表参道・原宿の東京原宿クリニック院長の篠原です。
近年、不妊に悩むカップルが増加しており、その対策として食事や「妊活サプリ」が注目を集めています。しかし、ただやみくもにサプリメントを摂取するだけでは、十分な効果が得られない可能性があります。今回は、不妊の原因と対策について、西洋医学と分子栄養学、そして機能性医学の観点から解説していきます。
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Contents
なぜ今、不妊が増えているのか?
不妊の増加には、様々な社会的背景や生活習慣の変化が関係しています。晩婚化による高齢出産の増加は、生物学的な妊娠のしやすさに大きく影響を与えています。特に女性の場合、35歳を過ぎると卵子の質や量が急激に低下することが知られています。
現代社会特有のストレスや食生活の乱れも大きな要因です。加工食品の増加や栄養バランスの偏り、運動不足、睡眠不足など、私たちの生活習慣は妊娠のしやすさに大きく影響を与えています。さらに、環境ホルモンや化学物質への曝露も、生殖機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。特に、プラスチック製品に含まれるビスフェノールAや、農薬などの環境化学物質は、ホルモンバランスを乱す可能性があります。

「妊活サプリ」が注目される理由
このような背景から、妊活サプリメントが注目を集めています。葉酸やビタミンD、鉄分など、妊娠に必要な栄養素を効率的に補給できることが大きな魅力です。また、サプリメントを取り入れることで、自身の健康や生活習慣を見直すきっかけにもなります。
しかし、サプリメントの選択には慎重な判断が必要です。栄養素の種類や量、品質、安全性など、様々な要因を考慮する必要があります。また、個人の状態に応じた適切な選択が重要で、医師や専門家に相談することをお勧めします。
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西洋医学から見た不妊症の基礎知識
まずは、お近くの産婦人科にて検査することが推奨されます。まずは、西洋医学で検査を行うことが大切と考えます。以下は、西洋医学で一般的に行われることを解説します。それでも改善しない場合は、食事療法やサプリメント、腸内環境改善などの検査も考慮しましょう。
不妊症の定義と検査
不妊症は、避妊をせずに1年以上定期的な性交渉を持っても妊娠しない状態を指します。女性の年齢が35歳以上の場合は、6ヶ月経過しても妊娠しない場合に不妊検査を開始することが推奨されています。これは、高齢になるほど妊娠率が低下し、流産のリスクが高まるためです。
不妊の原因を特定するためには、まず基本的な検査を行います。女性の場合、基礎体温測定は最も基本的な検査方法です。基礎体温を継続的に測定することで、排卵の有無や黄体機能を推測することができます。また、経腟超音波検査では、卵巣の状態や卵胞の発育状況、子宮の状態を確認することができます。
ホルモン検査も重要です。卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(E2)、プロゲステロン、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどを測定することで、内分泌機能の異常を発見することができます。特に、FSHの値は卵巣予備能を示す重要な指標となります。
卵管造影検査は、卵管の通過性を確認する検査です。造影剤を子宮腔内に注入し、X線撮影を行うことで、卵管の形状や通過性を評価します。また、子宮鏡検査では、子宮内腔の状態を直接観察することができ、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫などの診断に有用です。
男性の場合、精液検査が基本となります。精子の数、運動率、形態などを詳しく調べることで、男性不妊の原因を特定することができます。必要に応じて、内分泌検査や染色体検査なども行います。

女性側の主な原因と対策
女性の不妊の原因は多岐にわたります。排卵因子として最も多いのは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。PCOSでは、複数の小さな卵胞が卵巣に存在し、正常な排卵が妨げられます。また、ホルモンバランスの乱れによる無排卵や黄体機能不全も、不妊の原因となります。
卵管因子としては、クラミジア感染症などの性感染症による卵管の閉塞や癒着が代表的です。また、子宮内膜症による卵管周囲の癒着も、卵子の輸送を妨げる原因となります。
子宮因子としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどが挙げられます。特に子宮内膜症は、骨盤内の慢性炎症を引き起こし、卵子の質や着床環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
加齢による卵子の質の低下も重要な要因です。女性の卵子は胎児期にすべて作られており、年齢とともに質と量が低下していきます。特に35歳以降は、染色体異常のリスクが高まり、妊娠率の低下や流産率の上昇につながります。

男性側の主な原因と対策
男性不妊の主な原因は、造精機能障害です。精子の数が少ない乏精子症や、精子が全くない無精子症などがあります。これらの原因としては、精索静脈瘤、染色体異常、内分泌異常などが考えられます。
精路通過障害は、精管の閉塞や先天的な欠損により、精子が射出されない状態を指します。また、性機能障害として、勃起障害や射精障害なども不妊の原因となります。
男性不妊の治療は、原因に応じて選択します。精索静脈瘤に対しては手術療法が有効です。また、ホルモン療法や抗酸化療法なども、精子の質を改善する可能性があります。
一般的な不妊治療
不妊治療は、原因や状況に応じて段階的に行います。最も基本的な治療は、タイミング法です。基礎体温や超音波検査などで排卵日を予測し、その時期に性交渉を持つように指導します。
排卵誘発治療は、排卵障害のある方に対して行います。クロミフェンやゴナドトロピン製剤などの薬剤を用いて、排卵を促します。
人工授精は、洗浄・調整した精子を子宮内に注入する治療法です。タイミング法で妊娠に至らない場合や、軽度の男性因子がある場合に選択されます。
体外受精は、より高度な治療法です。採取した卵子と精子を体外で受精させ、できた受精卵(胚)を子宮に移植します。重度の卵管因子や男性因子、原因不明の不妊などに有効です。
最新の技術として、着床前遺伝子検査(PGT-A)があります。胚の染色体数を調べることで、より妊娠率の高い胚を選択することができます。

このような西洋医学の検査や対処によっても改善しない場合、分子栄養学や機能性医学の考えを用いることで改善できる可能性があります。
分子栄養学からみた不妊対策
分子栄養学は、栄養素が細胞レベルでどのように働くかを研究する学問です。不妊治療においても、この視点は非常に重要です。
葉酸とビタミンB群の重要性
葉酸は、DNAの合成や修復に重要な役割を果たします。特に、妊娠初期の神経管閉鎖障害を予防する効果が知られています。葉酸には様々な種類があり、その違いを理解することが重要です。
一般的なサプリメントに含まれるモノグルタミン酸型葉酸は、体内で活性型に変換される必要があります。一方、メチル化葉酸は体内で直接利用できる形態です。特に、MTHFR遺伝子多型を持つ方では、メチル化葉酸の摂取が推奨されます。MTHFR遺伝子検査は、アマゾンなどでも利用することができます。
その他のビタミンB群も重要です。ビタミンB6はホルモンバランスの調整に、ビタミンB12は卵子の質の維持に、ビタミンB2はエネルギー代謝の促進に関与します。これらのビタミンは相互に作用し合い、より効果的に機能します。
ビタミンDの多面的な役割
ビタミンDは、生殖機能に多面的な役割を果たします。卵巣でのホルモン産生を助け、着床率を向上させる効果があります。また、子宮内膜の健康維持や免疫機能の調整にも関与します。
研究では、ビタミンD値が適切なレベルにある女性は、体外受精での成功率が高いことが示されています(Garbedianら, 2013)。また、男性の精子の質にも影響を与えることが分かっています(Jensenら、2014)。日光浴だけでなく、サプリメントでの補給も検討する価値があります。

酸化ストレスと抗酸化物質
酸化ストレスは、卵子や精子の質に大きな影響を与えます。CoQ10は、ミトコンドリアのエネルギー産生を助け、卵子の質を改善する効果があります(Brownら、2023)。特に、加齢による卵子の質の低下に対して有効とされています。
ビタミンCは、コラーゲン形成を促進し、卵巣や子宮の健康を維持します。また、ビタミンEは細胞膜を保護し、精子や卵子の酸化を防止します。セレンは甲状腺ホルモンの代謝を助け、生殖機能を支援します。
必須脂肪酸と生殖機能
オメガ3脂肪酸は、炎症の抑制やホルモンバランスの調整に重要な役割を果たします。特に、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、妊娠率の向上に寄与する可能性があります(Susanne, 2007)。また、精子の運動性を改善する効果も報告されています(Hosseini, 2019)。
重要なミネラル類
鉄分は、貧血の予防と酸素供給の改善に重要です。特に、月経による出血で鉄分が不足しやすい女性では、積極的な補給が必要となることがあります。
亜鉛は、精子形成と卵子の成熟に必要不可欠なミネラルです。マグネシウムは、ホルモンバランスの調整と子宮筋の健康維持に関与します。セレンは、抗酸化作用に加えて、甲状腺機能の維持にも重要です。
十分なカロリー
そもそも、食事で十分なカロリーが摂取できていなければ、その結果、低血糖になったり、低たんぱくになったりしてしまいます。まずは自分の必要なカロリーを計算し、1日の食事が到達しているかを計算することも大事です。自分の必要なカロリーの計算につきましては、こちらもご参照ください。

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機能性医学からみた不妊対策
機能性医学では、体全体のバランスを重視し、不妊の根本的な原因に着目します。特に、腸内環境、慢性炎症、ミトコンドリア機能などに注目が集まっています。
腸内環境と生殖機能の密接な関係
腸内環境は、ホルモンバランスや免疫機能に大きな影響を与えます。腸内細菌は、エストロゲンの代謝や性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の産生に関与します。また、甲状腺ホルモンの活性化にも重要な役割を果たします。
免疫機能との関連も重要です。腸内細菌は、自己免疫反応の制御や炎症性サイトカインの産生に関与します。また、粘膜免疫の維持にも重要です。さらに、ビタミンの生成と吸収、ミネラルの吸収率、短鎖脂肪酸の産生など、栄養素の吸収にも深く関与しています。
腸カンジダと不妊の関係
腸カンジダは、腸内に常在するカンジダ菌が過剰に増殖した状態を指します。この状態は、不妊に様々な影響を及ぼす可能性があります(Burreroら, 2004年)。
まず、カンジダ菌の過剰増殖は腸内環境を大きく乱します。これにより、栄養素の吸収が妨げられ、ホルモンバランスにも悪影響が出る可能性があります。特に、エストロゲンの代謝に重要な腸内細菌叢が乱れることで、生殖機能に支障をきたす可能性があります。
また、腸カンジダは全身の炎症を引き起こす可能性があります。慢性的な炎症状態は、卵巣機能や子宮内膜の状態に悪影響を及ぼし、着床障害や卵子の質の低下につながる可能性があります。
さらに、カンジダ菌が産生する毒素は、ミトコンドリアの機能を阻害することが知られています。ミトコンドリアは卵子のエネルギー産生に重要な役割を果たすため、その機能低下は不妊のリスクを高める可能性があります。
腸カンジダ対策としては、以下のようなアプローチが有効です。
- 糖質の過剰摂取を控える:カンジダ菌のエサとなる糖質を制限することで、増殖を抑制できます。
- 発酵食品の摂取:乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給し、腸内環境を改善します。
- 抗酸化物質の摂取:カンジダ菌による酸化ストレスから体を守ります。
- ストレス管理:過度なストレスは免疫力を低下させ、カンジダ菌の増殖を促進する可能性があります。
腸カンジダにつきましては、こちらもご参照ください。
腸カンジダを含めた、腸内環境改善につきましては、こちらもご参照ください。

慢性炎症と酸化ストレスの影響
慢性的な炎症や酸化ストレスは、生殖機能に様々な悪影響を及ぼします。卵子においては、ミトコンドリア機能の低下やDNA損傷の増加、細胞膜の酸化などが起こる可能性があります。
子宮内膜に関しては、着床環境の悪化や血流の低下、組織の線維化などが問題となります。また、精子においては、DNA断片化の増加や運動性の低下、形態異常の増加などが報告されています。
慢性炎症の場として多いのは、腸内環境です。腸内環境の改善は前項を参考にしてください。酸化ストレスがどの程度かかっているかを判断するためには、血液検査や尿中有機酸検査が有効です。もし、酸化ストレスが強い場合は、ビタミンCやビタミンEの使用を考えましょう。
ミトコンドリア機能と生殖能力
ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場と呼ばれ、生殖能力に重要な役割を果たします。特に卵子の質との関連が深く、ATP産生能力や細胞分裂時のエネルギー供給、卵子成熟過程のサポートなどに関与します。
また、精子の運動性にもミトコンドリア機能は重要です。エネルギー産生効率や運動持続性、受精能力の維持などに影響を与えます。
当院では、妊娠とミトコンドリア機能の関係を重視しています。ミトコンドリア機能を見る検査には、尿中有機酸検査などがあります。ミトコンドリアの機能が低下しているようであれば、タンパク質やアミノ酸の状態を改善したり、ミトコンドリアを動かすための、CoQ10や鉄、マグネシウムなどを見直すことが大事になります。
ホルモンバランスの調整
機能性医学では、副腎機能のサポートや甲状腺機能の最適化、インスリン感受性の改善などを通じて、ホルモンバランスの調整を図ります。
副腎機能に関しては、ストレス管理やコルチゾールバランスの調整、DHEA産生の適正化などが重要です。甲状腺機能については、ヨウ素バランスの調整やT4からT3への変換効率の改善、自己免疫反応の制御などに焦点を当てます。
副腎疲労と呼ばれる、副腎が疲労した状態であると、妊娠がしにくくなるため、その改善も大事になります。副腎疲労につきましては、こちらもご参照ください。
インスリン感受性の改善は、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の管理に重要です。血糖値の安定化や代謝機能の向上を通じて、排卵機能の改善を目指します。
血糖値の安定化と低血糖対策
血糖値の乱れは、ホルモンバランスに大きな影響を与えます。特に、低血糖状態は副腎に負担をかけ、生殖機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
低血糖が起こると、体はストレスホルモンであるコルチゾールを分泌します。コルチゾールの過剰分泌は、生殖ホルモンのバランスを乱し、排卵障害や黄体機能不全などを引き起こす可能性があります。
低血糖を予防するためには、以下のような対策が重要です。
- 食事の改善:たんぱく質、健康的な脂質、複合炭水化物をバランスよく摂取します。精製糖質は避け、食物繊維を十分に含む食材を選びます。
- 食事のタイミング:長時間の絶食を避け、3-4時間おきに適切な量の食事を摂ります。
- 血糖値を安定させるサプリメント:クロムや亜鉛などが有効な場合があります。
血糖値の安定化につきましては、こちらもご参照ください。

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環境毒素とデトックス
現代社会では、私たちは知らず知らずのうちに多くの環境毒素に曝露されています。これらの毒素は、内分泌かく乱物質として生殖機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
主な環境毒素としては、プラスチック製品から溶出するビスフェノールA、農薬残留物、重金属類、化学物質などが挙げられます。これらの物質は、ホルモンバランスを乱したり、卵子や精子の質を低下させたりする可能性があります。
デトックスを促進するためには、まず体内への毒素の摂取を最小限に抑えることが重要です。有機食品を選んだり、プラスチック容器の使用を控えたりするなどの工夫が有効です。
また、肝臓や腎臓のデトックス機能をサポートすることも重要です。具体的には以下のようなアプローチが有効です。
- グルタチオンの産生を促進する食品やサプリメントの摂取:ビタミンC、NAC(N-アセチルシステイン)などが有効です。
- 水分の十分な摂取:毒素の排出を促進します。お茶やハーブティーなども利用できます。
- 食物繊維の摂取:毒素を吸着し、腸からの排出を促進します。
- 発汗を促す運動:皮膚からの毒素排出を促進します。
デトックスに関しましては、こちらもご参照ください。

まとめ
不妊治療は、西洋医学的なアプローチに加えて、分子栄養学や機能性医学の視点を取り入れることで、より効果的な結果が期待できます。特に、腸内環境の改善や酸化ストレスの軽減、ミトコンドリア機能の向上などは、重要な要素となります。
西洋医学においてもなかなか改善されない場合は、分子栄養学や機能性医学的なアプローチも検討してもいいかもしれません。
当院では、これらの要素を検査で把握し、総合的に評価し、個々の患者さんに最適な治療プログラムを提供しています。詳細な栄養評価や腸内環境検査、ホルモンバランスの精密検査などを通じて、不妊の根本的な原因に対処し、妊娠率の向上を目指しています。当院においては、これらの検査や治療は、栄養外来で行っています。ご検討いただければと思います。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。