表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。
現代社会において、自律神経失調症に悩む方が増えています。ストレス社会、不規則な生活習慣、そして不適切な食生活が、私たちの自律神経を脅かしています。
本記事では、自律神経失調症とは何か、その症状や診断方法、そして最新の分子栄養学的アプローチによる整え方までを解説していきます。
Contents
自律神経失調症とは
自律神経失調症は、自律神経系のバランスが崩れることで引き起こされる様々な症状の総称です。自律神経系は、私たちの体内で無意識のうちに様々な機能を調整しています。
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自律神経系の仕組み
自律神経系は、主に以下の2つの神経系から構成されています。
- 交感神経系:活動時に優位になり、心拍数の上昇や血圧の上昇などを促します。
- 副交感神経系:休息時に優位になり、心拍数の低下や消化機能の促進などを行います。
健康な状態では、これらの神経系が状況に応じてバランスよく働きます。しかし、様々な要因によりこのバランスが崩れると、自律神経失調症の症状が現れてしまいます。
自律神経失調症の原因
自律神経失調症の主な原因には以下のようなものがあります。現代社会はこのような原因が増えているので注意が必要です。
- 慢性的なストレス
- 不規則な生活習慣
- 睡眠不足
- 偏った食生活
- ホルモンバランスの乱れ
- 環境の急激な変化
自律神経失調症の症状
自律神経失調症の症状は多岐にわたり、個人差も大きいのが特徴です。以下に主な症状をリストアップします。
身体的症状
- めまい・立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 胃腸の不調(胃痛、下痢、便秘など)
- 頭痛・肩こり
- 冷え症・のぼせ
- 疲労感・倦怠感
- 睡眠障害(不眠、寝つきが悪い、熟睡感がないなど)
- 食欲不振や過食
- 皮膚トラブル(蕁麻疹、アトピーの悪化など)
精神的症状
- 不安感・焦燥感
- イライラ・落ち着きのなさ
- 集中力の低下
- うつ症状
- パニック発作
- 記憶力の低下
これらの症状が複数組み合わさって現れることが多く、症状の程度や組み合わせは個人によって異なります。
自律神経失調症の診断
自律神経失調症は、正式な疾患名ではないため、統一された診断基準が存在しません。従いまして、症状の聞き取りと身体診察が基本となります。しかし、症状が多岐にわたり、他の疾患と重なっていることも多いので、診断には慎重を要します。
自律神経失調症のセルフチェックテスト
ご自身の症状が自律神経失調症の症状にあてはまるかどうか、チェックしてみましょう。ただしこのテストはあくまでも可能性ですので、自己診断はしないようにしてください。
自律神経失調症の基本的な整え方
自律神経失調症の改善には、生活習慣の見直しが基本となります。以下に一般的な整え方をご紹介します。
規則正しい生活リズムの確立
- 一定の時間に起床・就寝する
- 食事の時間を規則的にする
- 休息と活動のバランスを取る
ストレス管理
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)を実践する
- 趣味や楽しみの時間を持つ
- 適度な運動を行う(ウォーキング、ジョギングなど)
睡眠の質の改善
- 就寝前のリラックスタイムを設ける
- 寝室の環境を整える(温度、湿度、光、音など)
- カフェインやアルコールの摂取を控える
適度な運動
- 有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を定期的に行う
- ストレッチやヨガで体をリラックスさせる
- 過度な運動は避け、自分のペースで続けられる運動を選ぶ
分子栄養学的アプローチによる自律神経失調症の整え方
ここからは、分子栄養学的アプローチによる自律神経失調症の整え方についてお話しします。分子栄養学は、体内の分子レベルでの栄養状態を最適化することで、様々な健康問題の改善を目指す学問です。特に、副腎疲労との関連はとても重要になります。
副腎疲労と自律神経失調症との関係
自律神経失調症を理解する上で、副腎疲労との関連性を知ることは非常に重要です。副腎疲労と自律神経失調症は密接に関係しており、互いに影響を及ぼし合う可能性があります。
副腎疲労とは
副腎疲労は、長期的なストレスにさらされることで副腎の機能が低下し、適切なホルモン分泌ができなくなった状態を指します。副腎は、ストレスに対応するホルモンであるコルチゾールを分泌する重要な器官です。
副腎疲労について、より詳しい記事は以下をご参照下さい。
副腎疲労と自律神経系の関係
- ストレス反応:ストレスを感じると、自律神経系の一部である交感神経が活性化し、副腎に信号を送ってコルチゾールの分泌を促します。
- ホルモンバランスの乱れ:副腎疲労によりコルチゾールの分泌が乱れると、自律神経系のバランスも崩れやすくなります。
- 血糖値の変動:コルチゾールは血糖値の調整にも関与しており、その分泌異常は血糖値の乱高下を引き起こし、自律神経系に負担をかけます。
悪循環のメカニズム
- 慢性的なストレス → 自律神経系の乱れ(交感神経優位)
- 副腎へのコルチゾール分泌要求の増加
- 副腎の機能低下(副腎疲労)
- コルチゾール分泌の乱れ
- 自律神経系のさらなる乱れ
- ストレス耐性の低下 → さらなるストレスの蓄積
このサイクルが繰り返されることで、症状が悪化・慢性化する可能性があります。
副腎疲労と自律神経失調症の共通症状
両者は、共存しておきることが多いため、症状もとても似ています。似ている症状としては、以下のようなものがあります。
- 疲労感・倦怠感
- 睡眠障害
- 集中力の低下
- 気分の変動
- 消化器系の不調
- 免疫機能の低下
副腎疲労を考慮した自律神経失調症へのアプローチ
自律神経失調症の改善を目指す際は、副腎の健康も同時にケアすることが重要です。そのためには、以下のことが役に立ちます。
- ストレス管理:瞑想、深呼吸法、ヨガなどのリラクゼーション技法を取り入れる
- 睡眠の質の向上:十分な睡眠時間の確保と睡眵環境の整備
- 適切な運動:過度な運動は避け、ウォーキングなど軽度の有酸素運動を取り入れる
- 栄養サポート:ビタミンC、ビタミンB群、マグネシウムなど、副腎をサポートする栄養素の摂取
- 腸内環境の改善:腸に炎症があると副腎疲労につながるため、腸を整えることが重要
- 血糖値の安定化:低GI食品の選択、規則正しい食事習慣の確立
自律神経失調症の改善を目指す際は、副腎の健康状態にも注目し、両者を包括的にケアすることで、より効果的な回復が期待できます。特に、血糖値の安定化は、自律神経失調症の改善と副腎疲労の改善にとても重要になります。そのため、以下の記事をしっかりと実行していただくことでだいぶ症状が和らぐことがあります。
血糖値の安定化の重要性
自律神経失調症の改善において、血糖値の安定化は非常に重要です。血糖値の急激な上昇と下降は、自律神経系に大きな負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。
血糖値を安定させるためのポイントは、
- 低GI(グリセミックインデックス)食品を選ぶ
- 食物繊維を十分に摂取する
- ゆっくりと食べる
- 何回も噛んでから食べる
- 甘いもの(精製された砂糖)を控える
- 食事は抜かないで、1日3回食べる
ということになります。より詳しい血糖値コントロールにつきましては、こちらを御覧ください。
腸内環境の改善
腸内環境と自律神経系には密接な関係があります。良好な腸内環境を維持することで、自律神経系の機能改善が期待できます。
腸内環境を改善するポイント
- プロバイオティクス食品(納豆、キムチなど)を摂取する
- プレバイオティクス(食物繊維)を十分に摂る
- 発酵食品を積極的に取り入れる
- 抗炎症作用のある食品(ターメリック、生姜など)を利用する
より詳しい、腸内環境の整え方につきましては、こちらをご参照ください。
ストレス対応栄養素の補給
慢性的なストレスは自律神経系に大きな負担をかけます。ストレス対応に重要な栄養素を十分に摂取することで、ストレス耐性を高めることができます。
ストレス対応するための栄養素として、以下のようなものがあり、積極的に摂取を考えましょう。
- ビタミンC
- マグネシウム
- ビタミンB
- アシュワガンダなど
アシュワガンダにつきましては、こちらもご参照ください。
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まとめ
本記事で紹介した一般的な整え方に加え、分子栄養学的アプローチを取り入れることで、より効果的に自律神経失調症を改善できる可能性があります。
特に、血糖値の安定化、腸内環境の改善、ストレス対策などは、自律神経系の健康維持に重要な役割を果たします。
ただし、自律神経失調症の症状や原因は個人によって異なるため、一般的な整え方によっても改善しない場合は、専門医による適切な診断と個別化された治療プランが必要です。
自律神経失調症は当院では栄養外来で診療しております。気になる方はご検討ください。
最後に(免責)
本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。
病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。
基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。
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1975年横浜生まれ、2021年9月に東京原宿クリニックを開設。内科医、呼吸器内科専門医、アレルギー専門医として豊富な経験を持つ。現在は、一般内科診療をはじめ、栄養療法・点滴療法、カウンセリングを組み合わせた総合的な健康サポートを行いながら、患者さん一人ひとりの生活の質向上をサポート。自身の体調不良経験から、従来の西洋医学に加え、栄養療法の重要性を実感。最新の医学知識の習得に励み、患者さんにとってより良い医療の提供に取り組んでいる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床分子栄養医学研究会認定指導医。