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分子栄養学

不安障害の治し方

原宿・表参道の東京原宿クリニック 院長の篠原です。

長らく自粛生活も伴って、自分や家族の健康の不安、先行きの不安を感じてはいないでしょうか。

そこで、今回は不安に対して、どのように対処していったらいいのだろうか、ということを、考えてみたいと思います。

そもそも、不安という感情は、敵に襲われたときに、真っ先に逃げるために必要なものですので、必要なものです。

その感情がいきすぎてしまうと、ささいな事がおこっても、毎回、敵に襲われたぐらいな反応をしてしまい、生きるのが辛くなってしまうということです。

心が敏感すぎるとしんどいですね。

少し長い記事になりましたが、最初の方は、不安を増強させてしまう食事、後の方が不安を改善させ食事や栄養になっています。

それでは、始めましょう。

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不安の大元はやっぱり腸内環境

不安を解消するために重要なのは、脳と腸の両方からのアプローチが有効です。

「腸脳相関」という有名な言葉があります。

例えば、うつ病の患者さんでは、腸内の善玉菌が減少しており、腸と脳には双方向で影響しあっています。

ストレスがかかると、HPA軸(視床下部ー下垂体ー副腎軸)が反応します。

一時的なストレスではなく、長期のストレスになった場合、HPA軸が狂い、これが俗にいう、副腎疲労の本体だと考えられています。

腸内細菌を全く無くしたマウス(無菌マウス)では、ストレスに対して、HPA軸が過敏に反応しました(PMID: 15133062)。

ところが、そのマウスに、一種類の細菌を移植することで、ストレスに対する過剰反応がなくなりました。

人間の研究では、不安障害の患者さんと健康な人の腸内細菌叢を調べてみたところ、不安障害の患者さんでは、細菌の数と多様性の両方が少なくなっていました。

特に、短鎖脂肪酸を作る腸内細菌が減っていて、悪玉と言われる菌が増えていました(PMID: 30029052)

腸内環境が悪ければ、リーキーガットにより炎症物質が脳に影響します。

一般的に良くやられている、心理セラピーではどうでしょうか。

心理セラピーでは、その時、症状が改善しても、自然に腸内細菌は改善はしないので、やはり、腸内環境の改善というのは、不安症状を改善するのに必要と言えそうです。

迷走神経の役割

腸内細菌の状況が、脳の感情に与えるというお話をしています。

腸内細菌は色々な神経伝達物質を作っていることがわかりました。

セロトニン、GABA、アドレナリンなどです。

セロトニンは、幸せホルモンなどと呼ばれているように、心の安定をもたらします。

そして、腸内細菌で多く作られているのですが、腸内細菌が作ったセロトニンがそのまま脳に至るかというと、そうでもありません。

脳には、血液脳関門というバリアーがあるので、セロトニンは直接、脳に入れません。

腸には多くの神経が分布していて、それが腸管の情報を脳に伝える役目をしていると考えられています。

その神経が、迷走神経です。

マウスでは、Lactobacillusを経口摂取したら、不安が減少したけど、迷走神経を切断すると、不安が減少しないという報告があります(PMID: 21876150)。

腸内細菌がとても重要なので、最近は、【腸内細菌-脳-腸軸】とも呼ばれています。

腸の炎症が精神状態に影響を与える

腸脳相関により、腸の炎症が、精神に影響を与えます。

腸の炎症を制御する細胞の一つに、Tレグ(制御性T細胞)があります。

Tレグは、行き過ぎた免疫反応を抑える役割をしていて、腸の炎症を抑えるために重要です。

そして、Tレグを増やすのが、酪酸という短鎖脂肪酸の一種です。

ですので、酪酸を作ってくれる、腸内細菌が増えれば、Tレグが増えて、腸の炎症が抑えられ、精神的にも落ち着くというわけです。

近年、Tレグは、酪酸だけでなく、脳からも制御されていることがわかってきました。

慶応の金井教授らは、Tレグの制御に肝臓も関わっていることを示しました(PMID 32526765)。

腸の情報は、腸から直接、脳に伝わるのではなく、一旦、門脈を介して、肝臓で腸の情報を集積・統合して、肝臓から、迷走神経を伝わって、脳に行くことを示しました。

そして、脳からの司令は、迷走神経を伝わって、腸に伝わり、Tレグを制御し、腸管の炎症を抑えているようです。

これを、”脳腸肝相関”といいます。

小難しい話になりましたが、腸の炎症に、肝臓、脳もからんでますよ、というお話でした。

腸内環境を荒らして不安を増強させる食事

不安の原因が、腸内環境になることがわかりました。

では、どのような食事や栄養素をとったらいいのかを考えていきます。

①ウエスタン食

食事に関してはこちらの本を参考にしています。

不安は、腸の調子によって左右され、食事がとても大切というお話でした。

避けるべき食事として1番に挙げられているのは、”ウエスタン食”です。

ファーストフードのような、質の悪い脂肪(飽和脂肪酸+トランス脂肪酸+多価不飽和脂肪酸)、人工甘味料、赤身肉中心の食事です。

動物や、人間でもこのような、高脂肪・高炭水化物食が不安につながるという研究がなされています(PMID: 24652725)。

脳内のセロトニンを減らす可能性があります。

母が高脂肪食を食べていると、子供は不安になりやすいです。

高脂肪食の人の腸内細菌を正常なマウスに移植すると、不安を発症することから、やはり食事の影響により、変化した腸内細菌が不安を起こしているようです。

ですので、不安を改善させるための第一歩は、質の悪い脂肪(トランス脂肪酸や飽和脂肪酸)を減らして、血糖値が急上昇しやすい炭水化物(精製された砂糖など)を減らすということです。

②コーヒー

人は、脳のアデノシン受容体にアデノシンがはまると、まったりモードになって、眠くなります。

コーヒーは、脳のアデノシン受容体をブロックすることで、眠くならなくので、眠気覚ましにコーヒーを飲んでいる方は多いでしょう。

カフェインにより、脅威が迫った時に活性化される脳の場所が活発になります(PMID: 17717184)。

つまり、コーヒーは、不安を増強させるということです。

コーヒーは交感神経を刺激します。

また、コーヒーは、コルチゾールという元気の源ホルモンの生成を阻害してしまいます。

この、交感神経刺激と、コルチゾール生成阻害という作用は、副腎疲労の方には大きな痛手となります。

不安・パニックの方はベースに副腎疲労を抱えていることが多いので、注意が必要です。

コーヒーは、健康で元気な人の飲み物です。

銘柄にこだわり、味や香りを楽しむのは全然OKです。

インスタントを無意識に飲んでいるなら、それは体にムチを打っている危険なサインです。

では、カフェインを含む飲み物は何があるでしょうか。

カフェインを含むもの

文部科学省「日本食品標準成分表 2015 年版」によると、100ml中に、コーヒーがカフェイン60mgに対して、

玉露 160mg !!
煎茶 20mg
番茶 10mg
ほうじ茶 20mg
玄米茶 10mg
烏龍茶 20mg
で、
エナジードリンクには、商品によって、30~60mg

となっています。

カフェインは若い芽に多く、玉露は若い芽をつむために、多くなるわけです。

健康な人で、100mgまでなら不安を起こすのは少ないと考えられています。

ただし、あくまで健康な人であり、副腎疲労の方はもっと厳し目になるのは言うまでもありません。

カフェインはMAO(モノアミン酸化酵素)で代謝されます。

MAOに遺伝子変異があれば、代謝に影響する可能性があり、急な気分変調など注意が必要です。

そしていつも、カフェインレス・デカフェ闘争が起きるわけです。

カフェインは少ないけど、含まれるので、カフェインカウントでお願いします。

減らすなら、いきなりではなく、徐々にですよ。

コーヒーを減らす

「健康に悪いからコーヒーをやめたいんですが、どうしてもやめられないんです」

というご意見を頂きました。

コーヒーに限らず、睡眠薬など、身体に良くないと思っているのにやめられない、ということは多いですよね ><

コーヒーや薬を飲んでいる時、どのような意識で飲んでいますか❓

「あ〜、また飲んじゃった」「身体に悪いのに」

って飲んでいませんか❓

このような意識だと、「罪悪感」を感じることになり、飲んでいる自分を自己否定してしまいます。

罪悪感の意識だと、副作用も多くなるし、副腎疲労も回復しません。

でも、考えてみてください。

コーヒーを飲むことで、日常生活を送れているんですよね。

そんなコーヒーを、敵とみなすのか、自分を勇気づけてくれる仲間とみるのか。

仲間とみて、感謝をすることで、罪悪感から、一気に意識レベルはアップして、体は治癒のエネルギーであふれます。

感謝は治癒の大きなカギです。

「いつもありがとう」と感謝しながら飲むことで、逆に自然に減らせていけるようになります。

どうせ飲むなら、そんな意識で飲んでみたらいかがでしょうか。

③グルテン

セリアック病というのは、グルテン(小麦)に対して、異常な免疫反応を生じてしまい、自分の小腸粘膜を傷つけてしまう病気です。

腹痛などが生じ、栄養の吸収ができないことにより、うつや不安などの神経症状を起こします。

こういう方には、グルテンフリーが必要となってきます。

ところが、セリアック病ではないのに、グルテンに対して過敏(NCGS)という方が多くいることがわかってきました。

NCGSにおいても、腸の症状だけでなく、神経的な症状をおこすことがわかっています。

うつや不安はNCGSの症状と仮定されています(PMID:29662290)。

つまり、セリアック病と診断されていなくても、何らかのお腹の症状や、精神的な症状がある場合は、NCGSの可能性があるということです。

そういう方には、グルテンフリーがとても有効になります。

とりあえず、2週間行ってみて、調子がよくなれば、続けた方がいいですね。

グルテン不調

小麦は生産性を上げるために度重なる品種改良が行われ、その結果、強力な小麦が出来上がりました。

その御蔭で、体に与える影響も強まっているわけです✨

影響とは主に、

①血糖値の上昇
②リーキーガット症候群
③脳の依存

です。

①小麦製品のGI値はかなり高く、血糖値の乱高下をひきおこします。

その結果、不安を引き起こすことになりますね。

②LGSでは、体内に異物が入ることによって、炎症がおきてしまうことが問題でした。

そして、炎症を消すために無駄なコルチゾールが消費されて、副腎疲労の原因になるのでした。

③グルテンは、脳において、麻薬作用があります。

幸福感、満足感を感じる原因となります。

そのせいで、小麦をやめることが困難になっていきます。

小麦は、「現代のタバコ」と言われている所以です。

このように、体調不良があれば、まず控えるべき食事に小麦があるのはうなずけますね。

④人工甘味料

人工甘味料は血糖値を上げないという謳い文句です。

本当に大丈夫なのでしょうか❓

人工甘味料が糖尿病の発症や悪化のリスクを上昇させたという報告があります。

人工甘味料が口に入った時に、脳は、これは甘いはずだ、と思うのですが、

実は血糖値が上がらないために、混乱して、逆に大食いになってしまう、という説があります。

また、腸内細菌に作用して、太る腸内細菌に変化したという報告もあります。

また、リーキーガットにも関与しているという報告もあります。

不安に関してはどうでしょうか。

人工甘味料の一つである、アスパルテームが、不安と関連しているという報告があります(PMID: 28198207)。

ただでさえ、ニュースを見ていると、不安をあおる報道ばかりが増えています。

自分を守るために、テレビなどの大衆メディアのデトックスは必須になってきました。

実際、テレビ減らすと驚くほど平和です。

その上で、不安を増強する、ウエスタン食、カフェイン、アルコール、グルテン、人工甘味料を控え、健全な精神を養いましょう。

腸内環境を整えて不安を改善させる食事・栄養素

ここからは、不安を改善させる食事や栄養素を考えいていきます。

①食物繊維

食物繊維は第6の栄養素と言われており、体には吸収されませんが、腸内環境を整えることにより、無くてはなりません。

水溶性と不溶性に分かれていて、善玉の腸内細菌を増やすとされています。

食物繊維によって、ビフィズス菌とラクトバチルスが増えることによって、神経伝達を活性化して、不安が和らぐことが報告されています(PMID: 23384445)。

水溶性はまた、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。

血糖値の急上昇は急降下を招き、不安の原因となります。

不溶性食物繊維は、水分を吸収して、便の量を増やし、腸蠕動を改善して便通を改善させます。

不安の方では、脳に炎症が起きていることがあり、食物繊維は脳と全身の炎症を抑えることから、不安にも役立つと考えられます。

食物繊維の多い食材

水溶性食物繊維では、

海藻類:わかめ、ひじき、あおさ、海苔、昆布、寒天、めかぶ
穀物:もち麦、オートミール、押し麦
野菜:大根、パセリ、ごぼう、玉ねぎ、にんにく、らっきょう、モロヘイヤ、じゃがいも、里芋、おくら
果物:りんご、いちご、アボガド、キウイフルーツ
豆類:納豆、大豆

不溶性食物繊維では、

穀物:もち麦、オートミール、押し麦、玄米
野菜:クリ、ごま、ごぼう、いんげん、アスパラガス、さつまいも、きくらげ
豆類:大豆、小豆、そら豆、グリーンピース
果物:干し柿、プルーン

などが挙げられますが、その他にもたくさんありますね。

ただ、お腹の張るSIBOという状態では、逆効果になることがあるので、注意が必要です。

甲状腺機能低下気味の方には、大豆製品は超大量には若干注意ですので、主治医に従ってください。

②オメガ3

油には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。

不飽和脂肪酸の中に、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸があり、オメガ6脂肪酸は、細胞の炎症の原因となります。

オメガ6も必要なのですが、私達の普段の食事では多く摂りすぎているので、必然的に、オメガ3が不足しているのが現状です。

オメガ3の役割の一つに、「細胞膜を柔らかくする」ことが挙げられます。

脳神経のシナプスを覆う膜が硬くなると、神経の伝達がうまくいかなくなり、不安の原因となります。

もう一つは、「炎症を抑える」という効果です。

脳に炎症があれば、サイトカインの役割によって、不安に関係する側坐核のドーパミン濃度を高めます。

オメガ3により、側坐核のドーパミンを抑制しました(PMID: 16794572)。

オメガ3によって、脳細胞をしなやかに、炎症を消して、不安を解消しましょう。

オメガ3(2)

不飽和脂肪酸の中で、オメガ3とオメガ6があり、現代食では、オメガ6が摂りすぎというお話でした。

オメガ6が多くなると、アラキドン酸から作られるプロスタグランジンⅡによって、体の炎症が強くなります。

そうすると、アトピー、喘息、膠原病などの原因となるのです。

オメガ6の油としては、紅花油、綿実油、ゴマ油、コーン油などがあります。

ですので、炎症を抑える、オメガ3を意識して多く摂る必要があります。

オメガ3はまた、細胞膜を柔らかくする働きもあるので、不安にいいわけです。

オメガ3を含む油としては、亜麻仁油、えごま油、シソ油があります。

難点は、オメガ3は構造上、酸化されやすく、熱・光に弱いため、加熱に使えないために、サラダにかけるなどして摂取して使う必要があります。

加熱するには、オメガ9のオリーブ油ということになります。

オメガ3は魚からもとれますが、重金属の問題もあるので、大きな魚は注意したほうがいいかも知れませんね。

オメガ3体験記

読者より、オメガ3の体感について教えていただきました。

「44歳で6年ぶりの妊娠をした時の話です。

44歳ということもあって、母体ともに頑張れるかどうか不安がありました。

オメガ3や他のサプリのお陰かつわりもなく、突っ張ることも足がつることもなく、あんなに体調の良かった10ヶ月は、初めてでした。

オメガ3で頭の良い子供になると聞き、私自身もよく本や人の話が頭に入ってきてた感覚がありました。

実際、生まれてきてびっくりしたのが彼女の前頭葉(おでこ)の大きいこと!

他の5人と比べて全然違いました。

成長の早さ、言葉の早さ、表現力、空気をキャッチできる力、それと人を上手に使う力、何にしても他の子供と違いました。

食により人の体と精神は変わると感じてます。

妊娠中の10ヶ月間の食事を一人一人違う感じにしました。

生まれてきてからの嗜好の違いは、はっきりしてまして、それも面白いですよ。

いかに妊娠中の母親の状態が大切か、感じてなりません。」

母体の栄養、大切ですね.。

③発酵食品

宣言の2度目の延期となり、怒り、恐怖や不安が強く、体調不良になっている方を多く見かけます。

そのような時には、大切な判断を間違えてしまうこともあります。

そんな時は、水をまず一口飲みましょう。

食品では、キムチ、納豆、味噌、醤油、ぬか漬けなどの発酵食品は、脳機能を健全に保って、不安を減らしててくれます(PMID: 24422720)。

そして、認知機能を改善させてくれます。

作用機序としては、発酵食品には、プロバイオティクスを含むので、腸内環境が改善し、HPA軸を介した、ストレス反応を抑制させてくれる可能性や、

また、腸内細菌を改善させることにより、セロトニン、GABAなどの神経伝達物質が増える可能性が考えられています。

発酵食品を食べることにより、神経症の方での不安の症状が軽くなることも報告されています。

ということで、コロナ不安が強い方は、まず水を飲んで深呼吸して、発酵食品を意識しましょう。

息を吸っても満足に吸えない感じがしているのは、不安のサインです。

※SIBOには注意が必要です。発酵食品でお腹が張る場合は、医師に相談しましょう。

④トリプトファン

人間に、トリプトファンが多い食事を4日間与えると、憂鬱やイライラ、不安が減りました(PMID: 25858202)✨

また、トリプトファンサプリで、脳内のセロトニンが増加します(PMID: 18043762)。

脳内神経伝達物質の流れとして、

トリプトファン→5HTP→セロトニン→メラトニン

という流れがありますね。

トリプトファンは、セロトニンの前駆物質なので、トリプトファンを摂取すれば、セロトニンが増えて、抗不安になるというわけです。

ところが、キヌレニン経路というものがあって、炎症があると、

トリプトファン→キヌレニン→キノリン酸→NAD

となりますが、キノリン酸が神経毒なので注意が必要です。

ですので、不安を抑えるためには、トリプトファンが多い食事、大豆類(豆腐、納豆、味噌、醤油)、魚、肉類を食べつつ、体の中の炎症を抑えなくてはなりません。

慢性炎症にはやはり注意が必要です。

ビタミンB6単独投与は注意

セロトニンが不安を軽くするということでした。

トリプトファン→5HTP→セロトニン

という経路を考えてみましょう。

トリプトファンから5HTPへは、B6, 鉄、Dが必要です。

そして、5HTP→セロトニンには、B6が必要です。

まずは、ビタミンDはとても重要ですね。

ただ、鉄とB6を多く摂るのは、注意が必要です。

B6は、SHMTやCBSといった酵素の代謝を上昇させて、メチル化を低下させてしまいます。

また、トリプトファン→5HTPの経路には、BH4が必要です。

BH4はアルミニウム、腸内細菌の悪化により産生が低下します。

BH4が足りない状況で、B6を足すと、

トリプトファン→トリプタミン に行きやすくなります。

トリプタミンは幻覚作用や知覚障害、不安感をきたします。

セロトニンを増やして不安を解消しようとするために、B6や鉄を過剰に投与することで、かえってトリプタミンを増やして、不安を増強しかねないということです。

ですので、安易なB6、鉄の過剰投与は気をつけましょう。

何事もほどほどに、ですね。

⑤ビタミンD

うつや不安に悩まれている方は、血中のビタミンD濃度が低いです。

そして、ビタミンDを服用した人は、不安が減少するような研究もされています。

ストレスがあったときに、HPA軸というのがとても重要になってきます。

HPA軸は、視床下部ー下垂体ー副腎系のことで、ストレスを受けると、視床下部からCRHが放出され、CRH は下垂体からACTHの放出を刺激し、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を刺激します。

そして、コルチゾールがストレスに対処するのですが、慢性的にコルチゾールが高いと脳の海馬を障害してしまうことになります。

海馬や扁桃体というところは、HPA軸の調節をしていて、そこに異常があると、不安を感じる原因となります。

ビタミンDは神経細胞の保護の働きがあり、それが不安に対する一つの機序とも考えられています。

というか、Dは、コ○ナ騒ぎにも必要と考えられますので、今の時代に最も必要とされている栄養素ではないかと思います。

次は、Dの補充方法などお話をしたいと思います。

ビタミンDの補給

血中ビタミンD濃度が高ければ、コ○ナの感染症や死亡率が減少します(PMID: 32377965)。

今は、コ○ナへの不安も強い方が多く、慢性的な不安は、アドレナリンを放出させ、体調悪化の原因となります。

Dは、感染予防と不安軽減に有効と考えられるので、まさに今どきの栄養素ですね。

ほとんどの日本人が不足しており、外出できないから、Dの生合成がされないないのもありそうです。

補充方法は、主に3つです。

1つ目は食事。

紅鮭の切り身1キレで38.4μg≒1500 IUで、2000IU摂りたいと考えれば、1.5キレぐらい/日。

2つ目は日光。

1日30分ぐらいの日光を浴びるといいですが、現在の状況では困難なことが多いですね。。

3つ目はサプリ。

主治医などに相談いただきながら、血中濃度を測定しつつ、量を決めていただきたいですが、Dはそんなに高価ではなく、とても有用だと思います。

日本内分泌学会では、血中濃度が30.0ng/ml以上が充足状態なので、まずはそこを目指しましょう。

⑥ビタミンB1

B1はチアミンと呼ばれています。

B1は主に糖質エネルギーの代謝に必要なので、砂糖など甘いものを多く食べる方には、不足気味になります。

私達がエネルギーを作るためには、炭水化物が細胞に入ってきて、さらにミトコンドリアに入ることでエネルギーとなります。

細胞からミトコンドリアに入るためには、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)という酵素が必要で、PDHが働くには、B1が必要です。

ということは、B1が欠乏していると、エネルギーのもとである、炭水化物が細胞内には入ってきますが、ミトコンドリアに入れないために、エネルギー(ATP)が作れなくなる、ということに陥ります。

ATPが作れないんですから、疲労症状にはなりますし、神経伝達物質の異常がおこることにより、不安を始めとした神経症状が起きることになります。

チアミナーゼが入っている刺し身食べすぎ、アルコール、コーヒーで減ります。

コーヒーよく飲んで、酒飲みながら刺し身食べる人は注意ですね。

⑦マグネシウム(Mg)

Mg不足は不安と関連します。

Mgが尿に排泄されすぎると不安になったり(PMID:16955721)、

Mgを補給することで、不安症が改善することが示されています(PMID: 28445426)。

体の中では酵素反応という反応によって、エネルギーを作ったり、タンパクを作ったりしていますが、

Mgは600種類以上もの酵素反応に関わっています。

つまり、Mgが足りないと、酵素が動かず、エネルギーが作れないなどの症状になります。

Mgは脳細胞によるセロトニンの放出と取り込みに必要であり、足りていれば、感情が落ち着いてきます。

<参考>

また、私達はアドレナリンを出しがちがな生活をしていますね。

ストレスで闘争か逃走になったり、低血糖になってみたり。

アドレナリンを出すという行為もMgを消費します。

つまり、私達はMgが万年不足傾向なわけで多くの人が補充を意識することが必要です。


Mg対策

皆様からいただいた、たくさんのお返事の中から一部をシェアさせていただきます。

「素焼アーモンド、ミックスナッツ、チアシード、ロウカカオパウダー、ローカカオニブ、黒大豆、納豆、豆乳、玄米ご飯、食べる煮干し…等を毎日食べております。」

「ごまがマグネシウムたっぷりと言う事で米粉パンにココナッツオイルとごまペースト塗って、ラカントとシナモンパラパラふって、大好きだったシナモンロールの代わりにおやつとして楽しんでます。」

「青魚やシラスなどの小魚、豆類、海苔などの海藻類よく食べてます。」

「ご飯を炊く時にトレースミネラルを入れるようにしています(一合につき10滴)」

「水筒にもトレースミネラルを少し入れています」

「水分をしっかり取ってから多めのエプソムソルトを入れて、少々長湯をすると大量の汗をかき、とてもデトックスされている感じがしてました。」

「たまにニガリを飲み物に入れてます」

食事、エプソムソルト、にがりという感じですね。

トレースミネラルは他の微量元素も入っていいと思いますが、味が。。というご意見もありました。

⑧CBD

CBD(カンナビジオール)は、大麻に含まれる生理活性物質であるカンナビノイドの1つです。

THCというカンナビノイドは、向精神作用があるために、法律で厳しく規制されています。

CBDは、大麻草の成熟した茎から抽出されたもので、向精神作用を持たないために、規制の対象となっていません。

抗炎症、制吐、抗不安、糖尿病、癌、アルツハイマーなどへの有効性が報告されているのでとても注目が集まっていますが、THCが万が一含まれていると大変なことになるので、注意が必要です。

CBDは過度の恐れや不安に対してとても良く効きますし、そのような報告も出てきています(PMID: 26341731)。

作用機序としては、セロトニン受容体である5-HT1Aに作用することで、効果を発揮すると考えられています(PMID: 16258853)。

人によって、どのくらいの量で効くかというのが、結構な個人差があるのですが、栄養療法プラスの選択肢として考えてみてもいいかもしれませんね。

⑨クルクミン

クルクミンは、ウコンの地下茎から作られる香辛料である、ターメリックの中に含まれるポリフェノール化合物です。

クルクミンは、海馬を守ってくださいます。

そして、クルクミンによって、不安行動の改善が報告されています(PMID: 28702432)

クルクミンによって、脳内のDHAを高めることによって不安を軽減させることも示唆されています(PMID: 25550171)

人間がストレスを受けると、視床下部ー下垂体ー副腎(HPA軸)に影響がおよび、その慢性的な状態が、副腎疲労や、うつなどと関係しています。

動物レベルでは、クルクミンがコルチコステロン(副腎から分泌される糖質コルチコイド)を正常レベルにもどしたり、副腎の大きさを元に戻しました(PMID: 33329109)。

人では、クルクミン追加で鬱が改善し、唾液中コルチゾールの低下がしめされました(PMID: 26066335)

つまり、HPA軸を調整してくれるというわけです。

他にも炎症を抑えたりリーキーガットを改善させたりと、多方面で大活躍です。

今日の晩ごはんはカレーで決まりですね。

9.5:ピペリン

クルクミンの素晴らしい効用についてお伝えしましたが、問題点として、生体利用性の低さがあげられます。

クルクミンを単独でとっても、吸収が悪く、代謝が早く、排泄が早いのです。

それを解決するためにピペリンは、クルクミンと同時にとることによって、生体利用性が2000%になります(PMID: 9619120)。

さて、ピペリンは、黒コショウの有効成分です。

クルクミンの効果として考えられているのは、抗酸化、抗炎症、関節炎、メタボリックシンドロームなどです(PMID: 29065496)。

ということは、このような効果を狙うなら、黒コショウを併用するに越したことはありませんね。

さて、不安を改善するには、腸内環境の改善が重要というお話をしてきました。

その中で、腸内細菌は、少ない種類のものが多くいるより、多様性のほうが大事と言われています。

クルクミンとピペリンを同時にとることによって、腸内細菌の種類がDNA検査で69%アップしました(PMID: 30088420)。

今晩は、カレー+黒コショウで決まりました。

⑩MCT

エネルギーを作っているのは、主にミトコンドリアでした。

エネルギーの単位はATPと呼ばれるのでした。

1分子のブドウ糖から、解糖系で2ATP、TCAサイクルで2ATP、電子伝達系で34ATP作られます。

電子伝達系がいかに大事かわかりますね。

ただし、ブドウ糖が電子伝達系に至るまでには、ミトコンドリア機能と必要な栄養素が十分必要です。

中鎖脂肪酸(MCT)は、カルニチンなしでミトコンドリアに入り、電子伝達系内の複合体Ⅱに働きかけて、バイパスしてATPを作ってくれます。

不安という症状が、脳のミトコンドリア機能の低下と関連しているという報告があります(PMID: 26621716)

不安のラットでは、脳の側坐核のミトコンドリア機能の低下があり、そのうち、電子伝達系の複合体ⅠとⅡの機能低下があるようです。

要するに、脳がエネルギー不足になっているわけですね。

さて、そのようなラットにMCTを加えると、不安行動が減少しました(PMID: 29908242)。

やはり、脳へのエネルギー供給がとても大事というわけです。

⑪今ここ

特定の何かに対しての不安が強いということであれば、「未来の不安」について、紙に書き出す、という方法が有効です。

そのことをエクスプレッション・ライティングと言って、多くの研究での成果が示されています。

研究では、1日20分、ひたすら紙に書き出すのを最低4日、寝る前が有効です。

いつも漠然とした不安を抱えている人はどうでしょうか。

良い意味で、想像力が並外れて活発なため、起こるかどうか分からないものまで心配してしまいます。

何と、自分の心配していることが起こると、「やっぱり起こった」となって、初めて安心することになります。

ボルコヴェックらの研究によると、心配事の79​パーセントは起こらず、残りの16%は事前の対処が可能だそうです。

つまり、相当な取り越し苦労をして、そのために脳のエネルギーを莫大に使ってしまっていることになります。

そのような場合の処方箋は、「今ここ」。

起こってもない未来を想像することをやめて、今ここにある当たり前のことに支えられている自分に気づき、感謝をすることで戻ってこれるわけです。

⑫半夏厚朴湯

コロナの恐怖によって、不安の強い患者さんを散見します。

一応本職は呼吸器科なので、息苦しい、息が吸えない方とお会いすることが多いです。

お話を伺うと、コロナに必要以上に恐怖を植え付けられていることがみてとれます。

検査を行って異常がないことを確認して、改めてお話を伺うと、不安のあまり、過度に自分をプロテクトしていることがわかります。

過度のプロテクトは、五行で言うと、「金」にあたります。

「金」は鎧ですから、ガチガチに自分を固めている状態です。

そして、「金」の臓器は、肺と大腸であり、息苦しくなり、腸内環境も悪くなることも頷けます。

鎧はアドレナリンを生みだし、交感神経を緊張させて、不安を増強していつもガチガチになるわけです。

まず検査で異常なかったことで安心していただき、上記をお話することで、過剰な鎧について、腑に落ちます。

処方箋は、テレビを見ないこと。

また、半夏厚朴湯という漢方は喉につかえた感じの不安感に良く効きます。

傾聴とともに使うと、息苦しさも緩和されることが多いです。

※ご使用には、専門家に相談して下さい。

⑬水・百草丸

過度に自分を守ると、鎧のようになり、陰陽五行☯でいう、「金」のエネルギーに偏るというお話でした。

鎧はアドレナリンを放出し、交感神経緊張になるということでした。

一つの対処法は、五行で「金」の次にある「水」に持っていくということです。

「水」は腎臓・膀胱に当てはまります。

そのためには、水を飲んで、過剰なアドレナリンを腎臓から排泄することにより、五行が回り始めます。

まず一口水を飲んで落ち着きましょう。

さて、前回お話した、半夏厚朴湯の厚朴(こうぼく)は、胃腸の調子を整える(腹部膨満、胃腸運動の促進)という作用の他に、神経作用(不安などを抑える)という働きがあります。

「百草丸」という日本に以前からある胃腸薬には、この厚朴が入っています。

また、オウバクも一緒に入っていて、こちらも消炎、胃腸作用があります。

胃腸の具合が悪くて、さらに不安などの精神症状がある場合は、栄養療法界隈で愛用者の多い、百草丸を試してみるのもありかもしれませんね。

⑭アシュワガンダ

「アダプトゲン」とは、ストレス解消の効果などを持ったハーブのことです。

アダプトゲンの中で効果の認められているものをご紹介しますが、飲み過ぎは肝障害などの報告もありますので、ご注意してください。

アシュワガンダはアダプトゲンの一種で、不安やストレス対策に広く使われています。

副腎をサポートするサプリの中に含まれているので、副腎疲労の患者さんに使うことが多いです。

不安に対する効果として、2014年のニューヨークの大学の研究でのレビューで、不安のスケールが、心理療法では30.5%軽減したのに比べ、アシュワガンダで56.5%減少しました(PMID:25405876)。

また、滋養強壮、抗肥満などの効果も報告されてきています。

マウスの研究では、高脂肪食による体重増加と高脂血症を、アシュワガンダで抑制されました。

よく調べてみると、脂肪組織と骨格筋での酸素消費量増加、ミトコンドリアが活性することがわかり、そのためエネルギー消費が高まり、抗肥満となることが示唆されました(PMID: 32046183)。

頓用的に使うといいかも知れません。

⑮ラベンダー

アロマセラピーとして名高い、ラベンダーは、香りを楽しむという以外にも、サプリメントのようにして、服用するという手もあります。

そして、実験的にも、不安を抑えるという効果が認められています(PMID:23573142)。

ラベンダーの主成分である、リナロールは、神経系において、抗コリン、神経保護作用、抗酸化作用があります。

GABAは、抑制系の神経伝達物質で、不安を和らげ、興奮した神経を落ち着かせる働きがありますが、

ラベンダーは、GABAを調節することで、神経の興奮を抑制すると考えられます。

また、ラベンダーは副腎を支配する交感神経を抑制し、副交感神経を刺激することが示唆されています(PMID: 15878236)。

ドイツでは、6週間で抗不安薬であるロラゼパムと同等の効果が出た試験があります(PMID: 19962288)。

10週間で不安と睡眠の質が改善した221人の研究もあります(PMID: 20512042)。

というような事を書きながら、先日頂いたラベンダーのアロマをかいでいると、本当にリラックスしますね。

まとめ

不安は腸脳相関から考えると、やはり腸内環境を整えるということに尽きるようです。

ということは、不安になるような食事をやめて、不安をおさえる食事をするということです。

グルテン、乳製品、カフェイン、アルコール、人工甘味料、添加物のようなものを控えるというところから始めるのがいいと思います。

その上で、今までにあげてきた栄養素を気をつけながら摂っていくとなお良いのではと考えます。

最後に(免責)

本記事の内容は、医学的治療に置き換わるものではありません。個人的にお試しになり健康被害が生じても、当院では一切責任を負えませんのでご了承下さい。

病態の改善に必要な食事・サプリメントはひとりひとり異なります。

基本的に、主治医と相談しながら治療を進めていただければと思います。

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