるのか、その栄養学的な側面を見ていきましょう。トマトは、単なる水分補給以上の、多くの有益な化合物を含んでいます。

動画で解説

動画で概要を掴みたい方はこちらより御覧ください。

抗酸化の王様「リコピン」

トマトの最も有名な成分は、その鮮やかな赤色の色素成分である「リコピン」でしょう。リコピンはカロテノイドの一種で、非常に強力な抗酸化作用を持つことが知られています。

私たちの体は、ストレス、環境汚染、不適切な食事などによって「活性酸素」を産生します。これが過剰になると、細胞を傷つけ、老化や慢性炎症、さまざまな疾患の原因となります(=酸化ストレス)。

副腎疲労症状群の方は、慢性的なストレスにより、この酸化ストレスが非常に高い状態にあることが多いです。リコピンは、この活性酸素を消去する能力が非常に高く、体内の炎症を鎮め、細胞を保護する働きが期待されます。

興味深いことに、リコピンは生のトマトよりも、加熱調理されたトマト(トマトソース、トマトスープなど)の方が体に吸収されやすいという特徴があります。さらに、オリーブオイルなどの良質な脂質と一緒にとることで、その吸収率は飛躍的に高まります。

ストレス対抗の必須栄養素「ビタミンC」

副腎は、体内で最もビタミンCを貯蔵している臓器の一つです。なぜなら、ストレスに対抗するためのホルモン(コルチゾールやアドレナリンなど)を合成するプロセスで、ビタミンCが大量に必要とされるからです。

慢性的なストレスにさらされ続けると、副腎はビタミンCを急速に消耗していきます。これが枯渇すると、ホルモン産生がうまくいかなくなり、ストレス対応力が低下してしまいます。

トマトは、品種や熟度にもよりますが、100gあたり約15〜21mg程度のビタミンCを含んでいます。これは、日々のビタミンC補給源として非常に有用です。生のトマトサラダなどは、ビタミンCを効率よく摂取する良い方法と言えます。

心血管と電解質のバランサー「カリウム」

トマトはカリウムも豊富です。カリウムは、ナトリウム(塩分)とのバランスを取りながら、細胞の浸透圧を調整し、血圧を安定させ、神経伝達や筋肉の収縮をサポートする重要なミネラルです。

高血圧の予防や心血管系の保護という観点では、非常に有益な成分です。

ただし、このカリウムの豊富さが、後述するように特定の条件下では注意点となります。特に知っておくべきは、カリウムはトマトの加工品、特に濃縮されたもの(トマトペースト、トマトピュレ、トマトソース)に非常に多く含まれるという事実です。

参考までに、100gあたりのカリウム含有量の目安を見てみましょう(米国NIHのデータより)。

  • トマトペースト:約 1,014 mg
  • トマトピュレ:約 439 mg
  • トマトソース:約 297 mg
  • トマトジュース:約 217 mg

生のトマト(約200-300mg程度)と比較して、ペーストがいかに高カリウムであるかがわかります。

「ナス科=炎症」は本当か?

時折、「トマトはナス科の野菜だから、炎症を引き起こす」という情報を目にすることがあります。ナス科の野菜(ナス、ジャガイモ、ピーマン、唐辛子など)には、アルカロイドやレクチンといった成分が含まれており、これらが一部の感受性の高い人において腸の炎症や関節痛などを引き起こす可能性がある、という理論です。

これについては、現時点では「ナス科=炎症性」と断定できるような、質の高いヒトでの臨床研究エビデンスは乏しいのが実情です。専門機関も、一般の人にとってはナス科野菜を避けることのデメリット(栄養素の欠如)の方が大きい可能性が高い、と解説しています。

ただし、これは「すべての人に安全」という意味ではありません。後述するように、特定の過敏症を持つ方にとっては、ナス科野菜が不調の原因となるケースは臨床上、確かに存在します。

副腎疲労に対してのトマトの利点

では、いわゆる「副腎疲労」の症状群に悩む方にとって、トマトはどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

利点1:副腎の「燃料」となるビタミンCの補給

前述の通り、副腎はストレスホルモン合成のためにビタミンCを大量に消費します。慢性的なストレス状態にある方は、ビタミンCの需要が著しく亢進しており、欠乏傾向にあることが少なくありません。

ビタミンCが不足すると、コルチゾールの産生が滞るだけでなく、ストレス応答が過剰になり、酸化ストレスがさらに悪化するという悪循環に陥ります。

トマト(特に生のトマト)からビタミンCを補給することは、副腎の機能を直接的にサポートし、ストレスホルモンのバランスを整え、疲労感や炎症を軽減する上でプラスに働くと考えられます。

利点2:抗酸化作用(リコピン等)による炎症・酸化ストレスの鎮静

副腎疲労症状群の方は、コルチゾールの分泌リズムが乱れたり、総量が低下したりすることで、全身の「火消し役」が不足し、慢性炎症状態に陥りやすいとされます。

体内で炎症が続くと、それがさらなるストレスとなって副腎に負担をかけ、疲労を増悪させます。

トマトに含まれるリコピンや、その他のβカロテン、フラボノイドといった多様な抗酸化物質は、この慢性炎症や酸化ストレスを強力に抑制する働きがあります。

特に、オリーブオイルと共に加熱調理されたトマト(ラタトゥイユ、トマト煮込み、パスタソースなど)は、リコピンの吸収率が最大化されるため、抗酸化・抗炎症の恩恵を最も受けやすい食べ方と言えるでしょう。これは、ストレス下の身体を守り、副腎の負担を軽減する助けとなり得ます。

利点3:総合的な栄養素による代謝サポート

トマトは、ビタミンCやリコピン、カリウムだけでなく、マグネシウム、鉄、葉酸など、全身のエネルギー産生や代謝をサポートするビタミン・ミネラルもバランスよく含んでいます。

副腎疲労の回復には、副腎だけをターゲットにするのではなく、全身の細胞(特にエネルギー工場であるミトコンドリア)が正常に機能するための「栄養基盤」を整えることが不可欠です。

その意味で、トマトは総合的な栄養価が高く、回復期の食事において優れた食材の一つとなり得ます。

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副腎疲労に対してのトマトの欠点

ここからが、特に注意深く読んでいただきたいセクションです。トマトが持つこれらの素晴らしい利点にもかかわらず、なぜ一部の副腎疲労症状の方には「控えた方がよい」とお伝えすることがあるのでしょうか。

欠点1:酸性度による胃腸症状(GERD・胃炎)

トマトやトマト製品は、その爽やかな酸味(クエン酸やリンゴ酸など)が特徴ですが、酸性度が高い(pHが低い)食品です。

もし、あなたが日常的に「胸やけ」「胃もたれ」「胃酸が上がってくる感じ(逆流性食道炎:GERD)」に悩まされている場合、トマトはそれらの症状を悪化させる直接的なトリガーとなり得ます。

副腎疲労の方は、自律神経のバランスが乱れ(交感神経優位)、胃酸のコントロールがうまくいっていなかったり、胃の蠕動運動が低下していたりすることが多く、GERDや胃炎を併発しているケースが少なくありません。

特に、濃縮されたトマト製品(ケチャップ、トマトソース、ペースト)や、生の酸味が強いトマト、就寝前の摂取は、胃粘膜を刺激し、逆流を引き起こしやすいため、厳重な注意が必要です。

欠点2:ヒスタミン不耐症・MCASとの関連

これは機能性医学において非常に重要なポイントです。トマトは、「ヒスタミンを比較的多く含む食品」であり、かつ「ヒスタミン放出(liberator)を促す可能性がある食品」として知られています。

ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症に関わる化学伝達物質です。通常、体内にはヒスタミンを分解する酵素(DAOやHNMT)があり、食品から摂取したり体内で放出されたりしたヒスタミンを速やかに処理しています。

しかし、何らかの理由(腸内環境の悪化、遺伝的体質、栄養欠損など)でこの分解酵素の働きが弱い、あるいは処理能力を超えるヒスタミンが体内に入ってくると、「ヒスタミン不耐症」と呼ばれる状態になります。

ヒスタミン不耐症につきましてはこちらの記事もご参照ください(ヒスタミン不耐症とは?蕁麻疹・鼻炎・疲労を招く“隠れヒスタミン中毒”のセルフチェックと低ヒスタミン食リスト

ヒスタミン不耐症の症状は多彩ですが、以下のようなものが代表的です。

  • 全身・神経系: 疲労感、頭痛、めまい、不安感、動悸、顔の紅潮
  • 皮膚: 蕁麻疹、かゆみ、発疹
  • 消化器: 腹痛、下痢、膨満感、吐き気、逆流
  • 呼吸器: 鼻水、鼻づまり、くしゃみ

ここで注目すべきは、副腎から分泌されるコルチゾールには、ヒスタミンの作用を抑え、炎症を鎮める強力な働きがあるという点です。

つまり、副腎疲労症状(コルチゾール低下・リズム異常)がある方は、ただでさえヒスタミンを制御する能力が低下している可能性があります。そこに、トマトのようなヒスタミンリッチな食品が入ってくると、体内のヒスタミンレベルが急上昇し、上記のようないわゆる「副腎疲労」の症状(特に疲労感、頭痛、ブレインフォグ、不安感)を悪化させてしまう危険性があるのです。

「トマトを食べると、なぜか疲れる」「動悸がする」と感じる方は、このヒスタミン不耐症を疑う必要があります。

欠点3:サリチル酸不耐(アスピリン過敏)

トマトは、サリチル酸を含む食品の一つとしても知られています。サリチル酸は、アスピリン(アセチルサリチル酸)の有効成分であり、鎮痛・解熱・抗炎症作用がありますが、一部の人はこのサリチル酸に対して過敏症を持っています。

アスピリン過敏症や、特定の喘息(AERD)をお持ちの方は、トマトを摂取することで症状(喘息発作、鼻茸、皮膚症状など)が誘発される可能性があります。

このサリチル酸も、加工・濃縮されたトマト製品(ケチャップ、ソース、ペースト)で濃度が上がる傾向が示されています。

欠点4:ナス科野菜への過敏症(レクチン・アルカロイド)

冒頭で「ナス科=炎症のエビデンスは乏しい」と述べましたが、これは一般論です。臨床現場では、特に自己免疫疾患(関節リウマチ、橋本病など)をお持ちの方や、腸粘膜のバリア機能が低下している「リーキーガット症候群」の方において、ナス科野菜が不調の原因となっているケースが存在します。

ナス科に含まれるグリコアルカロイド(トマトではトマチン)やレクチンが、腸粘膜を刺激し、リーキーガットを助長したり、免疫系を過剰に刺激したりする可能性が理論上考えられています。リーキーガット症候群につきましては、こちらの記事をご参照ください(リーキーガット(腸漏れ)症候群とは?症状・原因から検査・治療まで徹底解説)。

副腎疲労の方は、腸内環境が悪化し、リーキーガットを併発していることが非常に多いため、ナス科野菜への感受性が高まっている可能性があります。慢性的な関節痛や原因不明の皮膚炎、疲労感に悩む方が、試験的にナス科野菜(トマト含む)を除去する食事(エリミネーションダイエット)を行ったところ、症状が劇的に改善する例もあります。

欠点5:高カリウム血症のリスク(特に「副腎不全」)

これは非常に重要な鑑別点です。

いわゆる「副腎疲労」ではなく、医学的に診断された「副腎不全(アジソン病など)」の場合、副腎からアルドステロンというホルモンの分泌が低下します。アルドステロンは体内にナトリウムを保持し、カリウムを排泄する働きがあるため、これが低下すると「高カリウム血症」(血液中のカリウム濃度が異常に高くなる状態)を引き起こします。高カリウム血症は、不整脈や筋力低下などを引き起こす危険な状態です。

この状態の方(あるいは腎機能が低下している方)が、カリウムを非常に多く含むトマトの濃縮品(ペースト、ピュレ、ジュース)を大量に摂取すると、高カリウム血症を助長し、非常に危険です。

「副腎疲労」の段階でも、アルドステロンの分泌が低下傾向になり、ナトリウムが失われやすく、相対的にカリウムが過剰傾向(高カリウム傾向)になることがあります。これが疲労感や低血圧の一因となることもあり、そのような場合にはカリウム豊富な食品の「過剰摂取」は望ましくありません。

あなたにとってトマトがあっているかどうかのチェックリスト

では、ご自身がトマトを安全に楽しめるタイプなのか、それとも控えるべきタイプなのか、どう判断すればよいでしょうか。以下のチェックリストで確認してみてください。

□ トマトを控える・食べ方を工夫すべきかのチェックリスト

以下の項目に当てはまる数が多いほど、トマト(特に生や濃縮品)の摂取に注意が必要か、一時的に中断して体調の変化を見ることを推奨します。

【胃腸症状】 日常的に、胸やけ、胃もたれ、胃酸の逆流感がある (GERD疑い)

【ヒスタミン症状①】 トマト(特に完熟品やソース)を食べた後、30分〜数時間以内に以下の症状が出る。

  • 顔が火照る、紅潮する
  • 頭痛やめまいがする
  • 動悸がする、心臓がドキドキする
  • 蕁麻疹が出る、皮膚がかゆくなる

【ヒスタミン症状②】 以下の症状が慢性的にあり、トマトを食べると悪化する気がする。

  • 原因不明の慢性的な疲労感、倦怠感
  • 不安感、イライラ、気分の落ち込み
  • 鼻水、鼻づまり、くしゃみ(アレルギー様症状)

【サリチル酸/ナス科疑い】

  • アスピリンなどの鎮痛剤で喘息や蕁麻疹が出たことがある (サリチル酸不耐疑い)
  • ナス、ピーマン、ジャガイモなど、他のナス科野菜を食べても同様の不調(胃腸症状、関節痛、疲労感など)を感じる (ナス科過敏疑い)
  • 慢性的な関節痛や筋肉痛、原因不明の皮膚炎がある

【医学的診断】

  • 医師から「副腎不全(アジソン病)」や「腎機能低下」と診断されている
  • 血液検査で「高カリウム血症」を指摘されたことがある

食べ方による影響と推奨

チェックリストに当てはまらなかった方は、トマトの恩恵を積極的に受けることができます。当てはまった方も、食べ方や種類を工夫することで、安全に摂取できる可能性があります。

食べ方メリットデメリット・注意点副腎疲労症状への推奨度
(サラダなど)◎ ビタミンC、酵素の摂取△ 酸味が強く胃腸を刺激しやすい
△ 熟度によりヒスタミン含有量が増える
△〜○
(胃腸症状、ヒスタミン不耐がなければOK。新鮮なものを少量から)
加熱 (+オリーブ油)◎ リコピン吸収率が最大
◎ 抗酸化作用が高い
○ 酸味が和らぐ
△ ビタミンCは一部失われる
(最も推奨される食べ方。胃腸への負担も少ない)
加工品 (ペースト、缶詰、ケチャップ、ジュース)○ リコピン、カリウムが濃縮
○ 利便性が高い
× ヒスタミン、サリチル酸が高濃度
× カリウムが極めて高い
× ケチャップ等は糖分・添加物が多い
×〜△
(チェックリスト該当者は原則避ける。該当しなくても過剰摂取は注意)

結論として、ご自身の症状に不安がない場合の最適解は「トマトをオリーブオイルなどで加熱調理して食べる」ことです。

もし不調を感じる場合は、まず「加工品」と「生のトマト」を2〜4週間ほど完全に除去してみてください。それで体調(特に疲労感、頭痛、胃腸症状)が改善するようであれば、トマトがあなたの不調の一因であった可能性が高いと言えます。

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FAQ(よくある質問)

最後に、患者さんからよくいただく質問についてお答えします。

Q1.「副腎疲労」と言われました。トマトは完全にやめるべきですか?

A1. まず、その「副腎疲労」と呼ばれる症状が、本当に副腎だけの問題なのか、他に原因(睡眠不足、貧血、甲状腺機能低下、腸内環境、あるいは「副腎不全」など)が隠れていないか、医療機関で鑑別診断を受けることが最優先です。

その上で、上記チェックリストに当てはまらなければ、トマトの利点(ビタミンC、リコピン)はむしろ回復の助けになる可能性が高いです。「加熱+オリーブ油」での摂取を推奨します。

もしチェックリストに複数当てはまる場合は、トマトが炎症やヒスタミン負荷の原因となり、回復を妨げている可能性があります。一度、試験的に2〜4週間除去し、体調の変化を観察することをお勧めします。

Q2. トマトがダメな場合、リコピンやビタミンCはどう摂ればいいですか?

A2. 代替食品はあります。

  • リコピン: スイカ、柿、ピンクグレープフルーツ、グアバなど。(ただしスイカや果物も糖分やヒスタミンの問題がゼロではありません)
  • ビタミンC: パプリカ(赤・黄)、ブロッコリー、キウイ、芽キャベツ、柑橘類など。(ただし、パプリカは同じナス科、柑橘類もヒスタミン放出や酸の問題があるため、個別に相性を見る必要があります。ビタミンC補給としてはパプリカやブロッコリーが比較的安全パイとなることが多いです。)

Q3. トマトジュースでカリウムを摂るのは良いことですか?

A3. 高血圧予防など、一般的な健康な方にとっては良い面もあります。しかし、「副腎疲労」症状があり、アルドステロン低下(高K傾向)が疑われる場合や、医師から腎機能低下を指摘されている場合は、高カリウム血症のリスクがあるため、濃縮されたトマトジュースの常用は推奨できません。

また、市販のトマトジュースは食塩や糖分が添加されているものも多いため、成分表示をよく確認してください。

Q4. トマトを食べると疲れる気がします。なぜですか?

A4. 最も疑わしいのは「ヒスタミン不耐症」です(欠点2参照)。あなたの体内でヒスタミンを分解する能力が低下しているところに、トマト(特に完熟品や加工品)によってヒスタミンが供給され、過剰状態になっている可能性があります。

ヒスタミン過剰の代表的な症状の一つが「疲労感」です。その他、頭痛、動悸、不安感、皮膚のかゆみなどが同時に出ていないか確認してみてください。

Q5. どんな症状があれば病院に行くべきですか?

A5. 以下の症状がある場合は、「副腎疲労」という言葉で自己判断せず、必ず医療機関(内分泌内科、またはかかりつけ医)を受診してください。

  • 慢性的な疲労が日常生活に著しい支障をきたしている
  • 食欲不振、意図しない体重減少
  • 立ちくらみ、めまい、持続する低血圧
  • 皮膚や歯茎にシミのような色素沈着が出てきた
  • 原因不明の吐き気、嘔吐、腹痛
  • 異常なまでに塩辛いものが欲しくなる(塩分渇望)

これらは、緊急の治療が必要な「副腎不全(アジソン病)」の兆候である可能性があります。

また、胸やけや胃痛が続く場合は消化器内科、アレルギー症状が強く出る場合はアレルギー科の受診もご検討ください。

結論:トマトとの「正しい距離感」を見極める

トマトは、多くの人にとって、抗酸化物質やビタミンCの優れた供給源であり、健康をサポートしてくれる素晴らしい野菜です。

しかし、いわゆる「副腎疲労」と呼ばれる慢性的な不調を抱えている方の中には、その背景に「胃酸逆流(GERD)」「ヒスタミン不耐症」「ナス科過敏症」などが隠れていることがあり、そのような方にとっては、トマト(特に加工品や生)が症状を悪化させる「火種」となり得ます。

大切なのは、「副腎疲労に良い・悪い」と一律に決めることではなく、ご自身の「今」の体の状態を正しく観察することです。

  • 胃腸は荒れていないか?
  • ヒスタミン過剰のサイン(頭痛、動悸、疲労感)はないか?
  • 他のナス科でも不調は出ないか?

これらの問いかけを通じて、ご自身にとってのトマトとの「正しい距離感」を測ってみてください。

そして何より、慢性的な疲労に悩まされている方は、それを「副腎疲労」という言葉だけで片付けず、適切な医療機関で根本原因を検索することが、回復への最も確実な第一歩となります。

この記事が、あなたの健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

オンライン診療対象地域

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