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分子栄養学

アトピー性皮膚炎の原因と分子栄養学的な治し方

表参道・原宿の東京原宿クリニック 院長の篠原です。

アトピー性皮膚炎はかゆみもあるので、それ自体がとてもストレスになるし、睡眠不足になったり、また病院でのステロイド剤をやめるとまた再発したりと、なかなか厄介な病気です。

多くの人々にとって日常生活に大きな影響を及ぼします。

もちろん、症状が強いときには保湿やステロイドの使用は必要と考えますが、症状を抑えている間に体質改善の方法がないか、探っていきたいと思います。

この記事では、アトピー性皮膚炎のかゆみの主な原因であるヒスタミンに焦点を当て、その管理方法について分子栄養学的アプローチから考えていきたいと思います。

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Contents

①アトピー性皮膚炎の機序

一般的にアトピー性皮膚炎が発症する機序として考えられているのは次のようなものになります。

1. 遺伝的要因

家族にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患を持つ人がいる場合、そのリスクが高まります。

特に、フィラグリン(filaggrin)という皮膚のバリア機能に関与するタンパク質の遺伝子変異が関与していることが知られています。

2. 免疫系の異常

免疫系の異常もアトピー性皮膚炎の機序に深く関わっています。

Th2優位の免疫応答

アトピー性皮膚炎では、Th2細胞(Tヘルパー2細胞)が優位になり、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-13(IL-13)などのサイトカインが過剰に産生されます。

これにより、IgE抗体の産生が増加し、マスト細胞(肥満細胞)に結合すると、ヒスタミンなどを放出し、かゆみの原因となります。

3. 皮膚バリアの障害

角質層の異常

角質層の異常により、皮膚が乾燥しやすくなります。これにより、外部からの刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、炎症を引き起こします。

皮脂の不足

皮脂の分泌が不足することで、皮膚の保湿機能が低下し、乾燥しやすくなります。これもまた、皮膚バリアの低下を招きます。

4. 環境要因

環境要因もアトピー性皮膚炎の発症に影響を与えます。

アレルゲンの存在

ダニ、花粉、ペットの毛、食品アレルゲンなどの環境アレルゲンが症状を悪化させます。

気候条件

乾燥した気候や寒冷な気候は、皮膚の乾燥を助長し、症状を悪化させる可能性があります。

ストレス

精神的ストレスは免疫系に影響を与え、症状を悪化させることがあります。

②分子栄養学的アプローチの併用の有効性

これらの多くの因子が絡んでいるので、まずは西洋医学での検査や対策、治療を行うことが大切です。

それでも改善しない場合に、分子栄養学的なアプローチを併用することも有用だと考えます。

上記の中で、マスト細胞がヒスタミンを放出すると、痒みが生じると書きました。

この、「ヒスタミン」を中心に考えていきましょう。

③アトピー性皮膚炎のかゆみの原因とヒスタミンの役割

かゆみの中心物質「ヒスタミン」

ヒスタミンは、免疫細胞であるマスト細胞や好塩基球から放出される化学物質で、アレルギー反応や炎症反応の際に重要な役割を果たします。

血管を拡張し、透過性を高めることで、皮膚に赤みや腫れ、かゆみを引き起こします。

ヒスタミンの生成と分解のメカニズム

ヒスタミンはアミノ酸の一種であるヒスチジンから生成されます。

ヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)によってヒスチジンがヒスタミンに変換され、その反応は、主にマスト細胞や好塩基球で行われます。

分解はダイアミンオキシダーゼ(DAO)やヒスタミン-N-メチルトランスフェラーゼ(HNMT)によって行われ、これらは主に腸内や肝臓で働きます。

アトピー性皮膚炎におけるヒスタミンの影響

皮膚のバリア機能が低下しているため、外部からの刺激やアレルゲンに対して過敏に反応し、大量のヒスタミンが放出されます。

これにより、強いかゆみ、皮膚の赤み、腫れなどの症状が引き起こされてしまいます。

ヒスタミンを減らすための具体的戦略

アトピーにおいて、ヒスタミンが中心的な役割をしていることがわかりました。

では、ヒスタミンに対処する方法を考えていきましょう。

ヒスタミン分解を助けるDAOとHNMTのサポート

ヒスタミンを効果的に分解するためには、DAOとHNMTの機能をサポートする栄養素が必要です。

DAOのサポートには、通常以下のような栄養素が必要です。
  • ビタミンB6(ピリドキシン)
  • ビタミンC
  • 亜鉛
  • マグネシウム
HNMTのサポートには、通常以下のような栄養素が必要です。
  • ビタミンB2(リボフラビン)
  • ビタミンB12(コバラミン)
  • 葉酸

これらの栄養素を意識していきましょう。

アレルゲンや刺激物の回避

外部からの刺激を避けることで、ヒスタミンの放出を抑えます。

  • アレルゲンの回避:ダニ、花粉、ペットの毛など
  • 電磁波の影響を減らす:Wi-Fiルーターや携帯電話の使用を控える
  • 農薬や化学物質の回避:有機食品を選ぶ

腸内環境の改善

腸内フローラを整え、DAOの働きをサポートします。

  • プロバイオティクス:ヨーグルト、キムチ、納豆
  • プレバイオティクス:食物繊維を含む野菜や果物
  • 消化酵素:消化酵素サプリメント

ただし、腹部膨満など、SIBOの可能性がある場合には注意が必要です。

SIBOにつきましては、こちらもご参照ください。

④ 副腎疲労とヒスタミンの関係

副腎疲労がベースに存在すると、アトピーの炎症を止めることが難しくなります。

副腎疲労がどのように関連しているかをみていきましょう。

副腎疲労がヒスタミンに与える影響

副腎はコルチゾールを分泌し、炎症を抑えます。

しかし、副腎疲労によりコルチゾールの分泌が低下すると、ヒスタミンの作用が強まり、アトピー性皮膚炎の症状が悪化します。

コルチゾールの役割とその効果

副腎から出るコルチゾールには、次のような作用があります。

  • 抗炎症作用:炎症を抑制し、ヒスタミンの放出を減少
  • 免疫調整:免疫系の過剰反応を抑制
  • 血糖値の維持:血糖値を安定させ、副腎疲労の悪化を防ぐ

副腎機能をサポートする方法

副腎機能を改善させるためには、生活習慣と栄養素の改善が必要です。

詳しくは、以下の記事もご参照ください。

副腎疲労を改善させるための基本的な事項としては、以下のようなものがあります。

  1. ストレス管理
    • リラクゼーション:ヨガ、瞑想、深呼吸法
    • 適度な運動:ウォーキング、軽いジョギング
  2. 栄養補給
    • ビタミンC:柑橘類、キウイ、ピーマン
    • ビタミンB群:全粒穀物、卵、豆類
    • マグネシウム:ナッツ類、緑葉野菜、魚
  3. 良質な睡眠
    • 規則正しい睡眠習慣
    • 静かで暗い睡眠環境
  4. バランスの取れた食事
    • 低血糖を防ぐ:バランスの取れた食事
    • 抗酸化食品の摂取:ベリー類、緑黄色野菜、ナッツ

⑤食事によるヒスタミン管理

ヒスタミンを体に入れることで、痒みの原因となります。

そのため、ヒスタミンを多く含んでいる食事と、ヒスタミンを遊離しやすい食事を避ける必要があります。

高ヒスタミン食品とヒスタミン遊離食品のリスト

以下のものを食べた後に、痒みが強くなるようであれば、避けたほうがいいでしょう。

  1. 高ヒスタミン食品
    • 発酵食品:チーズ、ヨーグルト、キムチ
    • 加工肉:ハム、ベーコン、サラミ
    • 魚介類:イワシ、マグロ、サバ
    • アルコール飲料:ビール、ワイン
  2. ヒスタミン遊離食品
    • 特定の果物:イチゴ、パイナップル、バナナ
    • ナッツ類:クルミ、カシューナッツ
    • その他:チョコレート、トマト、ナス

食事によるヒスタミンレベルの管理

食事を摂るときには、次のことを意識しましょう。

  • 新鮮な食品を選ぶ:加工食品や保存料を避ける
  • 発酵食品の摂取を控える:発酵していない新鮮な食品を摂取
  • 適切な保存方法:冷蔵保存、冷凍保存
  • 食事日記をつける:摂取した食品と症状の関係を記録

⑥マスト細胞とヒスタミンの生成過程への対策

マスト細胞は刺激を受けると、ヒスタミンを放出します。

そのため、マスト細胞への対策も必要になります。

マスト細胞がヒスタミンを生成する過程

マスト細胞はヒスチジンを取り込み、ヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)によってヒスタミンに変換し、顆粒に貯蔵され、刺激に応じて放出されます。

マスト細胞への刺激を減らす方法

マスト細胞は、以下のような刺激でヒスタミンを放出します。

  • 電磁波の影響を最小限にする:Wi-Fiルーターや携帯電話の使用を控える
  • 農薬や化学物質の回避:有機食品を選ぶ
  • アレルゲンの回避:ダニ、花粉、ペットの毛を避ける
  • ストレス管理:ヨガ、瞑想、深呼吸法
  • マイコトキシンと添加物の回避:加工食品や保存料を控える
  • 重金属のデトックス:デトックスプログラムを導入
  • シュウ酸の管理:シュウ酸を多く含む食品を控える、プロバイオティクスを摂取

特に、シュウ酸は、腸カンジダの影響を受けるので、腸カンジダ対策も必要です。

腸カンジダにつきましては、以下をご参照ください。

マスト細胞の安定化を助ける栄養素とサプリメント

マスト細胞を安定化させるためには、以下の栄養素も有効です。

  • クエルセチン:タマネギ、リンゴ、ブロッコリー
  • ビタミンC:柑橘類、キウイ、ピーマン
  • マグネシウム:ナッツ類、緑葉野菜、魚
  • プロバイオティクス:ヨーグルト、キムチ、納豆

⑦リーキーガットとリーキースキンの関連性

腸内環境と皮膚は密接な関係があります。

そのため、腸内環境を整え、リーキーガットを改善させることも大事です。

リーキーガット症候群の概要

リーキーガット症候群は、腸壁の透過性が増加し、未消化の食物粒子や有害物質が血流に侵入する状態を指します。これにより、免疫系が過剰に反応し、全身の炎症やアレルギー反応が引き起こされます。

リーキーガットがリーキースキンに与える影響

リーキースキン(Leaky Skin)とは、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの有害物質やアレルゲンが皮膚に侵入しやすくなる状態を指します。

この状態では、皮膚が乾燥しやすく、かゆみや炎症が生じることが多く、アトピー性皮膚炎や敏感肌の症状が悪化することがあります。

リーキーガットがあると、以下のようなことを起こします。

それによって、リーキースキンを引き起こしてしまいます。

  • 腸内毒素の流出:腸内の未消化物や毒素が血流に入り込み、全身の炎症を引き起こします。
  • 免疫系の過剰反応:免疫系が過剰に反応し、皮膚にも炎症を引き起こします。
  • 皮膚バリア機能の低下:腸内環境の悪化は皮膚のバリア機能を低下させ、リーキースキン(皮膚の透過性が増加した状態)を引き起こします。

腸内環境を改善するための具体的対策

リーキーガットを改善するためには、腸内環境を改善することが大事です。

そのためには、プロバイオティクスやプレバイオティクス、抗炎症食品の摂取、グルテンフリーやカゼインフリー、消化酵素の摂取などが有効です。

リーキーガットを改善するために、具体的には以下をご参照ください。

⑧炎症を抑えるためのオメガ3脂肪酸の重要性

体内の炎症を抑えるために、オメガ3の摂取が有効です。

オメガ3脂肪酸(W3系脂肪酸)の役割

オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸であり、抗炎症作用を持ち、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が重要です。

これらは体内の炎症を抑え、アトピー性皮膚炎の症状を緩和します。

オメガ3サプリメントを利用するといいでしょう。

オメガ6脂肪酸とのバランス

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスを取ることが重要です。

オメガ6脂肪酸の摂取を控えめにし、オメガ3脂肪酸を積極的に摂取します。

⑨アトピー性皮膚炎の保湿とステロイド

保湿は、皮膚のバリア機能を改善し、外部からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐために不可欠です。

そのためには、適切な保湿剤の使用が必要です。

そして、ステロイドの塗り薬ですが、痒みがあれば適切に使い、痒みを抑えることはとても大事と考えます。

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まとめ

アトピー性皮膚炎の管理には、適切なスキンケアと治療法が不可欠です。

分子栄養学的アプローチと併用することで、より快適な生活を送り、アトピー性皮膚炎の症状を軽減することが可能と考えます。

食事や腸内環境、体内の炎症などに対処していくことが必要とかんがえます。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

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